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【アウトソーシングほっとニュース】 令和8年度からの新たな「高年齢者等職業安定対策基本方針」の策定について

 


厚生労働省は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第6条に基づき、令和8年度(2026年度)から令和11年度(2029年度)までを対象とする新たな「高年齢者等職業安定対策基本方針」(以下「本方針」といいます。)を策定しました。

1.はじめに(背景)

我が国における高年齢者雇用政策は、以下のように段階的に発展してきました。

時期

主な内容

政策のポイント

1986年

初代基本方針

60歳定年の普及が中心

1990年代〜

制度整備の進展

60歳定年の義務化、定年後の雇用継続制度の導入促進

2013年〜

雇用確保の強化

希望者全員の65歳までの雇用確保

2021年〜

就業機会の拡張

70歳までの就業機会確保に向けた多様な支援策の提示

 このように、高年齢者雇用は「雇用の延長」から「就業機会の拡張」へと発展してきました。

本方針は、高年齢者を「支えられる側」から「支える側」へと位置づけ直し、「生涯現役社会」の実現を目指すものです。

2.全体像について


本方針では、今後4年間の方向性として、次の4つの柱が示されています。

  • 高年齢者の就業の動向に関する事項
  • 高年齢者の就業の機会の増大の目標に関する事項
  • 事業主が行うべき諸条件の整備等に関して指針となるべき事項(事業主が講ずべき措置)
  • 高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項(国が実施する施策)

以下では、それぞれの内容について順に説明していきます。

3.高年齢者の就業の動向


現在、日本は本格的な人口減少社会にありますが、労働市場においては高年齢者がかつてないほど重要な役割を担っています。

(1)人口構造の変化と労働力の見通し

今後20年間で、働く世代(生産年齢人口)は激減しますが、働く意欲のある高齢者は増え続けると予測されています。

項目

令和2年(2020年)

令和22年(2040年)推計

変化のポイント

65歳以上の人口

約3,603万人

約3,928万人

2.9人に1人が高齢者に

生産年齢人口(15-64歳)

約7,509万人

約6,213万人

20年間で約1,296万人減少

65歳以上の労働力人口

約919万人

約1,262万人

人口減の中でも働く高齢者は増加

(2) 就業率の現状(世界トップクラスの水準)

日本の高齢者の就業率は、過去10年間で大幅に上昇しました。特に65〜69歳の就業率は、OECD諸国の平均と比べて約2倍という非常に高い水準です。

年齢階級

令和6年(2024年)就業率

10年前(2014年)との比較

60~64歳

74.3%

13.6ポイント上昇

65~69歳

53.6%

13.5ポイント上昇

 (3)企業の雇用制度と賃金

企業側でも、高齢者が長く働ける環境整備が進んでいます。

  • 雇用確保の状況: 21人以上の企業の99.9%が65歳までの雇用確保措置を実施済みです。また、70歳までの就業確保措置を講じている企業も34.8%まで広がっています。
  • 賃金の水準: 定年後も賃金水準を維持する傾向が強まっています。60〜64歳の賃金水準は5年前より上昇し、定年前の8割以上の賃金を維持する企業は約4割(39.6%)に達しました。




(4) 今後の課題:安全と能力開発

働く高齢者が増える一方で、特有の課題も浮き彫りになっています。

課題項目

現状のデータ

労働災害のリスク

雇用者に占める60歳以上の割合は19.1%ですが、死傷者の30.0%を占めています。

職業能力開発

研修(Off-JT)の受講率は、全体平均37.0%に対し、60歳以上は21.1%に留まります。


課題はあるものの、高齢者の働く意欲は非常に高く、現在仕事をしている高齢者の8割以上が「70歳くらいまで、あるいはそれ以上」働きたいと考えています。

4.就業機会の増大の目標

令和11年(2029年)までに、高齢社会対策大綱(令和6年9月13日閣議決定)で示された以下の政策目標の達成を目指します。

指標

2029年度までの目標値

現状実績

60~64歳の就業率

79.0%以上

74.3%

65~69歳の就業率

57.0%以上

53.6%

70歳までの就業確保措置の実施率

40.0%以上

34.8%

 

事業主においては、65歳までの雇用確保を確実に実施した上で、70歳までの就業機会確保に向けた取組が求められます。

5.事業主が講ずべき措置

高齢者が意欲と能力に応じて年齢に関わりなく働き続けられる社会の実現を目指し、事業主が取り組むべき事項を「就業環境の整備」「再就職の援助」「キャリア設計の支援」の3つの側面から具体的に示しています。

それぞれの詳細な内容は以下の通りです。


(1) 高齢者が能力を発揮し続けるための「就業環境の整備」
 事業主は、高齢者の雇用機会を確保するため、単に雇用を維持するだけでなく、以下の7つのポイントに留意して環境を整えることが求められています。


