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給与計算の仕組みとは?ミスを防ぎ正確に行うためのポイント

目次

給与計算は、就業規則だけではなく法律にも基づいて正しく処理する必要があり、多くの工程が含まれます。従業員が100名を超える企業では、業務が複雑化し、人手不足や法改正対応も課題となります。

この記事では、給与計算の仕組みについて基本から理解したいと考えている方のため、押さえておきたい仕組みや内訳、具体的な手順、注意すべきポイントまで詳しく解説します。給与計算の詳細を理解し、業務効率化につなげるための参考にしてください。

給与計算とは

給与計算とは、従業員に支払う賃金を正しく算出するのに必要な一連の業務のことをいいます。基本給や各種手当、残業代といった支給額を合計したらそこから控除額として社会保険料や税金などを差し引き、最終的な支給額を計算しなければなりません。

従業員を雇う以上、給与計算は必要です。その際には、正確さが求められるのはもちろん、労働基準法や所得税法、社会保険関連、雇用保険法まで正しく理解しておく必要があります。担当者は勤怠情報をもとに給与を計算し、従業員に適切に支払わなければなりません。

給与の内訳

給与は、大きく分けて基本給、各種手当、残業代や割増賃金などによって成り立っています。
それぞれがどのようなものかを確認しておきましょう。

基本給

基本給とは、従業員に支払う給与のうち、最も基本となる金額のことです。基本給には各種手当は含まれておらず、欠勤や昇給・降給などがない限り前月と同じ金額になります。

給与計算では、この基本給をもとに残業代や各種手当、社会保険料の控除額などを計算します。そのため、非常に重要な項目です。なお、「給与=基本給」ではありません。給与とは、会社から支給されるすべての報酬を指します。

各種手当

各種手当とは、基本給以外に支給される金額です。業務内容や生活状況に応じて設けられます。企業によってどのような種類の手当が用意されているかは異なり、支給基準も異なります。

代表的な手当は以下の通りです。

【手当の例】

  • 通勤手当:勤務地までの公共交通費、自家用車のガソリン代などの全額または一部支給
  • 皆勤手当・精勤手当:無遅刻や無欠勤であった従業員への褒章として支給
  • 出張手当:出張時にかかる食事代、その他でかかる必要費用に配慮して支給
  • 住宅手当:ローンや家賃の負担を抑えるために支給
  • 資格手当:特定の資格を取得している従業員に対し支給

これらの手当については、法律などで支払いが義務付けられているわけではありません。会社側が任意で支給する形となります。

手当の種類が多く、金額が大きいほど従業員にとっては魅力的ですが、その分会社の負担も大きくなるため注意が必要です。手当について確認する際、注意しなければならないのが課税対象となるか否かです。

手当は基本給とは別に支払われることになりますが、給与の一部とみなされるものについては課税対象となります。ただし、通勤手当のうち一定金額以下のものや、通勤や出張で必要とみなされる旅費、宿直手当や日直手当のうち一定金額以下のものに関しては非課税です。

通勤手当の非課税部分についてはどの交通手段を選択しているのか、通勤距離はどの程度なのかによっても変わってくるのでよく確認しておきましょう(※)。また、各種手当の支払い基準や金額設定が曖昧だと従業員が不満や不安を感じてしまうこともあるため、明確に取り決めておくことが重要です。

参考:国税庁:通勤手当の非課税限度額の引上げについて

残業代や割増賃金など

残業代や割増賃金は、通常の労働時間を超えて働いた場合に支払われる追加の報酬を指します。割増率は労働基準法によって以下のように定められています。

種類

該当する条件

割増率

時間外手当・残業手当

法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき
 時間外労働が限度時間(1か月45時間・1年360時間など)を超えたとき

25%以上

時間外労働が1か月60時間を超えたとき

50%以上

休日手当

法定休日(週1日)に勤務させたとき

35%以上

深夜手当

22時から5時までの間に勤務させたとき

25%以上

参考:(PDF)厚生労働省:しっかりマスター労働基準法[PDF]

例えば、休日に深夜労働をした場合、割増率は60%以上となることもあります。どこからが割増率の対象になるのかを正しく理解しておかないと計算ミスにつながってしまうこともあるので、十分注意が必要です。

該当する条件を満たしている場合は必ず支払わなければなりません。ポイントになってくるのが「法定労働時間」です。法定労働時間とは、労働基準法によって定められた労働時間のルールのことであり、1日8時間、1週間40時間までと定められています。各企業で定めている就業規則に基づく労働時間のルールについては「所定労働時間」と呼びます。

