【アウトソーシングほっとニュース】第7回「アトツギ甲子園」の募集開始 ~中小企業の後継者育成を支援する取組~

経済産業省は、令和8年7月15日、第7回「アトツギ甲子園」の募集開始を公表しました。
中小企業では、経営者の高齢化や後継者不足への対応に加え、事業承継を円滑に進めるための後継者育成も重要な課題となっています。こうした背景を踏まえ、中小企業庁では、後継予定者が家業の経営資源を活用した新規事業に挑戦し、経営者として必要な経験やネットワークを築く機会として「アトツギ甲子園」を実施しています。
本記事では、第7回「アトツギ甲子園」の概要や募集内容、中小企業庁が実施する関連支援事業について紹介します。
1 なぜ今「アトツギ」の支援が必要なのか
中小企業では、経営者の高齢化や後継者不足が進む中、円滑な事業承継に向けた取組が重要な課題となっています。
中小企業の事業承継は、経営者の半数以上が、後継者へ事業を移行する期間として3年以上を要する※と回答しているほか、経済産業省の発表によれば現経営者・後継者ともに、事業承継における課題として「後継者の経営能力」を挙げています。
このような背景から、中小企業庁では、後継者が経営者として必要な知識や経験を身に付けられるよう、学習や交流、新規事業への挑戦の機会を提供する支援事業を実施しています。
※出典元:(株)帝国データバンク「事業承継に関する企業の意識調査」(2021 年 8月)
2 第7回「アトツギ甲子園」の概要と募集内容
アトツギ甲子園とは
アトツギ甲子園は、中小企業・小規模事業者の後継者・後継予定者が、家業の経営資源を活用した新規事業アイデアを発表するピッチイベントです。
事業承継前の段階から新たな事業に挑戦する機会を設けることで、後継者が経営者として必要な戦略立案力や発信力、実行力を養うことを目的としています。
地方予選を経て決勝大会が開催され、優れた取組には経済産業大臣賞などが授与されます。
第7回大会の主な募集内容
項目 | 内容 |
募集期間 | 令和8年8月3日(月)~11月25日(水)18時 |
対象者 | 中小企業・後継予定者(親族外承継を含む、代表権を有する前の方に限る) |
年齢要件 | 39歳以下(1987年4月以降に生まれた方) |
地方予選 | 令和9年1月19日~2月8日 |
決勝大会 | 令和9年2月26日 |
※応募資格の詳細や応募方法については、募集要項をご確認ください。
大会の流れ
ステップ | 内容 |
エントリー | 特設ホームページから応募 |
書類審査 | 応募内容を審査 |
地方予選 | 全国の各ブロックでプレゼンテーションを実施 |
決勝大会 | 地方予選通過者による全国大会を開催 |
アトツギ甲子園は、事業アイデアを競うことだけを目的とした大会ではありません。家業の経営資源を活用した新たな挑戦を通じて、後継者が経営者としての視点や経験を深める機会として位置付けられています。
3 アトツギ甲子園を支える関連事業
中小企業庁では、アトツギ甲子園に加え、後継者が継続的に学び、交流し、新たな挑戦につなげられるよう、さまざまな支援事業を実施しています。
これらの事業は個別に実施されるだけでなく、後継者の成長段階に応じて活用できるよう、相互に連携した支援策として設計されています。
主な関連事業
事業 | 概要 |
ACT | 後継者や支援機関を対象としたオンラインセミナー、ワークショップ、コミュニティなどを提供 |
アトツギSUMMER CAMP | 全国の後継者や支援機関が集い、交流や学びを深めるイベント |
地域アンバサダー | 地域における後継者同士の交流やコミュニティ形成を支援 |
(1)ACT
ACTは、後継者や支援機関を対象とした育成プログラムです。
後継者向けには、新規事業の考え方や事業構想の磨き方などを学ぶオンラインセミナーやワークショップを実施するとともに、参加者同士が交流できるコミュニティなどを提供しています。
また、自治体や金融機関、商工団体などの支援機関向けには、後継者支援に関する研修や情報共有の機会を設け、地域における支援体制の充実を図っています。
