【アウトソーシングほっとニュース】8月から雇用保険の基本手当日額が変更になりました

8月から、雇用保険の基本手当日額が変わりました。基本手当日額は毎年度改定されるものであり、今回も年齢区分ごとの最高額および最低額が引き上げられています。あわせて、失業の認定に係る期間中に自己の労働による収入があった場合の減額計算に用いる控除額も見直されました。従業員の離職に際して雇用保険関係の手続きを行う立場にある人事担当者としては、変更の内容と制度の仕組みを正確に把握しておくことが求められます。本記事では、今回の変更内容と、人事担当者として押さえておくべき事項を整理します。
1. 基本手当日額とは
基本手当日額とは、雇用保険の基本手当(求職者給付)について、1日当たりに支給される金額をいいます。原則として離職前6か月間に支払われた賃金(賞与等を除く)の総額を180で除して算定される「賃金日額」に、一定の給付率を乗じて算出されます。
給付率は一律ではなく、賃金水準に応じて80%から50%(60歳以上65歳未満の受給資格者は80%から45%)の範囲で逓減します。賃金水準が低いほど給付率は高くなり、賃金水準が一定額を超えると給付率は50%(60歳以上65歳未満は45%)で一定となります。また、賃金日額および基本手当日額には、年齢区分ごとの上限額と、年齢を問わない下限額が設けられています。
これらの上限額・下限額および給付率の区分は、毎月勤労統計における平均給与額の変動等を踏まえ、雇用保険法第18条に基づき毎年度8月1日に見直されます。特定の年度に限った臨時の措置ではなく、賃金水準の変動に応じて制度上継続的に行われている見直しです。
なお、基本手当が支給される日数(所定給付日数)は今回の変更の対象ではなく、年齢、離職理由、被保険者であった期間等に応じて別途定められています。
2. 8月からの変更内容
(1) 基本手当日額の最高額・最低額
基本手当日額の最高額(年齢区分ごと)および最低額が、以下のとおり引き上げられました。
基本手当日額の最高額
年齢区分 | 変更前 | 令和8年8月1日以降 | 引上げ額 |
60歳以上65歳未満 | 7,623円 | 7,830円 | +207円 |
45歳以上60歳未満 | 8,870円 | 9,110円 | +240円 |
30歳以上45歳未満 | 8,055円 | 8,270円 | +215円 |
30歳未満 | 7,255円 | 7,450円 | +195円 |
基本手当日額の最低額(年齢を問わず共通)
変更前 | 令和8年8月1日以降 | 引上げ額 |
2,411円 | 2,562円 | +151円 |
(2) 賃金日額の上限額・下限額
制度上は、まず算定の基礎となる賃金日額の上限額・下限額が改定され、これに伴って基本手当日額の最高額・最低額が変わります。今回の賃金日額の改定内容は以下のとおりです。
賃金日額の上限額
年齢区分 | 変更前 | 令和8年8月1日以降 |
60歳以上65歳未満 | 16,940円 | 17,400円 |
45歳以上60歳未満 | 17,740円 | 18,220円 |
30歳以上45歳未満 | 16,110円 | 16,540円 |
30歳未満 | 14,510円 | 14,900円 |
年齢を問わず共通の賃金日額の下限額も、3,014円から3,203円に引き上げられました。
上限額・下限額はあくまで基本手当日額の算定に用いられる基準であり、個々の受給者の基本手当日額は、離職前の賃金や年齢等に基づき個別に決定されます。そのため、すべての受給者の基本手当日額が一律に同額だけ引き上げられるものではありません。
(3) 減額計算に用いる控除額
失業の認定に係る期間中に自己の労働による収入(内職・手伝い等)があった場合、基本手当の減額計算に用いられる控除額が、1,391円から1,429円に引き上げられました。
具体的には、1日当たりの収入から控除額を差し引いた額と基本手当日額との合計額が、賃金日額の80%相当額を超える場合に、その超える額だけ基本手当日額が減額されます。また、収入から控除額を差し引いた額が賃金日額の80%相当額以上である場合は、基本手当は支給されません。
3. 今回の引上げの背景
今回の引上げは、次の2つの要因によるものです。
① 令和7年度の毎月勤労統計における平均給与額が、令和6年度と比べて約2.7%上昇したこと
② 最低賃金日額の適用(雇用保険法第18条第3項、同法施行規則第28条の5)
①について、毎月勤労統計は、厚生労働省が事業所を対象に実施している調査で、雇用、給与、労働時間の変動を毎月明らかにするものです。基本手当日額の上限額・下限額は、この調査による平均給与額の変動率に応じて、毎年度自動的に見直される仕組みとなっています。最高額の引上げ幅(+195円〜+240円)は、いずれもこの約2.7%の上昇率に対応しています。
②について、基本手当日額の最低額は、地域別最低賃金の全国加重平均額を基に算定される「最低賃金日額」を下回らないよう定められています。平均給与額の変動率のみで改定すると最低額は約2,476円にとどまりますが、最低賃金日額が適用された結果、2,562円となりました。最低額の引上げ幅(+151円、約6.3%)が最高額の引上げ幅(約2.7%)を上回っているのは、この理由によるものです。
令和8年8月1日以降の最低額は、次の計算式により算定されています。
