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【アウトソーシングほっとニュース】国家公務員スキル一覧に学ぶ、中小企業のための「無理のない」人材育成のヒント

人手不足が深刻な影を落とす昨今、中小企業の経営者の皆様から「どのような人を採用し、どう育てれば定着してくれるのか」という切実なご相談をよくいただきます。組織の存続を左右するのは、結局のところ「」です。しかし、社内で「求める人物像」や「必要な能力」が曖昧なままでは、育成のアクセルを踏むことはできません。
実は今、この課題を解決するための実用的なヒントが、意外なところにあります。人事院から令和8年(2026年)6月に公表された最新の資料、「国家公務員スキル一覧」です。
「国家公務員の資料なんて、うちのような中小企業には関係ない」と思われるかもしれません。しかし、この一覧は、全府省職員41,287人へのアンケートと、17府省庁の人事担当者へのヒアリング、そして有識者へのヒアリングという丁寧なプロセスを経て、国家公務員に共通して求められる57のスキル項目と27のマインドセット項目に整理された、いわば「成長の地図」です。職員一人ひとりの力を体系的に伸ばし、育成の取組をつないでいこうという姿勢が、この資料には凝縮されています。
難しい専門用語は一旦横に置いておきましょう。この地図の土台には、経営学の世界で長く信頼されてきた「カッツ・モデル」という、非常にシンプルで使い勝手の良い考え方があります。これを自社の現場に引き寄せて考えることから、無理のない人材育成が始まります。

人材育成の「ものさし」:カッツ・モデルを味方につける

人材育成を戦略的に進めるためには、役職やキャリアの段階に応じて、求められるスキルの比重が変わることを理解する必要があります。
人事院の「国家公務員スキル一覧」は、経営学者ロバート・カッツが提唱した「カッツ・モデル」という考え方を土台に組み立てられています。この一覧では、国家公務員の実務に合わせて、能力を次の3つのカテゴリーに整理しています。
①業務スキル(実務を遂行するための基礎的・具体的なスキル。カッツ・モデルでいう「テクニカルスキル」にあたります):特定の業務を正確かつ効率的に遂行するための専門知識や技術です。中小企業の現場で言えば、「まずはこの作業を一人で完結できる」という基礎体力を指します。
②対人スキル(他者と関わりチームで働いていくためのスキル。「ヒューマンスキル」にあたります):周囲と協力し、チームで成果を出すための力です。コミュニケーションや交渉力などが含まれます。特筆すべきは、このスキルはどの階層の社員にとっても一貫して重要であるという点です。
③概念化スキル(組織が直面する課題に対して解決策や戦略を考えるスキル。「コンセプチュアルスキル」にあたります):物事の本質を見抜き、全体を俯瞰して将来の戦略を描く力です。「社長の右腕」やリーダー層には欠かせない、課題発見・解決のための知恵です。

ここで大切なのは、「役職が上がっても、特定のスキルが不要(ゼロ)になるわけではない」という点です。経営層になっても現場の感覚(業務スキル)は持ち合わせつつ、その「重み」を変化させていくイメージです。
●若手職員:業務スキルの重要性が高く、まずは実務の型を覚えることが成長の軸になります。
●中堅・リーダー:実務に加え、対人スキルが中心となります。周囲を巻き込む力や調整力が、チームの成果を左右します。
●経営層・右腕:概念化スキルが最大の武器になります。現場の細部以上に、「今、会社がどこへ向かうべきか」という判断力が問われます。
この比重の変化を理解しておくだけで、「今の彼にはどの能力を伸ばす言葉をかけるべきか」という判断がぐっと楽になります。

実際に人事院の資料に掲載されている「政策立案業務」のスキルマップ例を見ると、この移り変わりがよくわかります。若手職員に求められるのは「情報収集・活用力」「法令・制度理解」「タイムマネジメント」「文章力」といった業務スキルが中心です。中堅職員になると、これに「ステークホルダーマネジメント力」「コーチング力」といった対人スキルが加わります。そして管理職になると、「リーダーシップ力」「長期的構想力」「ナラティブ力(物語る力)」といった概念化スキルの比重がぐっと増していく、という設計になっています。
これはそのまま、中小企業における社員の成長ステップにも当てはめて考えることができそうです。