(2)アトツギSUMMER CAMP
アトツギSUMMER CAMPは、全国の後継者や支援機関が一堂に会する交流イベントです。
講演やワークショップ、参加者同士の交流を通じて、事業承継や新規事業に関する知見を共有するとともに、新たなネットワークづくりの機会を提供しています。
アトツギSUMMER CAMPは、令和8年8月31日から9月1日に東京都内で開催される予定です。
(3)地域アンバサダー
地域アンバサダーは、各地域で後継者同士の交流やコミュニティ形成を支援する取組です。
アトツギ甲子園の参加者などがアンバサダーとして活動し、地域における情報交換や相談の場づくりを通じて、後継者同士が継続的につながる環境づくりを進めています。
中小企業庁では、ACTによる学習、アトツギSUMMER CAMPでの交流、アトツギ甲子園での実践を組み合わせることで、後継者が経営者として必要な知識や経験を身に付けられる環境づくりを進めています。
後継者育成を支える仕組み
段階 | 主な取組 | 主な内容 |
学ぶ | ACT | 新規事業や経営に関する知識・考え方を学ぶ |
交流する | アトツギSUMMER CAMP | 全国の後継者や支援機関とのネットワークを広げる |
挑戦する | アトツギ甲子園 | 家業の経営資源を活用した新規事業に取り組む |
つながる | 地域アンバサダー | 地域で継続的に交流・相談できる環境を築く |
このように、中小企業庁では、後継者が一度のイベントへの参加で終わるのではなく、「学ぶ」「交流する」「挑戦する」「つながる」という各段階を通じて、継続的に成長できる環境づくりを進めています。
4 社労士法人として支援できること
後継者の育成では、新規事業への挑戦や経営者としての経験を積むことが重要ですが、それと同時に企業内部の労務管理体制を適切に整備しておくことも、円滑な事業承継には欠かせません。
事業承継後は、労働条件や就業規則、人事制度、未払い残業代のリスクなど、これまで見過ごされていた課題が顕在化するケースも少なくありません。こうした課題を承継前に把握・改善しておくことは、後継者が安心して経営に取り組むための土台となります。
社労士法人では、事業承継に向けた「労務デューデリジェンス(労務DD)」を通じて、次のような確認・支援を行っています。
主な確認項目 | 内容 |
就業規則・社内規程 | 法改正への対応状況や運用状況の確認 |
労働時間管理 | 残業時間や36協定、勤怠管理の確認 |
賃金制度 | 固定残業代や各種手当の適法性の確認 |
社会保険・労働保険 | 加入状況や手続漏れの確認 |
人事労務リスク | 労使トラブルや是正勧告履歴などの確認 |
このように、後継者の育成とあわせて労務管理体制を見直すことで、事業承継後の経営リスクを軽減し、持続的な企業経営につなげることが期待できます。
まとめ
経済産業省は、第7回「アトツギ甲子園」の募集開始を公表しました。
アトツギ甲子園は、中小企業・小規模事業者の後継者・後継予定者が、家業の経営資源を活用した新規事業に挑戦し、その取組を通じて経営者としての知識や経験を深めることを目的とした事業です。
また、中小企業庁では、ACTやアトツギSUMMER CAMP、地域アンバサダーなどの関連事業を通じて、後継者が継続的に学び、交流し、挑戦できる環境づくりを進めています。
後継者育成には、公的支援制度の活用だけでなく、承継後を見据えた労務管理体制の整備も重要です。事業承継を予定している企業では、こうした支援制度の活用とあわせて、「労務デューデリジェンス(労務DD)」などによる事前のリスク確認についても検討してみてはいかがでしょうか。
参照元:第7回「アトツギ甲子園」
この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス 社会保険労務士 T.Y レストランでの接客から人事労務の世界へ転身しました。難しくなりがちな労務の話も身近に感じてもらえるようにお届けしていきます。