給与計算を効率化するのに効果的な方法は?実践するメリット&注意点
目次
給与計算は毎月発生する定型業務ですが、法律や税制の改正、さらには人手不足の影響もあり、自社対応が難しくなっているケースもあるでしょう。特に担当者の退職を控えている経理部門では、「現状のままでは限界が近い」と感じているケースも考えられます。
そこで、給与計算の効率化を検討してみてはいかがでしょうか。給与計算を効率化したいと考えている方向けに、具体的な方法とそのメリットを解説します。
この記事を読むことで検討できる効率化の方法がわかるほか、業務の質向上につながるポイントも見えてくるので、ぜひ参考にしてください。
給与計算業務の現状と課題
給与計算は企業にとって非常に重要な業務です。特に従業員数が100名を超える規模の企業では、属人化や法改正への対応など、現場の負担が集中しやすいという課題を抱えるケースも見られます。
ここでは、給与計算業務の現状と課題から解説します。
業務の属人化
給与計算業務が特定の担当者のみに依存している属人化の状態が起こっている場合、大きな課題となります。 給与計算業務は複雑で専門性が高いこともあり、誰でもできるものではありません。このような背景から、属人化が発生しやすくなるといえます。
中でも手順がマニュアル化されていなかったり、複雑な処理が経験と勘に頼って行われていたりするようだと、担当者が不在になった場合に業務が停滞する恐れがあります。また、限られた人材に業務が集中していると担当者が精神的なプレッシャーを感じてしまい、離職につながってしまう可能性もゼロではありません。
担当者は責任の重さから、毎月の給与計算時に強い緊張や不安を感じることもあるでしょう。 属人化が起こっている場合は解消を目指しましょう。
業務の煩雑化
特に、従業員数が多い企業ほど給与計算に必要な集計作業が煩雑で大変なものになります。 給与計算は基本給に加え、勤怠・残業・手当・賞与・社会保険料・税金など、さまざまな要素が複雑に絡み合う業務です。担当者が手作業で行っている場合はミスのリスクも高くなります。
その複雑さから新人や補佐が入りにくく、経験者に作業が集中しやすいのも大きな課題です。結果として、属人化を招く要因となります。 担当者の業務負担が大きく、苦しい仕事を我慢して行っているような状況だと人材の定着も難しくなってしまうでしょう。
法改正・税制改正への対応の難しさ
社会保険料率や労働基準法の改正といったものがあった場合、迅速に対応しなければなりません。ですが、そのためには高度な専門知識と情報収集が求められ、担当者の負担につながります。
社会保険料の計算に必要な保険料率は毎年のように改定されており、計算のたびに情報を収集し直さなければなりません。計算をミスすると従業員が不信感を抱いてしまう可能性があるだけではなく、企業のイメージ低下につながってしまうこともあるでしょう。
「間違えたらどうしよう」といった心理的負担が担当者にかかる点も、見逃せない課題です。
給与計算業務を効率化するメリット
現状の給与計算業務が一応機能している場合、時間やコストをかけて効率化に取り組む必要はないと感じる方もいるかもしれません。ですが、給与計算業務の効率化により以下のようなメリットが得られます。
メリット①業務の正確性が向上し、ミスを防げる
給与計算業務においてあってはならないのが、計算ミスです。もし従業員に誤った金額の給与や賞与を振り込んだ場合は、企業としての信頼を大きく損なう可能性があります。給与計算業務の効率化としてシステムやアウトソーシングを導入することにより、手作業で発生しやすい入力ミスや集計ミスを大幅に減少させることが可能です。
給与計算担当者の不安やプレッシャーも軽減されるため、精神的負担の軽減にもつながります。
メリット②法令遵守を強化できる
給与計算業務の難易度が高いのは、法令を遵守しなければならないことに加え、遵守すべき法令が頻繁に改定されるからです。業務効率化によって最新の法規制に基づいた形で計算を自動化できるような体制を整えれば、法令違反のリスクを抑えられるようになります。
ただし、そのためには法令対応に強いツールや業者を選ぶことが重要です。 また、給与計算業務を効率化したからといって、法律の改正について全く学ばなくてよくなるわけではありません。理解する努力は継続して必要です。
