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【アウトソーシングほっとニュース】住宅手当は割増賃金の算定基礎に含めるべき? 名称ではなく「実態」で判断を














東京・王子労働基準監督署が、住宅手当を一律の定額で支給していた都内の私立大学法人に対し、割増賃金の算定基礎に含めるよう是正勧告を行いました。住宅手当という「名称」であっても、支給実態によっては割増賃金の計算に含めなければならないケースがあります。本記事では、住宅手当を算定基礎から除外できる要件について、わかりやすく解説します。
1.今回の事案の概要

東京都内の私立大学法人が、定額で支給していた住宅手当を割増賃金(残業代など)の算定基礎に含めていなかったとして、王子労働基準監督署から是正勧告を受けました。
同法人の住宅手当の支給状況は、次のとおりでした。

・世帯主かつ扶養家族のある職員:月22,300円
・その他の職員(世帯主で扶養家族のない者・非世帯主):月17,500円

このように、実際にかかる住宅費用とは関係なく、世帯主かどうか・扶養家族がいるかどうかという基準で金額が決まっていたため、「住宅手当」という名前であっても、割増賃金の算定基礎から除外できる住宅手当には該当しないと判断されました。
その結果、1時間あたりの賃金が本来より低く計算され、未払いの割増賃金が発生していたとされています。報道によれば、未払い額は年間1,800万円に上るとされ、同法人は約6年分を遡って支払う方針を示しており、必要な支払総額は1億円以上になる見込みです。

出典:【今週の視点】住宅手当 定額支給は割増算定基礎へ 私立大に是正勧告|労働新聞 今週の視点|労働新聞社

2.割増賃金の算定基礎から除外できる賃金とは

労働基準法第37条第5項および同法施行規則第21条では、割増賃金(時間外労働・休日労働・深夜労働の割増賃金)を計算する際の基礎となる賃金から除外できるものとして、次の7つが限定列挙されています。

①家族手当
②通勤手当
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当
⑥臨時に支払われた賃金
⑦1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金

重要なポイントは、これら7つは「限定列挙」であるという点です。つまり、この7つに該当しない手当は、すべて割増賃金の算定基礎に含めなければなりません。

さらに、上記に該当するかどうかは、手当の「名称」ではなく「実態」で判断されます。たとえ「住宅手当」という名称で支給していても、その内容が法令で定める住宅手当の要件を満たしていなければ、算定基礎から除外することはできません。

3.「除外できる住宅手当」の要件

通達(平成11年3月31日基発第170号)では、割増賃金の算定基礎から除外できる住宅手当について、「住宅に要する費用に応じて算定される手当」と定義しています。

「住宅に要する費用」とは?
・賃貸住宅の場合:賃料(家賃)
・持ち家の場合:購入費用・管理費用
「費用に応じた算定」とは?
・住宅費用に一定の率を掛けた金額で支給する方法(例:住宅費の60%を支給)
・住宅費用を段階的に区分し、費用が増えるほど手当額も増える方法(例:住宅費が10万円までは5万円、20万円までは10万円を支給)

反対に、住宅にかかる費用とは関係なく、一律・定額で支給される手当は、ここでいう住宅手当には該当しません。
今回の事案では、世帯主かどうかや扶養家族の有無を基準に金額を決めて一律支給していたため、通達が「住宅手当に当たらない例」として挙げる「住宅以外の要素に応じて定率又は定額で支給することとされているもの(例えば、扶養家族がある者には2万円、扶養家族がない者には1万円を支給することとされているようなもの)」に該当すると判断されたとみられます。

4.所定労働時間の算出方法にも注意

今回の事案では、月平均所定労働時間(割増賃金の単価を計算する際の分母となる時間数)の算出方法についても指導が行われました。

土曜日の実際の所定労働時間は4時間だったにもかかわらず、平日の所定労働時間である7時間勤務したものとして計算していたため、本来151時間であるべき月所定労働時間が163時間として計算されており、結果として1時間あたりの賃金が低く算出されていました。

割増賃金の計算では、月平均所定労働時間を実態に即して正しく算出することも重要です。

5.住宅手当は採用面でも注目されている

労働政策研究・研修機構が令和8年3月に公表した「福利厚生に関する労働者調査」によると、正社員が必要だと思う福利厚生制度・施策のトップは「家賃補助や住宅手当の支給」で38.8%でした。非正社員を含めた結果でも32.6%と、「人間ドック受診の補助」「慶弔見舞金制度」に次いで3番目に多くなっています。

年齢階級別にみても、10歳代20.0%、20歳代33.7%、30歳代37.1%、40歳代33.2%、50歳代33.5%、60歳代28.4%と、幅広い年齢層にニーズがあることがわかります。

人材採用・定着の観点からも住宅手当は注目される福利厚生ですが、支給方法を誤ると今回のように多額の未払い割増賃金が発生するリスクがあります。

6.企業に求められる対応

現在、定額の住宅手当を支給し、割増賃金の算定基礎から除外している企業は、運用を改める必要があります。具体的には、次のような対応が考えられます。

【対応の選択肢】
①住宅手当の支給方法を、住宅費用に応じた算定方法(実費連動型)に見直す
②現行の定額支給を維持したうえで、割増賃金の算定基礎に含めて計算する
③過去に未払い賃金が発生している場合は、遡って清算する

いずれの対応をとる場合も、給与規程の改定や、従業員への丁寧な説明が必要となります。また、住宅手当だけでなく、家族手当・役職手当など他の諸手当についても、割増賃金の算定基礎に含めるべきものが除外されていないか、この機会に総点検することをおすすめします。

▼ ご相談は当法人へ

住宅手当をはじめとする諸手当の取扱い、給与規程の見直し、未払い割増賃金の清算手続など、賃金制度に関するご相談は当法人までお気軽にお問い合わせください。貴社の実態を踏まえ、法令に適合した運用方法をご提案いたします。


この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス
社会保険労務士K・E

労働保険事務組合での実務経験を活かし、女性ならではの視点で、相談しやすく寄り添ったサポートを心がけています。







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