例えば、会社の労働時間ルールで8時から16時まで働き、うち1時間休憩を取るとしましょう。この場合、休憩時間を引くと所定労働時間は7時間です。1時間残業して17時まで働いた場合、所定労働時間は超えることになりますが、労働基準法で定められた1日8時間は超えません。そのため、労働基準法による割増賃金の対象ではないことを確認しておきましょう。

法定内残業の賃金を割り増しとすることは法律で定められているものではないため、通常の賃金と同額でも問題はありません。もちろん、企業によっては法定内残業であったとしても残業手当がつくこともあります。
なお、さらに1時間残業をして18時まで働いた場合は労働時間が9時間となり法定労働時間を超えることになるので、17時~18時の残業には割増賃金が適用されます。

給与計算の仕組み

給与計算の基本的な仕組みも確認しておきましょう。給与計算を行う際は、総支給額から給与から天引きされる各種金額(控除額)を差し引き、差引支給額(手取り額)を求めます。

式にすると、
総支給額-控除額=差引支給額です。

 総支給額とは、基本給に加えて各種手当や残業代、歩合給、賞与などを合計した金額のことで「額面」とも呼ばれます。

控除額には、所得税や住民税などの税金、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料、社宅費や親睦会費など任意で差し引かれる費用が含まれます。社会保険料や税金の金額は法改正により毎年見直されるため、給与計算には最新の制度に基づく知識が必要です。

計算で求めた差引支給額は、従業員の銀行口座などに振り込みます。

給与を支払うまでの手順

実際に給与計算を行っていく際には、いくつかのステップに分けて進めていくとよいでしょう。感覚で進めるとミスの元となり、従業員からの信頼を失う原因にもなりかねません。

ここでは、実際に給与を支給するまでの基本的な流れを5つのステップに分けて紹介します。各工程をそれぞれ理解し、正確かつ効率的な処理につなげましょう。

ステップ①総支給額を計算する

はじめに行うのが、総支給額の計算です。従業員一人ひとりの総支給額を正確に計算するところから始めましょう。

総支給額とは、基本給のほか、各種手当、残業代などを合算した金額のことです。例えば、従業員の基本給は250,000円、通勤手当が10,000円、残業代が20,000円だった場合、総支給額は280,000円となります。

賞与・臨時手当が支給される場合は注意が必要です。支給タイミングや金額が変動しやすく、計算ミスが起こりやすい部分といえます。割増賃金の計算も必要です。法定労働時間を超える労働である時間外労働と、法定休日における労働である休日労働、深夜時間帯の労働について確認しておきましょう。これらの割増率は法律で定められているため、自社で独自に決めることはできません。

固定残業代制度を導入している場合も注意しなければならないことがあります。固定残業代とは、実際の残業の有無にかかわらず、あらかじめ定めた一定時間分の残業代を毎月の給与に含めて支払う制度です。
ただし、固定残業代として認められる時間には上限があり、原則として月45時間・年間360時間までとされています(※)。手当についての計算も必要です。手当を計算する際は課税対象となる部分と非課税となる部分も併せて確認しておきましょう。

勤怠データと連動させることも重要です。欠勤や遅刻があった場合は控除が必要となるため、日々の勤怠管理データが正しく反映されているか確認したうえで給与計算を行うことが求められます。

参考:e-Gov 法令検索:労働基準法 第三十六条

ステップ②控除額を計算する

次に行うのは、控除額の計算です。ここでいう控除額とは、税金や社会保険料など、法令に基づき給与から差し引く金額のことです。社会保険料や税金は会社が従業員の給与から天引きし、各機関へ納付します。

なお、給与支給時にあらかじめ所得税などを差し引いて国や自治体へ納める仕組みを源泉徴収といいます。 社会保険料には会社負担分と従業員負担分があるため、内訳を確認することが重要です。
ここでは、従業員の給与から差し引く社会保険料と雇用保険料の計算式を紹介します。

社会保険料:各保険料=標準報酬月額×保険料率 
雇用保険:雇用保険料=総支給額×保険料率

社会保険料には健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料が含まれ、これらは会社と従業員が原則半分ずつ(50%ずつ)負担します。計算時は、算出した保険料のうち従業員負担分のみを控除し、誤って全額を差し引かないよう注意が必要です。

