【アウトソーシングほっとニュース】厚労省が宅配業向けカスハラ対策マニュアルを公表 場面ごとの対応方法を明示

厚生労働省は、宅配業で働く方々をカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)から守るため、「業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアル 宅配業編」を公表しました。集荷・配達時や営業所窓口での荷受け時など、場面ごとに想定されるカスハラ行為を整理し、企業が取るべき対応方法を具体的に示しています。
これまで厚生労働省は、全業種共通の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を配布してきました。しかし、業種によってハラスメントの態様や、現場で取れる対応策は大きく異なるという課題がありました。
そこで厚労省は、特定の業種に絞り、その業種特有のルールや事例を盛り込んだマニュアルを作成する取組を進めています。より実戦的な支援を行うことが、この取組の主旨です。
・研修資料・動画の提供 … 従業員が「どこからがカスハラか」を判断できる教育素材の配布
・啓発ポスターの作成 … 店頭や営業所に掲示し、顧客に対して「加害者にならないよう」牽制
重点業種としては、2024年度に「スーパーマーケット業」が選定され、続く2025年度は「宅配業」がターゲットとなりました。その成果として今回公表されたのが、「宅配業編」のマニュアルです。
厚労省の実態把握調査(宅配業を営む企業の従業員から得た18,715件の回答を分析)によると、過去3年間にカスハラを経験した人は約42.6%にのぼりました。経験者がうけたカスハラの内容として最も多かったのは、次の3つです。
・継続的・執拗な言動(繰り返しのクレーム等) 61.8%
・精神的な攻撃(脅迫、侮辱、暴言等) 58.1%
マニュアルでは、宅配業特有の業務場面ごとにカスハラに該当する可能性がある行為が紹介されています。
「今すぐ荷物を持ってこい」「〇時〇〇分に玄関前に持ってこい」といった強い命令口調での指示、物を投げつける、胸ぐらをつかむ等の行為。
「早くしろ」「店長を呼べ」等の強い命令口調、名前を大声で呼び捨てる、長時間にわたる居座りなど。
「早く調べろ」「謝罪しろ」等と声を荒げる、長時間にわたる電話、切電の拒否など。
「配達前に必ず電話を入れろ」「営業時間外に配達しろ」といった特別扱いの要求(マニュアルにおける「想定しているサービスを著しく超える要求」)は、カスハラに該当する可能性があるとされています。
マニュアルでは、特別扱いの要求があった場合、理由を十分に確認したうえで対応を判断すべきとしています。具体的な対応の流れは次のとおりです。
② 自社の非の有無を判断 → サービス提供者側に不備があった場合は、非が認められる範囲に限定して謝罪する
③ それを超える不当な要求には毅然と対応 → 謝罪の範囲を超える要求や、理由が正当でない要求に対しては、毅然と断る
ポイントは、「非がある=何でも応じる」ではないという点です。謝罪は非が認められる範囲に限定し、それを超える不当な要求には毅然と対応することがマニュアルで強調されています。
正当なクレームとカスハラを区別する基準として、マニュアルでは次の2つのポイントを挙げています。
判断ポイント② その言動により従業員の就業環境が害されているか
なお、たとえ自社に過失やサービスに不備があった場合でも、要求の手段・態様が社会通念上許容される範囲を超えていれば、カスハラに該当する可能性があるとされています。「うちに非があるから何を言われても仕方がない」というわけではない、という点は押さえておきたいポイントです。
マニュアルでは、宅配業におけるカスハラに対する共通方針として、次のような姿勢が示されています。
各企業においては、あらかじめ判断基準を明確にしたうえで、社内の考え方を統一し、現場と共有しておくことが重要です。営業所での啓発ポスターの掲示や、対応マニュアルの整備など、現場で働く従業員を守る仕組みづくりが求められます。
冒頭でも触れたとおり、令和8年10月1日からは全企業でカスハラ対策が義務化されます。就業規則の整備、相談窓口の設置、従業員研修の実施など、準備すべき事項は多岐にわたります。施行直前は対応が集中することが予想されるため、早めの準備が不可欠です。
を書いたのは・・・社会保険労務士法人エスネットワークス
社会保険労務士K・E
労働保険事務組合での実務経験を活かし、女性ならではの視点で、相談しやすく寄り添ったサポートを心がけています。