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【アウトソーシングほっとニュース】転倒事故を報告せず書類送検 「労災かくし」が招く法的リスク














長崎県内の食品製造会社が、工場内で起きた転倒事故による労働災害(労災)を、労働基準監督署に報告しなかったとして、いわゆる「労災かくし」の疑いで書類送検されました。労災かくしは刑事罰の対象となる違法行為です。今回の事案をもとに、労災かくしとは何か、どのようなリスクがあるのかをわかりやすく解説します。

1.今回の事件の経緯

令和6年(2024年)12月、長崎県諫早市内にある食品製造会社の工場で、製造ラインで働いていた従業員が転倒し、膝蓋骨(ひざのお皿の骨)を骨折するという労働災害が発生しました。転倒の原因は、機械から離れた際に床の補修箇所の盛り上がりにつまずいたことでした。この従業員は22日間、仕事を休まなければならない重傷を負いました。

しかし同社はこの事故を労働基準監督署に報告せず、健康保険を使って治療させ、自己負担分を会社が補填していたことが定期監督(定期的に行う立入調査)によって発覚。令和8年(2026年)2月25日、会社と同工場の総務課長が諫早区検察庁へ書類送検されました。

事件の概要
業種食品製造業(パン類・菓子類の製造)
所在地長崎県諫早市内
事故発生令和6年(2024年)12月 工場内製造ライン
事故内容従業員が床の段差でつまずき転倒・膝蓋骨骨折、22日間休業
容疑労働安全衛生法第100条第1項違反(労働者死傷病報告の未提出)
書類送検令和8年(2026年)2月25日 諫早区検察庁へ
被送検者当該会社および同工場の総務課長

2.労災かくしとは?

労災かくしとは、法律により報告が義務付けられている労働災害が起きたにもかかわらず、労働基準監督署長に「労働者死傷病報告」を提出しない、または虚偽の内容を報告することをいいます。

⚠️ 「隠す意図がなくても」違反になります

故意に隠したつもりがなくても、提出を忘れた・うっかり遅れたというケースも労働者死傷病報告義務違反として労働局の指導や刑事罰の対象となります。「知らなかった」では済まされない点に注意が必要です。

また、従業員本人が「労災にしなくていい」と言った場合でも、会社側の報告義務はなくなりません。従業員が労災保険を使うかどうかと、会社が届出を行う義務は別の話です。


3.労働者死傷病報告の義務と提出期限
「労働者死傷病報告」とは 労働者が業務上の事由で負傷・疾病・死亡した場合に、事業主が所轄の労働基準監督署長へ提出する法定の届出書類です。休業日数によって様式と提出期限が異なります。
休業4日以上または死亡の場合(様式第23号)

従業員が4日以上休業した場合は、遅滞なく所轄の労働基準監督署長へ提出しなければなりません。なお、労働安全衛生規則第97条の改正により、2025年1月から労働者死傷病報告は電子情報処理組織を使用して(電子申請により)提出することが義務化されています。今回の事案では22日間の休業が発生しており、この届出が必要でしたが、同社は報告を怠っていました。

休業4日未満の場合(様式第24号)

休業が4日未満の場合は、各四半期(1〜3月・4〜6月・7〜9月・10〜12月)ごとにまとめて、その期間の翌月末日までに提出します。なお、けがをしたが休業しなかった場合は報告の必要はありません。

⚠️ 健康保険を業務上のけがに使うことはできません

業務中や通勤中のけが・病気には労災保険を使うことが原則です。健康保険法により、業務上の負傷・疾病に健康保険を使うことは認められていません。今回の事案のように健康保険で処理していた場合、発覚後に給付金の返還を求められることがあります。


4.労災かくしが発覚する主なきっかけ

労災かくしは、次のような経緯で発覚するケースが多くあります。

📋 発覚の主な3つのパターン
従業員による内部告発 労災保険による補償を受けられないことに不満を持った従業員が、労働基準監督署に通報するケース。休業が長引いて会社の費用負担が続くにつれ、不満が高まりやすくなります。
病院(医療機関)からの通報 業務上のけがに健康保険が使われていることに気づいた医療機関が、労働基準監督署に通報するケース。
労働基準監督署の定期監督(立入調査) 今回の事案がまさにこのケースです。定期的に行われる立入調査によって、報告漏れが発覚しました。

5.労災かくしのリスクと罰則

労災かくしが発覚した場合、会社と担当責任者の双方が罰則の対象となります。罰金だけでなく、企業経営に深刻な影響を与えるリスクがある点を正しく理解しておくことが重要です。

⚖️ 労災かくしに伴う主なリスク
刑事罰
労働安全衛生法第120条第5号により、50万円以下の罰金。会社と担当者の両方が対象(両罰規定)。
企業イメージの失墜
実名報道により企業イメージが大きく損なわれ、受注や採用活動に長期的な悪影響が出る恐れがある。
従業員との信頼関係の破綻
労災補償を受けられない従業員との関係が悪化し、職場環境の悪化や離職につながる恐れがある。

6.事業主の皆さまへ:労災発生時の対応チェックポイント

労働災害が発生した場合は、以下のポイントを必ずご確認ください。適切な初動対応が、後のトラブルを防ぎます。

📋 労災発生時の対応チェックポイント
労災保険を使う 業務中・通勤中のけがには健康保険ではなく「労災保険」を使うことが原則です。会社の負担軽減を理由に健康保険を使わせることは違法となる場合があります。
労働者死傷病報告を提出する 休業4日以上の場合は、遅滞なく様式第23号を所轄の労働基準監督署へ提出してください。従業員本人が「労災にしなくていい」と言っても報告義務は消えません。
事故状況を正確に記録・報告する 報告内容に誤りや不備があると、監督署に事実関係を誤認されることがあります。発生状況・原因・被害の程度を正確に把握・記録しておくことが重要です。
再発防止策を講じる 事故原因を調査し、同様の事故が起きないよう職場環境を改善してください。今回の事案では床の補修箇所の管理不足が事故につながりました。定期的な職場点検が重要です。

7.労災かくしを防止するための社内対策

労災かくしは、個人の判断によって会社全体が重大なリスクを負う結果になります。組織として防止するために、以下の対策を検討してください。

✅ 社内で整備しておきたい防止策
休業を要する業務災害は労働基準監督署への報告が必要であることを、社内で周知・徹底する
報告担当者(報告責任者)を明確にし、事故発生時の社内連絡体制を整備する
現場従業員に対して、軽微なけがでも上司への報告を義務付け、業務上のけがに健康保険が使えないことを周知する
従業員に対して業務災害発生時の会社への報告を就業規則で義務付ける
労災隠しに対しては現場責任者にも刑事罰が科されることを社内で周知する
🏢 労災に関するご相談は当法人へ

「これは労災にあたるのだろうか」「どの様式を使えばいいのかわからない」「申請の手続きが複雑で不安」――労働災害が発生した際には、こうした疑問が生じることが多いかと思います。

当事務所では、労災に該当するかどうかの判断から、必要書類の作成・労災申請のサポートまで、事業主の皆さまに代わって対応しております。労災対応でお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。


この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス
社会保険労務士K・E

労働保険事務組合での実務経験を活かし、女性ならではの視点で、相談しやすく寄り添ったサポートを心がけています。







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