一方、雇用保険料は事業の種類や雇用形態によって会社と従業員の負担割合が異なります。「社会保険料はすべて半分ずつ」という誤った認識のまま計算すると間違いの原因になるため、正しい負担割合を確認しましょう。 詳しくは以下で確認できます。

参考:(PDF)厚生労働省:事業主・被保険者の皆さまへ 令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内[PDF]

保険料のほか、税金関係の控除額も算出する必要があります。源泉徴収の対象は、所得税と住民税です。 住民税は前年の所得に基づき市区町村が決定した額を12か月に分割して給与から控除します。

所得税は、給与から社会保険料と非課税手当を差し引いた課税対象額を基に、扶養親族数に応じた源泉徴収税額表で計算します。控除した金額は給与明細に必ず記載しなければなりません。計算ミスは信頼を損なうため、正確さが求められます。

例えば、社会保険料は実際の給与額ではなく標準報酬月額を基準に計算し、毎月ではなく定期的な見直しで額が決まります。住民税も前年所得に応じて自治体から通知された額を基に源泉徴収するため、年ごとに金額が変わる点に注意しましょう。

ステップ③最終的な支給額を決定する

控除額の算出が完了したら、総支給額から差し引き、最終的な差引支給額(手取り額)を決定します。この金額が従業員の給与口座に実際に振り込まれる金額となります。

一連の流れで丁寧に計算を行ってきたとしても、振り込む前に受け取り額が不自然に少なかったり多かったりしないか確認しておきましょう。このような状況になっている場合は、どこかで計算ミスが発生している可能性が高いといえます。

例えば、控除すべき社会保険料を引き忘れていたり、重複して計算していたりする場合は金額を大きく間違えてしまう可能性があるので、注意が必要です。誤りに気づいた場合は即座に修正対応しなければなりません。

決定した支給額は給与明細にわかりやすく明記し、従業員自身が確認できるようにすることも重要です。手取り額や控除に関してわからないことがあると不信感が生まれやすくなるだけではなく、担当者への問い合わせが発生し、対応に時間を取られてしまうことがあります。

透明性の高い給与明細を作成することは、問い合わせの数を減らすだけではなく、トラブルの予防にも役立つでしょう。

ステップ④金融機関への振り込み・明細書を用意する

手取り額が確定したら、次は実際に給与を支給するための準備を行います。ダブルチェック体制を整えたうえで金融機関への振り込み手続きを実行しましょう。

同時に明細書の発行も行います。法的には紙と電子データのどちらでも問題ありません。ただ給与を振り込むだけだと内容が不透明になり、従業員の疑問や不満につながってしまうことがあるので、わかりやすい明細書を発行することが重要です。

ステップ⑤期日までに社会保険料と税金を納付する

給与の支払いが完了したら、従業員から天引きした社会保険料や税金を所定の期日までに各機関へ納付します。

怠ると遅延金やペナルティが発生するので、注意しなければなりません。期日を守って慎重に行い、毎月のルーティンとしてスケジュールに組み込んでおきましょう。

給与計算の注意点

給与計算をするうえで注意しておかなければならないポイントがいくつかあります。中でも以下の4つは必ず確認しておきましょう。

注意点①情報漏えいに気をつける

給与計算で取り扱う従業員の氏名や住所、扶養家族の情報、給与額などは、すべて個人情報です。万が一情報が外部に漏えいするとプライバシー侵害に発展し、企業として信用を失う結果になってしまう可能性があります。

給与計算システムへのアクセス権限は適切に制限し、経理の担当者とは秘密保持誓約書を取り交わしておきましょう。紙の書類についても厳重な管理が必須です。

さらに、メールや外部ストレージを利用する際は暗号化を行い、不要になった書類やデータは復元できない形で廃棄することが重要になります。定期的なセキュリティ研修を実施し、情報管理の意識を全社的に高めることも効果的です。

注意点②計算ミスを起こさないようにする

当然のことではありますが、給与計算ではミスを起こさないようにしましょう。1円単位での正確な処理が必要です。小さなミスでも手間のかかる修正作業が必要になるほか、従業員からの信頼を失うなど、深刻な影響を与える可能性があります。

ダブルチェックのルールを設けたり、給与計算ソフトの導入を検討したりするのもおすすめです。

関連記事:給与計算でミスした場合の対処法と失敗を繰り返さないための防止策

注意点③勤怠管理を徹底する

給与計算を正確に行うためには、正しい勤怠データをもとに計算しなければなりません。勤怠情報が不正確であった場合、それを参考にしたすべての計算で誤差が生じます。

勤怠管理をサポートするシステムを導入するなどして対応しましょう。

注意点④法改正にも対応する

給与計算に関する業務は法改正の影響を受けやすい分野です。毎年のように社会保険料の料率変更や税制の改正などが行われているため、常に最新の情報を把握しておく必要があります。