メリット③業務効率が向上する
給与計算業務を効率化することで、全体的な業務効率が向上します。給与計算では細かいデータ入力や繰り返しの作業が必要ですが、これらの業務が削減されることで業務スピードが上がります。
無駄を省けるようになれば、その分別の仕事に時間を割けるようになるでしょう。 業務効率が向上すれば残業が減少し、人件費の削減にもつながります。
メリット④迅速な対応が可能になる
常に業務が忙しく、仕事に追われた状態になると余裕がなくなり、突発的な業務に手が回らなくなることもあるでしょう。後回しにしているうちに忘れてしまうこともあるはずです。
業務効率が上がることで、問い合わせや法改正、従業員の入退者といった事態にも迅速に対応できるようになります。業務効率化により迅速な対応が可能になれば、ミスのリスクを抑えられる点もメリットの一つです。
メリット⑤データを一元管理できる
勤怠や給与、社会保険、税金などのデータがバラバラになっていると、適切な管理ができなくなることがあります。業務効率化のためにはこれらのデータを一元管理していくことが重要です。データの一元管理ができるようになれば、確認作業や転記ミスを減らせます。
データが一元管理されていれば、必要な情報の所在が不明になることもなく、日々の小さなストレスも抑えられるようになるでしょう。データを探す無駄な作業がなくなるので、業務に集中できる環境を作りやすくなります。
メリット⑥コストの最適化が図れる
業務効率化により、それまでと比較して給与計算にかかる時間と手間が減ります。これは、人件費や運用コストの削減と直接的に関わり合いのあるポイントです。
コスト全体の最適化を目指す場合は、給与業務の効率化に取り組むことも有効です。
給与計算業務を効率化する方法
実際に給与計算業務を効率化するには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、効果的な方法について5つ解説します。 自社で実行できそうな方法を確認してみましょう。
勤怠管理システムと連携させる
勤怠管理システムでは、給与計算の基礎となる勤怠データの効率的な管理ができるようになります。 手書きの出勤簿やExcelでの管理はミスにつながりやすいことに加え、確認にも時間がかかるので、効率的とはいえません。
勤怠管理システムを導入することで、給与計算の効率化を図ることができます。 勤怠集計の自動化と給与計算システムへの自動連携ができれば、作業時間は大幅に短くなるはずです。また、自動連携により、計算ミスや転記ミスの防止にもつながります。
ただし、導入するシステムが給与計算システムとスムーズに連携できるのかについては事前に確認しておかなければなりません。
ワークフローの見直し・自動化を図る
給与計算では、実際の計算だけではなく、申請・承認・確認といった複数の作業が含まれています。これらのワークフローを見直し、可能な部分から自動化を進めていきましょう。
特に複雑かつ時間を要する部分を自動化できれば、業務効率を大幅に向上させることが可能です。 ただし、例外的な処理が必要になることもあるので、すべてを自動化するのは難しく、手作業での対応も必要です。
給与計算ソフト・クラウドサービスを導入する
給与計算に活用できるソフトウエアやクラウドサービスを導入しましょう。法改正や社会保険料率の変更といったものにも自動対応できるものであれば、情報の収集にかける時間を抑えられるようになります。
クラウド型のサービスであればどこにいてもアクセスできるほか、データのバックアップをしやすいのも魅力といえるでしょう。ただ、自社に合ったソフトを選定しなければ効率化につながらない可能性があるので、注意が必要です。
給与計算業務の一部をアウトソーシングする
そこまで給与計算業務が担当者の大きな負担にはなっていないものの作業負担を軽くしたいと考えているのであれば、給与計算業務の一部をアウトソーシングするのがおすすめです。
たとえば、給与計算や年末調整といった一部の業務だけをアウトソーシングで外部の業者に依頼するだけでもかなり違ってきます。工数が多く、専門性の高い業務を委託することで、効率化の効果が高まります。どの業務を委託するかについては慎重に選ぶ必要があります。