  • 採用の柔軟性: 募集・採用時の年齢制限は原則禁止されていますが、高齢者の雇用促進を目的として「60歳以上」を対象に募集・採用することは認められています
  • スキルの維持・向上: 公的機関や民間の教育訓練も活用し、高齢者の知識や経験を活かすための職業訓練を推進します。
  • 身体的負担の軽減: 体力低下などに配慮し、作業補助具の導入、機械設備の改善、照明などの作業環境の整備を行います。また、労働災害を防止するための措置を講じることも努力義務とされています。
  • 職域(仕事の幅)の拡大: 高齢者の知識や経験が活かせるよう職務を再設計し、年齢のみを理由に職場から排除しないようにします。
  • 適正な評価と処遇: 能力評価の仕組みや専門職制度を整え、意欲や能力に応じた適切な配置と処遇を行います。
  • 柔軟な勤務形態: 短時間勤務、隔日勤務、フレックスタイム制などを導入し、個人の体力や就業希望の多様化に対応します。
  • 企業間での協力: 同一産業や地域の事業主同士で、高齢者雇用のノウハウ共有や共同の取組を進めることが推奨されています。


(2)スムーズな次へのステップを支える「再就職の援助」

解雇などにより離職せざるを得ない高齢者が、早期に再就職できるよう以下の支援を行います。

  • 在職中の活動支援: 求職活動のための休暇付与やその間の賃金支給、教育訓練費用の補助などの経済的支援に努めます。
  • 情報の提供と斡旋: 求人情報の収集・提供や、関連企業への再就職の斡旋、カウンセリングの実施などを行います。
  • 「求職活動支援書」の作成: 本人の希望に応じて、能力や希望を記載した書面を交付します。作成にあたっては、これまでの豊富な経歴を記載できる「ジョブ・カード」の活用が推奨されています。
  • 公的機関・助成金の活用: ハローワークと連携し、雇用保険制度に基づく助成金を有効に活用することが挙げられています。


(3)将来を見据えた「キャリア設計の支援

労働者が若い段階から将来を考え、高齢期まで充実した職業生活を送れるようサポートします。

  • 情報の提供と相談: キャリア設計に必要な情報提供や、カウンセリングを行い、労働者が自ら主導して将来を選択できるよう配慮します。
  • 活動への配慮: 労働者が社外の講習を受けるなどのキャリア形成活動を行う場合、勤務時間などについて必要な配慮を行います。
  • 個人の適性に合わせた支援: 労働者の希望や適性を把握した上で、それに応じた教育訓練などの援助を行います。

6.国による支援・施策

国は、少子高齢化が進む中で、年齢に関わらず意欲と能力のある高齢者が活躍できる「生涯現役社会」の実現を目指しており、主に以下の3つの施策を進めています。


(1)70歳まで働ける機会の確保

まず国が企業に求めているのは、高齢者が長く働き続けられる「場」の提供です。

  • 65歳までの雇用確保(義務): 65歳までの希望者全員の雇用確保措置を確実に実施することが求められており、不適切な企業には是正勧告や企業名公表などの厳しい措置も取られます。
  • 70歳までの就業確保(努力義務): 令和2年の法改正により、70歳までの就業確保措置を講じることが企業の努力義務となりました。これには定年引き上げや継続雇用のほか、起業支援といった「創業支援等措置」も含まれます。
  • 「70歳雇用推進プランナー」による技術的支援: 制度を導入する際、企業は職務の再設計や賃金制度の見直しといった課題に直面します。そこで、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)に配置された「70歳雇用推進プランナー」が、専門的・技術的なアドバイスを行い、実務面から企業をバックアップする体制が整えられています。


(2) 再就職の強力なサポート

今の会社を辞めて新しい仕事を探す高齢者のために、再就職支援を強化しています。

  • ハローワークの専門窓口: 全国の主要なハローワークに「生涯現役支援窓口」を設置し、キャリアプランの相談や、個々の経験を活かせる求人の開拓を個別に行っています。
  • 求職活動支援書の活用: 離職予定の高齢者がスムーズに次を探せるよう、企業が本人の職務経歴や希望をまとめた「求職活動支援書」を作成・交付することを促しています。
  • 年齢制限の禁止: 採用時に年齢で差別されないよう、企業への指導や啓発も行っています。


(3) 安心して働くための環境づくり

長く働き続けるためには、給料や安全性、スキルの向上が欠かせません。

  • 適切な待遇と評価: 定年後の再雇用であっても、不合理な賃金格差をなくし、能力や成果に基づいた適切な評価・報酬体系を整えるよう企業に促しています。
  • 学び直しの支援: AIやデジタル技術など、新しいスキルを身につけるための教育訓練を行う企業や個人を支援しています。
  • 安全な職場: 高齢者の特性(身体能力の変化など)に配慮した作業環境の改善を進め、労働災害を防ぐ取り組みを強化しています。
  • 多様な働き方: 地域の「シルバー人材センター」による軽易な仕事の提供や、フリーランス・起業を目指す人への情報提供も行っています。

7.さいごに

本方針は、年齢に関わりなく働ける「生涯現役社会」の実現に向け、事業主が果たすべき役割を明確にしています。 また政府は、処遇改善や環境整備に取り組む事業主に対し、助成制度の強化に加え、「70歳雇用推進プランナー」等による専門的・技術的支援を提供する体制を整えています。事業主の皆さまにおかれましては、これらの支援制度を有効に活用し、高年齢者が安全に、かつ納得感を持って能力を発揮し続けられる職場環境の整備を進めることが求められます。

今回の基本方針策定に伴う具体的な助成金の受給要件や、就業確保措置の導入に伴う就業規則・実施計画の作成等について、詳細な検討が必要な場合は当法人までご相談ください。


この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス                  社会保険労務士 T.Y                          レストランでの接客から人事労務の世界へ転身しました。難しくなりがちな労務の話も身近に感じてもらえるようにお届けしていきます。

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