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【アウトソーシングほっとニュース】 裁量労働制とは? 制度の基本と人事実務のポイント

 


近年、テレワークや副業・兼業の広がりなどを背景に、「働き方の柔軟化」や「自律的な働き方」への関心が高まっています。こうした中、裁量労働制についても、改めて注目が集まっています。

現在、2027年以降の施行に向けた労働基準法改正の議論においても、「自律的な働き方」と労働時間規制のあり方は重要な論点の一つとなっています。

また、株式会社チームスピリットとiU組織研究機構が実施した調査では、裁量労働制の拡大を「プラス」と受け止める回答が58.1%となりました。一方で、その受容度は単なる制度理解だけではなく、「自社の評価制度への信頼」と強く関係していることも示されています。

出典元:株式会社チームスピリット 調査リリース

本記事では、裁量労働制の基本的な仕組みを整理した上で、企業実務において押さえておきたいポイントについて、人事労務の観点から解説します


1.制度の成否を分ける「評価制度への信頼」

今回の調査で特に注目されるのは、裁量労働制に対する肯定的な評価が、「自社の評価制度への信頼度」と強く結びついている点です。

調査では、人事評価制度を「非常に信頼できる」と回答した層の90.6%が裁量労働制を肯定していた一方、「全く信頼できない」と回答した層では、肯定率は2.7%にとどまりました。

裁量労働制は、「労働時間」ではなく「成果」や「役割」を重視する側面を持つ制度です。そのため、社員側からは、

  • 評価基準が不透明ではないか
  • 管理職の主観に左右されないか
  • 成果のみを求められ、業務負荷が過度に高まるのではないか

といった不安が生じやすい面もあります。

この点からも、制度導入そのものだけではなく、「公正に評価される」という組織への信頼をどのように構築するかが、制度運用上の重要なポイントになると考えられます。


2.「自律的な働き方」は制度単体では成立しない

調査では、裁量労働制を肯定的に捉える層ほど、副業・兼業やテレワークにも肯定的である傾向が示されました。

これは、社員が

  • 時間の自由
  • 働く場所の自由
  • 所属の自由

を、それぞれ独立した制度としてではなく、「自律的な働き方」を構成する要素として捉えていることを示していると考えられます。

そのため、企業側としても、単に裁量労働制だけを導入するのではなく、評価制度、テレワーク制度、副業・兼業ルール、期待役割の共有、長時間労働防止を前提としたマネジメント方針などを含め、一体的に制度設計を行うことが重要になります。


3.そもそも裁量労働制とは何か

裁量労働制とは、実際の労働時間ではなく、あらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度です。

通常の労働時間制度では、実際に働いた時間を基準に労働時間管理や残業計算を行います。一方、裁量労働制では、業務の遂行方法や時間配分について一定程度、労働者本人の裁量に委ねることを前提として、「1日○時間働いたものとみなす」という形で運用されます。

ただし、裁量労働制は「自由勤務制度」や「残業代が不要となる制度」ではありません。

深夜労働や休日労働に対する割増賃金は必要であり、企業には健康・福祉確保措置や労働時間の状況把握も求められます。特に2024年4月以降は、本人同意の取得や健康・福祉確保措置の強化など、制度運用に関するルールが見直されています。


4.裁量労働制は「誰にでも適用できる制度」ではない

裁量労働制には、大きく分けて以下の2種類があります。

(1)専門業務型裁量労働制

研究開発、システムコンサルタント、デザイナー、記者など、業務の性質上、具体的な指示になじまない専門性の高い業務を対象とする制度です。

対象業務は、省令・告示により定められた20業務に限定されており、導入には労使協定の締結が必要となります。

(2)企画業務型裁量労働制

企業の本社・本店等において、経営企画や事業企画など、企業運営に関する企画・立案・調査・分析業務を担う労働者を対象とする制度です。

こちらは、労使委員会の設置および決議が必要となり、専門業務型よりも導入要件が厳格です。


専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の比較

両制度は、「実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間を労働したものとみなす」という点では共通しています。一方で、対象業務や導入手続きなどには違いがあります。


比較項目

専門業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制

対象業務

法令で定められた20の業務(研究開発、情報システム分析、デザイナー、放送番組のプロデューサー等)

事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務

導入手続き

労使協定(過半数組合等との締結)

労使委員会の設置および委員の5分の4以上の多数による決議

労働者本人の同意

必要(労働者ごと、有効期間ごとに書面で得る)

