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【アウトソーシングほっとニュース】「若手の離職実態調査」に見る、入社数年目の社員が離れていく本当の理由

先週の記事では、入社したばかりの新入社員が抱く「成長したい」という思いと、その裏側にある不安についてお伝えしました。今回取り上げるリクルートマネジメントソリューションズの「若手の離職実態調査2026」は、その新入社員がひと通り仕事に慣れ、若手と呼ばれるようになった後の姿を映し出しています。
少子高齢化によって働き手の確保が年々難しくなるなか、この時期の若手が辞めてしまうことは、単に人数が一人減るという以上の痛手です。仕事の進め方をようやく覚え、これから力を発揮してもらう段階での離職は、採用や教育にかけてきた時間や費用がそのまま失われることを意味します。
こうした背景から、近年は従業員を人件費としてではなく、育てることで会社に利益をもたらしてくれる大切な資産として捉える考え方(人的資本経営)が広がっています。単に人手の穴を埋めるという発想ではなく、一人ひとりが持っている力をどう発揮してもらうかが、経営の重要なテーマになっているのです。
しかし現場では、給与や休日といった条件面ばかりに目が向き、若手の気持ちの変化に気づけていないことが少なくありません。今回の調査結果から見えてきた「今どきの離職」の実態と、明日から取り組める対応のヒントをお伝えします。

辞めたくなる理由は、「やりがい」から「力を発揮できるか」へ

2026年の調査を2023年と比べると、若手が仕事に何を求めるかが大きく変わってきたことがわかります。
在職中の社員の約6割(62.2%)が、これまでに一度は「辞めようかな」と考えた経験があると答えています。その理由としては「仕事にやりがいや意味を感じない(21.8%)」「給与が見合っていないと感じる(19.5%)」が上位に挙がりました。
ここで注目したいのは、実際に会社を辞めた人が挙げた理由の変化です。「やりがいを感じない」という理由は前回調査(27.0%)よりも減った一方、「自分の能力や持ち味を活かせない」という理由は、前回調査ではわずか6.6%(12位)だったものが、今回は21.6%(2位)へと大きく増えています。
これは、会社が任せている仕事の内容と本人の力が見合っておらず、「ここにいても自分の力を発揮できない」と感じた若手が、早めに見切りをつけるようになったためと考えられます。給与や労働時間だけでなく、「今の仕事が自分に合っているか」という視点が、これまで以上に重視されているのです。

「仕方なく残る」から「自分から残りたい」へ ― 定着理由の変化

会社に残る理由も、大きく様変わりしています。かつては「特にリスクを取ってまで転職する理由がない」といった、いわば消去法的な理由が多くを占めていました。しかし最近は、前向きな気持ちから「ここに残りたい」と思う人が増えています。

区分項目変化(2023年⇒2026年)
仕方なく残る理由会社がつぶれる心配がない

18.0%→10.9%

転職にはリスクがあると感じる

21.3%→15.6%

転職先の条件に合うものが見つからない

14.2%→8.6%

自分から残りたい理由会社の考え方やビジョンに共感している

0.9%→6.9%

会社の知名度が高い

3.8%→9.7%

仕事にやりがいや意味を感じている

2.8%→8.4%

成長できる環境がある

3.3%→8.6%

給与や安定性といった不満を減らす要素だけでは、若手を引き止められない時代になりました。自分の成長や、会社への共感といったやる気を高める要素にどう応えるかが、定着の分かれ目になっています。

上司との相性は、「性格」ではなく「仕事の進め方」

ここで、前提として押さえておきたいことがあります。実際に離職した人が挙げた理由の1位は、依然として「労働環境や労働条件(22.4%)」でした。労働時間や休日といった基本的な条件を整えることは、社会保険労務士として何より強調したい、いわば土台の部分です。
その土台があった上で、若手の気持ちを会社につなぎとめているのは、上司との性格の相性よりも仕事の進め方の相性です。調査では、「辞めようと考えたことがない人」と「実際に辞めた人」を比べたとき、最も差が大きかったのが「上司との仕事の進め方が合っているか」という項目でした(5点満点で、辞めようと考えたことがない人が3.6、実際に辞めた人は2.8)。

