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【アウトソーシングほっとニュース】広がる「スポットワーク」― 利用する企業が知っておきたい労務管理のポイント ―









「急に人手が足りない」「ピークタイムの数時間だけ働いてほしい」――そんなときに、スマートフォンのアプリで人材を募集し、短時間・単発で働いてもらう「スポットワーク」を利用する企業が急速に増えています。最近では、大手企業が独自の仕組みを立ち上げる動きも出てきました。便利な一方で、企業(事業主)には知らないと「うっかり法律違反」になりかねない注意点があります。本記事では、最近の動向と、利用する際におさえておきたい労務管理の基本を、わかりやすく整理します。

1. そもそも「スポットワーク」とは?
「スポットワーク」とは、簡単にいえば 単発・短期で働く働き方 のことです。継続して雇い続ける関係ではなく、数時間から数日といった短い期間だけ働いてもらうもので、企業とアプリで募集・応募がマッチングし、面接や履歴書なしで仕事が決まるのが一般的です。
背景にあるのは、深刻な人手不足です。企業側には「ピークの数時間だけ人がほしい」というニーズがあり、働く側にも「すきま時間に働きたい」「シフトの融通がきくのが魅力」というニーズがあります。実際、副業をしている人や登録者数は年々増加傾向にあり、登録者には正社員も多く含まれる――つまり本業を持ちながらすきま時間に働く人が増えている、という調査結果も出ています。働き方改革で副業を認める企業が増えたことも、この流れを後押ししています。
最近の動向 ― 大手が独自プラットフォームを構築
日本マクドナルドは2026年5月、全国の店舗でアルバイト経験のある元従業員約300万人を対象に、独自の登録制スポットワークの仕組みを立ち上げました。全国約3000店舗が「ピークタイムの数時間」「連休中のみ」といった1日単位の募集を行うもので、元従業員に限定することでサービスの質を保ちつつ、現場の人手ニーズに応える狙いがあります。サイト公開から約1週間で数千人の登録申請があったとのことで、スポットワークが企業の人材活用の選択肢として定着しつつあることがうかがえます。
2. 「知らなかった」では済まされない ― 労務管理の注意点
厚生労働省は、スポットワークを利用する事業主向けに、労務管理上の注意点をまとめたリーフレットを公表しています。便利な仕組みですが、労働基準法などの労働関係法令を守る義務は、労働契約を結んだ事業主に生じます。仲介事業者(アプリの運営会社)ではなく、実際に働いてもらう企業の責任です。ポイントを順に見ていきましょう。
(1) 労働契約はいつ成立する?
労働契約は、働く人が会社の指示で働き、会社がそれに賃金を支払うことについて双方が合意すれば成立します。この点について厚生労働省は、面接などを経ずに先着順で就労が決まる求人の場合、別途特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人に働く人が応募した時点で労使双方の合意があったものとして労働契約が成立すると一般的には考えられる、と示しています。契約が成立したら、その時点から労働基準法などを守る義務が事業主に生じます。一度確定した勤務日や労働時間を変えるときは、事業主と働く人の双方の合意が必要です。
(2) 労働条件は必ず明示する
就業開始前に、賃金・労働時間などの労働条件を書面の交付などの方法で明示することは事業主の義務です。明示しなかった場合は労働基準法違反となります。なお、2024年4月の法改正により、就業場所・業務の変更の範囲や有期契約の更新上限の有無なども明示が必要な事項に加わっています。仲介事業者が用意する書式がこれらに対応しているかも合わせて確認してください。労働条件通知書の交付を仲介事業者が代行する場合もありますが、交付義務はあくまで事業主にあります。きちんと交付されているか、内容が適切かを必ず確認し、交付されていなければ事業主から交付してください。トラブルを未然に防ぐことにもつながります。
(3) 会社都合で休ませたら「休業手当」が必要
契約が成立した後に、事業主の都合で丸1日休んでもらったり、仕事を早く切り上げてもらったりした場合は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたります。この場合、休業手当として、平均賃金の60%以上を所定の支払日までに支払う必要があります。なお、その日の賃金を全額支払う場合はその必要はありません。「急に予定が変わったから来なくていい」という直前のキャンセルにも、この考え方が及ぶ点に注意が必要です。
(4) 着替えや片付けの時間も「労働時間」
事業主の指示による、指定の制服への着替えなど業務に必要な準備や、業務終了後の掃除などの後片付けを就業先で行った時間は、労働時間にあたります。求人を出す際は、こうした着替え等の時間も含めて始業・終業時刻を設定しましょう。また、事業主の指示で待機を命じた時間も労働時間に該当するため、待機時間にも賃金の支払いが必要です。労働条件通知書で示した賃金を一方的に減らしたり、「別途支払う」としていた交通費を支払わなかったりすることも労働基準法違反となります。
(5) ケガ・労災、ハラスメント対策も事業主の義務
スポットワークで働く人が通勤途中や仕事中にケガをした場合、就労先の労災保険から給付を受けられます(労災保険料は事業主の負担です)。また、雇入れ時の安全教育など労働安全衛生法に基づく労働災害防止対策や、相談窓口の設置といったパワハラ・セクハラ防止のためのハラスメント対策も、短時間で働く人に対しても事業主の義務です。「短期間だから」と省略してよいものではありません。
3. これから利用する企業へ ― チェックの視点
スポットワークは人手不足対策として有効な選択肢ですが、政府の調査でも「労働法の適用への対応が複雑」「人材の管理が複雑」といった企業側の不安が課題として挙げられています。導入にあたっては、次のような視点で社内の体制を整えておくことが大切です。
● 労働条件通知書がきちんと交付され、内容が適切かを確認する仕組みがあるか
● 着替え・片付け・待機の時間を労働時間として正しく管理できているか
● 会社都合で休ませる場合の休業手当の取扱いを理解しているか
● 当日の作業を任せられるよう、業務をわかりやすく標準化できているか
● 安全教育やハラスメント相談窓口など、短時間就労者も対象に含めているか
便利さの裏側にある「事業主の義務」を正しく理解して運用すれば、スポットワークは人手不足の強い味方になります。逆に、知らないまま使ってしまうと、賃金未払いや労働基準法違反といった思わぬトラブルにつながりかねません。
スポットワークの導入・運用にお悩みではありませんか?
労働条件通知書の整備、労働時間の管理ルール、休業手当の取扱いなど、スポットワークを安心して活用するための社内ルールづくりを当法人がサポートいたします。「これで合っているか不安」という段階でも構いません。どうぞお気軽に当法人へご相談ください。




いわゆる「スポットワーク」の留意事項等|厚生労働省


この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス
社会保険労務士K・E

労働保険事務組合での実務経験を活かし、女性ならではの視点で、相談しやすく寄り添ったサポートを心がけています。







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