必要(労働者ごと、有効期間ごとに書面で得る)

行政への届出

労使協定の届出が必要

決議の届出が必要

定期報告

不要(ただし記録の保存は必要)

定期的な報告が必要(労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況など)

具体的な指示

業務遂行の手段や時間配分について、使用者は具体的な指示をしない

業務遂行の手段や時間配分について、使用者は具体的な指示をしない

健康確保措置

勤務状況の把握と健康確保措置の実施が必要

勤務状況の把握と健康確保措置の実施が必要

実務上は、「対象業務に該当するか」が重要な論点となります。特にIT業界などでは、「設計業務」と「単純な実装・運用業務」が混在しているケースも多く、制度適用の妥当性が問題となることがあります。


5.フレックスタイム制との違い

裁量労働制は、フレックスタイム制と混同されることがありますが、両者は制度趣旨が異なります。

フレックスタイム制は、始業・終業時刻について一定の柔軟性を持たせる制度であり、実際の労働時間を把握した上で清算を行います。

これに対し、裁量労働制は「みなし労働時間制」であり、実際の労働時間とは別に、一定時間働いたものとして扱う点に特徴があります。

そのため、裁量労働制では「労働時間管理が不要になる」のではなく、健康管理や長時間労働防止の観点から、むしろ実態把握が重要になります。


裁量労働制とフレックスタイム制の比較

裁量労働制は「仕事の進め方や時間配分」を本人に委ねる制度であるのに対し、フレックスタイム制は「働く時間帯の選択」を本人に委ねる制度です。


比較項目

裁量労働制(専門・企画)

フレックスタイム制

労働時間の計算

実際の労働時間に関わらず、協定・決議で定めた時間を働いたとみなす(みなし労働時間制

清算期間(1か月以内など)における総労働時間で計算する

時間の決定権

業務遂行の手段に加え、時間配分の決定も大幅に労働者の裁量に委ねる

始業・終業の時刻を労働者が自ら決定できる

主な目的

業務の性質上、時間管理がなじまない職種で、労働者の創造的な能力を発揮させること

生活と仕事の調和を図りながら、効率的に働くこと

時間外労働

みなし労働時間が法定労働時間を超える場合に発生

清算期間の実労働時間が、法定労働時間の総枠を超えた場合に発生

導入要件

労使協定/委員会の決議 + 本人の同意

就業規則への規定 + 労使協定の締結

休日・深夜労働

適用されるため、割増賃金の支払いが必要

適用されるため、割増賃金の支払いが必要

6.長時間労働防止には「客観的把握」が不可欠

一方で、裁量労働制については、従来から「長時間労働につながるのではないか」という懸念も指摘されています。

実際、今回の調査でも、約半数が「長時間労働防止策の形骸化」を懸念しており、ITシステム等による客観的な労働時間把握を求める声も多く見られました。

制度上は「みなし労働時間制」であっても、企業には安全配慮義務があります。

特に近年は、

  • PCログ
  • 入退館記録
  • 勤怠システム
  • テレワーク時の稼働状況

などを通じた客観的把握が、実務上重視される傾向にあります。

裁量労働制は、「労働時間を管理しない制度」ではなく、“細かな時間統制は行わない一方で、健康管理は適切に行う制度”として理解することが重要です。


7.実務上留意すべきポイント

裁量労働制の導入・運用にあたっては、単に制度を導入するだけではなく、組織全体としての運用設計が重要になります。

特に実務上は、

  • 対象業務該当性の整理
  • 労使協定・労使委員会対応
  • 本人同意の取得
  • 健康・福祉確保措置
  • 評価制度との整合
  • 管理職教育
  • 労働時間の客観的把握

など、多面的な対応が求められます。

また、「裁量を認める」としながら、実態として細かな指示命令や過度な業務負荷が生じている場合には、制度への不信感や法的リスクにつながる可能性があります。

そのため、裁量労働制は単なる労働時間制度としてではなく、「自律的に働ける組織」をどのように構築するかという観点から検討することが重要と考えられます。

今後、労働基準法改正議論の中で、「自律的な働き方」に関する議論はさらに進むことが予想されます。その中で企業には、「柔軟な働き方」と「健康確保」を両立できる制度運用が求められていくものと考えられます。


この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス                  社会保険労務士 T.Y                          レストランでの接客から人事労務の世界へ転身しました。難しくなりがちな労務の話も身近に感じてもらえるようにお届けしていきます。

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