【アウトソーシングほっとニュース】 令和8年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の概要と企業対応

厚生労働省は、職場における熱中症予防対策の徹底を目的として、令和8年5月から9月まで「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施します。本キャンペーンは、「職場における熱中症防止のためのガイドライン」に基づく対策の周知・啓発を行うものです。
本稿では、キャンペーンの内容とともに、令和7年の法令改正との関係を踏まえた対応事項について整理します。
1.キャンペーンの位置づけ
本キャンペーンは、厚生労働省が労働災害防止団体等と連携し、事業場に対して熱中症予防対策の周知・啓発を行う取組です。
具体的には、ガイドラインに基づく対策の周知、資料およびオンライン講習の提供、ポータルサイトの運営等が実施されます。
なお、本キャンペーンは新たな法的義務を追加するものではなく、既存の労働安全衛生管理に関する取組の周知を図るものとされています。
2.令和7年改正を踏まえた対応の整理
熱中症対策については、令和7年の労働安全衛生規則の改正により、事業者に対して、異常発生時の報告体制の整備、重篤化を防止するための措置手順の作成および関係作業者への周知が求められています。
これらは、熱中症の発生に備えた体制整備に関するものです。
これに対し、令和8年に示されたガイドラインでは、暑熱環境の把握および作業方法の調整、健康状態に応じた配慮等について、現場での具体的な実施方法が示されています。
具体的には、湿球黒球温度(WBGT)値を用いて暑熱環境を評価し、その値に応じて作業内容や作業時間を調整すること、また、糖尿病や高血圧症等の疾病を有する者について医師等の意見を踏まえた配慮を行うことなどが示されています。
また、本キャンペーンは、これらの対策について一定期間に重点的な取組を促す周知・啓発施策として位置づけられます。
これらの関係は、次のとおり整理することができます。
■ 全体像の整理

3.重点事項として示された3つの対応
本キャンペーンでは、特に以下の3点について重点的に周知が行われています。
(1)WBGT値の把握とそれに応じた対策
WBGT(湿球黒球温度)値は、気温・湿度・輻射熱・風速を考慮した暑熱環境の指標です。
事業場においては、作業環境のWBGT値を把握し、その水準に応じた措置を講じることが求められます。
想定される対応は次のとおりです。(暑さ指数について)
- WBGT測定器の設置または活用
- 作業時間の短縮・休憩時間の確保
- 水分・塩分補給の徹底
- 作業内容の見直し(高負荷作業の回避等)
(2)重篤化防止のための体制整備
熱中症は初期対応の遅れにより重篤化するおそれがあるため、以下の体制整備が求められています。
- 早期発見のための体制整備
- 重篤化防止のための措置手順の作成
- 関係作業者への周知
具体的には、現場責任者や作業員が異常を認識した場合の報告経路、対応手順(冷却、医療機関への搬送等)をあらかじめ定めておく必要があります。


(出展元:厚生労働省)
(3)自覚症状・基礎疾患を有する者への配慮
糖尿病や高血圧症などの基礎疾患は、熱中症の発症や重症化に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、以下の対応が求められます。
- 健康診断結果等の情報を踏まえた配慮
- 必要に応じた医師等の意見の聴取
- 作業内容・作業時間の調整
個別の健康情報の取扱いには十分留意しつつ、安全配慮義務の観点から合理的な範囲で対応を行うことが重要です。
4.令和7年の発生状況(速報値)からみる傾向
厚生労働省の速報値によると、令和7年の熱中症による死傷災害は以下のとおりです。
- 死傷者数(休業4日以上):1,681人
- 死亡者数:15人
死亡者数は減少した一方で、死傷者数は前年から約4割増加しています。
業種別の傾向は以下のとおりです。
- 死傷者数:製造業が最多、次いで建設業、商業、運送業、警備業
- 死亡者数:建設業が最多、次いで警備業
また、個別事例として、以下の課題が確認されています。
- 労働衛生教育が実施されていなかった
- 基礎疾患を有する者への配慮が行われていなかった
これらは、いずれも事前の体制整備や教育により対応可能な領域です。
5.企業における実務対応の整理
本キャンペーンおよびガイドラインを踏まえ、企業として整理しておくべき対応は次のとおりです。
(1)作業環境管理
- WBGT値の測定または把握方法の確立
- 暑熱環境に応じた作業基準の設定
(2)作業管理
- 作業時間・休憩時間の設定
- 水分・塩分補給のルール化
- 高温時間帯の作業回避
(3)健康管理
- 健康診断結果の活用
- 有所見者への就業上の配慮
- 体調不良時の申告ルールの明確化
(4)教育・周知
- 熱中症の症状・予防方法の教育
- 緊急時対応手順の周知
(5)緊急対応体制
- 発見時の対応手順の文書化
- 連絡体制の整備
- 医療機関への搬送手順の確認
6.まとめ
本キャンペーンでは、WBGT値の把握、重篤化防止のための体制整備および健康状態に応じた配慮等について周知が行われています。
事業場においては、令和7年の法令改正により求められている対応を前提として、ガイドラインに基づく具体的な対策を講じるとともに、キャンペーン期間を活用した取組の強化を図ることが重要です。
この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス 社会保険労務士 T.Y レストランでの接客から人事労務の世界へ転身しました。難しくなりがちな労務の話も身近に感じてもらえるようにお届けしていきます。