自社対応をしている場合は、法改正に気づかず、誤った計算を継続してしまうリスクもあります。企業としての信用を守るためにも、法令に則った給与計算が必要です。

関連記事:【2025年】給与計算に関わる法改正と業務で対応する際のポイント

給与計算で押さえておきたいポイント

正しく給与計算を行うためには、制度や法令に沿った処理が必須です。給与計算で担当者の見落としがちな4つの重要ポイントを解説します。

ポイント①賃金支払いの五原則を遵守する

労働基準法では、賃金の支払いについて「五原則」と呼ばれるルールが定められています。

【賃金支払いの五原則】

  • 通貨で支払うこと
  • 直接労働者に支払うこと
  • 全額を支払うこと
  • 毎月1回以上支払うこと
  • 一定の期日を定めて支払うこと

参考:e-Gov 法令検索:労働基準法 第二十四条

従業員が安心して給与を受け取れるようにするためには、どのように、いつ、どんな方法で支払うかも重要です。五原則を守ることで無用なトラブルを避けることにもつながります。

ポイント②社会保険の要件を確認する

社会保険の加入要件を確認し、正しく理解しておきましょう。原則として正社員はすべての社会保険に加入することになりますが、パートやアルバイトでも一定の条件を満たしている場合は社会保険加入の要件を満たすことになります。

判断を誤ると未加入の状態が長く続き、さかのぼって保険料を支払わなければならない可能性もあるので、注意しましょう。

関連記事:社会保険の加入条件とは?基準や手続き、メリットまで詳しく解説

ポイント③従業員の情報を確認する

給与計算の際には、従業員一人ひとりの最新情報をもとに処理することが重要です。登録情報が古いままだと、正しい計算ができません。

雇用形態や勤務時間、扶養家族の有無・人数については入社後に情報が変わることもあります。給与計算システムを導入している場合でも、参照するデータが間違っていれば結果も間違えてしまうことになるので注意が必要です。

ポイント④地域ごとのルールを確認する

給与計算の際には、全国共通の法律に加え、地域ごとのルールや取り決めも確認する必要があります。 特に最低賃金は地域ごとに異なるため、よく確認しておきましょう。住民税も徴収額が自治体によって異なります。

給与計算の効率を高める方法

給与計算の効率化を目指したいと考えた場合は、どのような方法があるのでしょうか。給与計算ソフトの活用、またはアウトソーシングがおすすめです。

給与計算ソフトを活用する

給与計算ソフトを導入することで難しい計算作業を自動化し、ミスのリスクを大幅に減らすことが可能です。勤怠データと連携させるだけで正確な給与計算が可能になります。

ただし、ソフトを導入すれば完全に安心とは言い切れず、初期設定や運用ルールを誤ると計算ミスが発生することもあるので注意が必要です。 また、給与計算ソフトにはさまざまな種類があるので、自社に合ったものを選びましょう。

関連記事:給与計算DXとは|期待できるメリットと導入の基本的な流れ

アウトソーシングを活用する

外部の専門業者に業務を委託するアウトソーシングも非常に有効です。特に人材不足や給与計算に関する知識が不足している問題を抱えている場合は、専門家に任せた方がミスや対応の遅れといったトラブルを防げます。

給与計算は専門性が高いこともあり、属人化しやすい業務です。外注することで経理担当者の負担が大きく軽減され、業務の属人化リスクも抑えられるでしょう。

関連記事:給与計算アウトソーシングとは?依頼できる業務内容と料金相場を解説

給与計算は社労士に依頼するのがおすすめ

いかがだったでしょうか。本記事では給与計算の基本的な仕組みや計算方法、ミスを避けるために確認しておきたいポイントなどを紹介しました。

給与計算はミスが許されない重要な業務であり、慎重な対応が求められます。また、法律や税制の改正にも定期的に対応する必要があります。

自社での対応が難しいと感じる場合は、社会保険労務士法人エスネットワークスまでご相談ください。専門家が各社のニーズに合わせて柔軟に対応し、短期間での業務改善やDXの提案も行っています。法改正や税制改正にも迅速に対応できるため、法令遵守のためにもぜひご活用ください。

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