「スキルセット」と「マインドセット」の二階建て構造

カッツ・モデルで「どこを重点的に育てるか」が見えたら、次は「具体的に何を教えるか」です。人事院の資料では、能力を「スキルセット(技術)」と「マインドセット(姿勢)」の二階建て構造で整理しています。スキルが「目に見える建物」なら、マインドはその建物を支える「土台」です。
育成の視点で見ると、この2つには大きな違いがあります。
・スキルセットは、訓練や経験の積み重ねによって、一定の再現性を持って身につくものです(研修やOJTが有効)。
・マインドセットは、日々の業務、内省(振り返り)、そして上司との対話を通じて、時間をかけて育まれるものです。
具体的には、業務スキル・対人スキル・概念化スキルの3分野にわたって、計57のスキル項目が整理されています。さらに、それらのスキルを発揮するための土台として、「誠実さ」「向上心」「チャレンジ精神」など時代を問わず求められる18のマインドセットと、「アジリティ」「学び続ける姿勢」「AIデジタル活用志向」など変化の時代だからこそ求められる9つのマインドセット、合わせて27の項目が示されています。

中小企業の現場で特に意識したい項目を、この57のスキルと27のマインドセットの中から厳選して整理しました。

カテゴリー

具体的なスキル・マインドの例

中小企業の現場での「効能」

社会人基礎・汎用スキル

文章力、タイムマネジメント、デジタルリテラシー

報告の正確性が増し、業務のスピードアップとミス防止に直結します。

対人スキル

傾聴力、コーチング力、合意形成力

社員同士の信頼関係が深まり、離職防止と風通しの良い職場を作ります。

概念化スキル

論理的思考力、課題発見・設定力、俯瞰視点

「指示待ち」から脱却し、社長一人に頼らない自律型組織へと進化します。

マインドセット

誠実さ、向上心、チャレンジ精神、アジリティ(機敏さ)

失敗を恐れず、変化の激しい市場環境に強い組織文化を醸成します。

今日からできる、自社流「成長の共通言語」の作り方

多くの中小企業では、デキる人の条件が社長の頭の中だけにあり、社員には「背中を見て覚えろ」と伝わっていることが少なくありません。これが育成のボトルネックです。このスキル一覧をたたき台にして、社長の頭にある暗黙知を言語化しましょう。
明日から実践できる3つのステップをご提案します。
①「今のうちに必要なもの」を選ぶ:資料にある全ての項目を網羅する必要はありません。自社の現在のフェーズに合わせて、5つ程度のスキルをピックアップしてください。「うちの若手にはまず『正確性』と『文章力』を」「リーダーには『合意形成力』を」と絞り込むだけで、育成の焦点が定まります。
②「対話」のきっかけにする:面談などで「もっと頑張れ」と言う代わりに、「今は対人スキルの中の『傾聴力』を伸ばそうか」と、具体的な言葉で励ましてみてください。共通の言葉ができるだけで、本人の納得感と行動は劇的に変わります。
③「教え方」を使い分ける:「スキル(技術)は手順書や訓練で教える」「マインド(姿勢)は日々の声掛けと振り返りでじっくり育てる」というように、アプローチを分ける意識を持つだけで、教える側のストレスも軽減されます。

人を育てることは、未来への投資

「国家公務員スキル一覧」の作成背景には、公務の世界でも、職員一人ひとりの力を体系的に伸ばし、各府省や外部人材の育成の取組をつなげていこうという姿勢があります。国という大きな組織がこれほどまでに個人の成長と真剣に向き合い始めた今、機動力と柔軟性のある中小企業こそ、そのメリットを最大限に活かせるはずです。
このスキル一覧は、決して満点を取らなければならない正解のリストではありません。会社と社員が、同じ地図を見ながら「次はどの山に登ろうか」と語り合うためのヒントです
今日から始まる小さな言語化の一歩が、数年後には、どんな荒波も乗り越えていける強い組織を作ります。まずはこのリストを眺めながら、大切な社員の顔を一人ずつ思い浮かべることから始めてみませんか。エスネットワークスは、その温かな一歩を全力で応援しています。

出典:人事院「国家公務員スキル一覧 Ver.1.0


社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K

事業会社での人事労務キャリアを活かし、社会保険労務士として活動中。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、専門家の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。





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