労務管理の視点 ― 「指導のスタイル」を上司個人に任せきりにしない
上司と部下の折り合いが悪いとき、原因を性格の不一致で片づけてしまうと、対応のしようがなくなります。実際には「どこまで指示を出せばよいか」「本人の得意なやり方をどう活かすか」といった、仕事の進め方のすれ違いであることが多いものです。指示の出し方や仕事の任せ方について、管理職向けに簡単な目安を共有しておくと、個々の上司の力量に頼らない対応がしやすくなります。

「学び合える職場」をつくる ― 安心して意見を言い合える雰囲気を仕組みに

若手が求めているのは、単に居心地のよい職場ではなく、「率直に意見を言い合いながら、互いに力を高め合える職場」です。
調査では、安心して思ったことを言い合える雰囲気(心理的安全性)が高い職場ほど、離職が少ないという結果が出ています。中でも差が大きかったのが「同僚から学べているか」という項目です(辞めようと考えたことがない人が3.7、実際に辞めた人は3.0)。上司から教わるだけでなく、同僚同士で学び合える環境があるかどうかが、定着を左右する重要な指標になっています。

労務管理の視点 ― 「学び合い」を特別な制度にしない
大がかりな研修を新設しなくても、日々の運用の中で学び合いをつくることはできます。たとえば週に一度、15分程度、各自が仕事の中で気づいたことや工夫を共有する時間を設ける、あるいは、新しい仕事に取りかかる前に、それが会社の目指す方向やお客様の役に立つ理由を、数分でよいので伝える、こうした小さな積み重ねが、「ここでなら一緒に頑張れる」という安心感につながります。

「自分の力でできている」という実感が、最後の砦になる

自分がこの会社で成長できていると実感できることは、給与や待遇よりも強い、離職を防ぐ最後の砦になります
調査によると、離職を考えながらも思いとどまった人は、実際に辞めた人に比べて、「新しいスキルが身についている」「人に頼らずに仕事を進められている」という感覚が明らかに高いという結果が出ています。特に、「助言やサポートがなくても仕事をこなせている」という自信の実感は、思いとどまった人が3.1、実際に辞めた人が2.8と、はっきりとした差が見られました。
若手に「自分ならできる」という自信を持ってもらうためには、次のような関わり方が有効です。
・必要なスキルを整理し、短期間で「できるようになった」という手応えを積み重ねてもらう
・失敗しても大きな支障が出ない範囲で、本人の判断に任せる仕事を意図的につくる
・成果に対して具体的なフィードバックを行い、「この会社で働いていることを誇りに思える」という気持ちを育てる

おわりに ― 現場の関わり方が、若手の定着を左右する

今回の調査が示しているのは、給与や福利厚生といった、会社として一律に用意できる条件だけでは、若手の定着を図りきれない時代になったということです。日々の現場での関わり方こそが、これからの人材確保の鍵を握っています。

以下のチェックリストで、自社の状況を振り返ってみてください。
☐  労働時間や休日など、基本的な労働条件が適切に整っている
☐  若手一人ひとりが「自分の強みを活かせている」と感じられる仕事を任せている
 ☐  上司と部下の間で、「仕事の進め方」について話し合う機会がある
 ☐  同僚同士で学び合い、目標を共有できる関係がつくられている
 ☐  若手が過度に頼らず、自分の判断で仕事を進められる場面が用意されている
「ここで成長したい」「役に立ちたい」という若手の前向きな気持ちに、現場でどう応えるか。その積み重ねが、これからの厳しい採用環境を乗り越える力になります。

出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「若手の離職実態調査2026


社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K

事業会社での人事労務キャリアを活かし、社会保険労務士として活動中。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、専門家の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。





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