1,121円(令和8年4月1日時点での地域別最低賃金の全国加重平均額)× 20 ÷ 7 × 0.8(給付率)= 2,562円
4. 基本手当日額の算定方法
1で触れたとおり、基本手当日額は賃金日額に給付率を乗じて算定されます。賃金日額が一定額(令和8年8月1日以降は5,480円)を超えると、給付率は賃金日額の水準に応じて連続的に逓減する計算式が適用されます。
厚生労働省が示す例によれば、60歳未満の受給資格者について、賃金日額が同一であっても、変更前後で基本手当日額は以下のとおり変わります。
賃金日額 | 変更前の基本手当日額 | 令和8年8月1日以降 |
6,000円 | 4,647円 | 4,683円 |
9,000円 | 5,933円 | 6,013円 |
なお、今回の改定では上限額・下限額のほか、給付率の計算に用いる金額の区分も引き上げられています。そのため、賃金日額が上限額・下限額から離れた水準にある方でも、上記の例のように基本手当日額が変わることがあります。
人事担当者が具体的な金額をあらかじめ算出する必要はありませんが、賃金水準に応じて給付率が変動する仕組みであることを理解しておくと、従業員からの質問にも落ち着いて対応できます。
5. 企業が対応すべき事項
基本手当日額の決定および支給は、雇用保険制度に基づきハローワークが行います。企業が基本手当を支給したり、基本手当日額を算定したりすることはありません。
企業に求められる対応は、従業員の離職に際して、雇用保険被保険者資格喪失届や離職証明書の作成・提出など、通常の雇用保険関係手続きを適切に行うことです。雇用保険被保険者資格喪失届は、被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内にハローワークへ提出することとされています。離職証明書に記載する賃金額等については、今回の変更にかかわらず、実際に支払った賃金額を通常どおり正確に記載します。
離職を予定している従業員から基本手当の金額について質問を受けた場合は、基本手当日額が離職前の賃金等に基づき個別に算定されるものであり、具体的な金額や受給資格についてはハローワークで確認する必要がある旨を案内してください。
6. よくある質問
Q1. 今回の変更で、退職するすべての従業員の基本手当日額が増額されますか。
今回は上限額・下限額に加えて、給付率の計算に用いる金額の区分も引き上げられているため、賃金日額が上限額付近・下限額付近にある方に限らず、幅広い賃金水準の方の基本手当日額が変わり得ます。たとえば60歳未満で賃金日額が6,000円の場合、基本手当日額は4,647円から4,683円に変わります(4章の計算例を参照)。ただし、引上げ幅は一律ではなく、賃金日額の水準と年齢区分に応じて個別に算定されます。
Q2. 賃金台帳や離職証明書の記載方法を変更する必要がありますか。
変更の必要はありません。離職証明書には、これまでどおり実際に支払った賃金額を記載します。基本手当日額の算定はハローワークが行います。
Q3. 従業員から具体的な受給見込み額を聞かれた場合、どのように対応すればよいですか。
具体的な金額は、離職前の賃金、年齢、離職理由等の個別事情によって異なるため、企業側で算定・回答するのではなく、ハローワークで確認するよう案内することが基本となります。
Q4. 基本手当日額は今後も毎年見直されるのですか。
基本手当日額の上限額・下限額は、雇用保険法第18条の規定に基づき、毎月勤労統計の平均給与額の変動に応じて毎年度見直される仕組みとなっています。加えて、最低額については最低賃金日額を下回らないよう調整されるため、地域別最低賃金の改定動向も影響します。令和9年度以降についても、その年度の賃金水準および最低賃金の動向に応じて、同様の見直しが行われる見込みです。
まとめ
8月から、雇用保険の基本手当日額の最高額(年齢区分ごと)および最低額が引き上げられました。引上げ幅は、最高額が年齢区分に応じて195円から240円、最低額が151円です。あわせて、算定の基礎となる賃金日額の上限額・下限額と、自己の労働による収入に係る控除額(1,391円から1,429円)も引き上げられています。
この変更は、令和7年度の平均給与額が令和6年度と比べて約2.7%上昇したことと、最低賃金日額が適用されたことの2つによるものです。最低額の引上げ幅が最高額を上回っているのは、後者によるものです。また、給付率の計算に用いる金額の区分も引き上げられているため、賃金日額が上限額・下限額の付近にある方に限らず、幅広い賃金水準の受給者に影響が及びます。
一方、企業に求められる対応は、従業員の離職に際して雇用保険被保険者資格喪失届や離職証明書の提出などの手続きを適切に行うことであり、基本手当日額の算定を行うことはありません。従業員から具体的な金額について質問を受けた場合、その確認先はハローワークとなります。
参考資料
厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更~8月1日(土)から実施~」(令和8年7月31日公表)
この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス 社会保険労務士 T.Y レストランでの接客から人事労務の世界へ転身しました。難しくなりがちな労務の話も身近に感じてもらえるようにお届けしていきます。