現在、担当者の属人化が起こっているケースもあるでしょう。属人化の解消には時間がかかることもありますが、一部業務をアウトソーシングすることで業務が集中している担当者の負担を大きく減らせるのも特徴です。 担当者も「自分がすべて対応しなければならない」といった心理的負担も軽減されます。
給与計算業務全体をアウトソーシングする
従業員数が多いなどの理由から給与計算業務が大きな負担になっている場合は、給与計算業務全体をアウトソーシングするのも一つの選択肢です。給与計算の全工程を専門業者に任せることで、高い業務品質を維持しながら経理部門の負担を大きく軽減できるようになります。
期待できる効果は選択する業者によっても変わってくるので、対応範囲やサービスレベル、トラブルが発生した際の対応についてもよく確認しておくことが重要です。また、経理部門が担当する業務は給与計算だけではありません。時間がかかりやすい給与計算業務を外部の業者に任せることにより、本来力を入れたいコア業務に集中できるようになります。
給与計算業務は企業にとって重要なものということもあり、全体をアウトソーシングするのは不安に感じる方もいるでしょう。ですが、セキュリティ対策に力を入れていて、適切な形で機密保持契約を締結できる業者を選べば、社内情報の漏洩リスクを抑えることが可能です。
給与計算業務の効率化を行う際の注意点
給与計算業務の効率化はただ関連するシステムを導入したり、すべてを専門業者に任せたりするだけで成功するものではありません。効率化していくにあたり、いくつか気をつけておきたい注意点があります。
ここでは、効率化を成功させるために押さえておきたい注意点について紹介するので、事前に確認しておくことが重要です。
現状の業務内容と作業ボリュームを正確に把握する
まず行いたいのが、現状の業務内容と作業ボリュームの把握です。自社で実践している業務内容を一つひとつ丁寧に洗い出しておきましょう。属人化が起こっている業務があれば、それもチェックしておきます。
大切なのは、給与計算業務を見える化をすることです。担当者がどの作業にどれほどの時間をかけているのか、どこが属人化しているのかなどの実態を把握しなければ、的確に改善策を検討していくことはできません。とりあえず思いついた対策を実施してみたものの、効率化したつもりがかえって手間が増えたという状況になることも考えられます。
業務効率化のために最も重要なポイントでもあるので、時間と労力はかかりますが丁寧に取り組んでいきましょう。
自社の業務フローに合った仕組みを選ぶ
新規に給与計算システムやアウトソーシングなどを導入したいと考えているのであれば、自社の業務フローに合ったものを選択しなければなりません。不適切なものを選択した場合、かえって手間や混乱を招いてしまいます。
利用するサービス・商品・プランによって機能や費用が変わってくるので「有名だから」「他社が利用しているから」といった理由だけで選ばないことが大切です。
委託する場合は信頼できるパートナーを見つける
給与計算をアウトソーシングする場合は、信頼できるパートナーを選ぶことが何より重要だといえます。業務品質が高いのはもちろんのこと、セキュリティ体制、対応の柔軟性などを総合的に見極めていかなければなりません。
ただの外注先としてではなく、パートナーとして信頼できるかが重要です。料金面だけでなく、品質・実績・対応力なども総合的に評価しましょう。
アウトソーシングもうまく活用していくのがおすすめ
給与計算の効率化について紹介しました。具体的な対策や、効率化するメリットについてもご理解いただけたでしょう。すべてを自社担当者で抱え込んでしまうのではなく、業務の見える化やシステムの導入、アウトソーシングをうまく組み合わせて効率化につなげていくことが重要です。
給与計算のアウトソーシングを検討しているのであれば、社会保険労務士法人エスネットワークスまでご相談ください。煩雑で工数のかかる給与計算業務だからこそ、アウトソーシングすることで負担が大きく変わってきます。お客様に寄り添ったきめ細やかで柔軟なサービスを提供しているので、わからないこと、不安なこともお気軽にお問い合わせください。