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【アウトソーシングほっとニュース】働き方改革関連法施行後5年の総点検:データで読み解く労働価値観の多様性

働き方改革関連法の施行から5年という大きな節目を迎えました。「残業を減らそう」という掛け声が日常に溶け込んだ今、私たちの働き方は本当に変わったのでしょうか。それとも、単に数字上の帳尻を合わせているだけなのでしょうか。国は今、大規模な「働き方改革関連法施行後5年の総点検」を行っています。3月5日に厚生労働省が公表した最新の労働意識調査(令和7年10月実施)を紐解くと、かつての「全員一律に長時間働く」というモデルは完全に崩壊したことがわかります。
現在の労働環境は、単に法律で残業を規制する段階を超え、「働く時間に対する意識がかつてないほど多様化している」フェーズに突入しています。多くの人が「今のままでいい」と考える一方で、なぜ「もっと働きたい」人や「減らしたい」人が一定数存在するのか、その内訳を最新データで見ていきましょう。

1. 数字で見る、労働者の「本音」

最新の調査データによると、労働者の「働く時間」に対する希望は、大きく3つのグループに分かれています。
「このままでよい」派:59.5%
「減らしたい」派:30.0%
・「増やしたい」派:10.5%(「増やしたい」3.2%+「やや増やしたい」7.3%の合計)
「仕事は少ないほどいい」という風潮が強い現代において、実は10人に一人が「もっと働きたい」と手を挙げている事実は、少し意外に映るかもしれません。
一方で、働き方改革が進んだ現在でも、依然として3割もの人が「今の時間は多すぎる、減らしたい」と考えている現実があります。労働時間の悩みは、単純な時短だけでは解決できないほど、個人の価値観と深く結びついているのです。

では、まず全体の1割を占める「もっと働きたい」と願う人たちの、切実かつ前向きな理由から探ってみましょう。

2. 「もっと働きたい」人の動機:お金、成長、そして責任感

労働時間を増やしたいと考える10.5%の人々の背景には、単なる「仕事好き」で片付けられない多様な動機があります。

理由の分類具体的な背景主なデータ
経済的要因子育て費用や住宅ローン、豊かな生活や将来への蓄えのために、生活の糧としての収入を増やしたい。たくさん稼ぎたい(41.6%)
残業代がないと家計が厳しい(15.6%)
自己実現・成長若いうちに圧倒的な経験を積み、プロとしてのスキルを磨きたい、あるいは納得いくまで仕事を全うしたい。仕事の完成度を高めたい(10.2%)
知識・経験・スキルを高めたい(7.0%)
環境周囲に急かされず、自分の納得のいくまで時間をかけて丁寧に取り組みたいというプロ意識の表れ。自分のペースで仕事をしたい(19.7%)

特に注目すべきは「自分のペースで仕事をしたい」という理由です。これは、単にダラダラ働きたいのではなく、「周囲の目や営業時間という枠に縛られず、自分が納得できるクオリティまで仕事を仕上げたい」という高い完成度を求める心理が働いています。

収入や成長を求める声がある一方で、その反対に「今は時間を減らすべきだ」と考える3割の人たちは何を求めているのでしょうか。

3. 「労働時間を減らしたい」人の動機:健康と人生のバランス

労働時間を減らしたいと考える30.0%の人々が重視しているのは、仕事以外の「人生の質」です。
最大の理由:自分の時間を持ちたい(66.7%)  家族、趣味、自己研鑽など、仕事以外の時間を確保したいという欲求。
守りの理由:健康を害しないため(39.6%)  肉体・精神的な負荷を軽減し、燃え尽き(バーンアウト)を防ぐための防衛本能。
合理性の理由:収入が割に合わない(30.0%) 「この給料で、この拘束時間はコストパフォーマンスが悪い」という、非常にシビアで合理的なキャリア観。

ここで重要なのは、「画一的な時短」の時代の終焉です。減らしたい派の64.1%が「常に減らしたい」と願う一方で、12.6%は「減らしたいが、時々増やしたい」という柔軟な意向を持っています。 これは「忙しい時はガッツリ働き、落ち着いたらしっかり休む」といったメリハリを求めている証拠です。これからの企業には、一律のルールではなく、個人の状況に応じた「柔軟な時間管理」が求められています。

増やしたい派と減らしたい派の理由が見えてきました。それでは、最も多い「現状維持」派の心理はどうなっているのでしょうか。

4. 「現状維持」の裏側にある、安定とあきらめ

全体の約6割を占める「このままでよい」というグループ。ここには満足感だけではない、複雑な事情が隠れています。
ポジティブな維持: 「仕事と生活のバランスを変えたくない(44.3%)」。現在のワークライフバランスに納得している、理想的な層です。
ネガティブ・構造的な維持: 「収入を維持したい(32.0%)」「企業の成長に期待できない(7.7%)」という声に加え、「顧客との調整など、業務の性質上、減らすことができない(11.4%)」という切実な理由も存在します。

「現状維持」とは、必ずしも「満足」を意味するわけではありません。「本当は変えたいけれど、生活や仕事の構造上、変えられない」という、ある種の「構造的な固定化」が含まれていることを忘れてはいけません。

ここまでは労働者の視点でしたが、彼らを雇う「企業側」はどう考えているのでしょうか。

5. 企業と労働者の「温度差」:ヒアリングから見えた現場の課題

企業へのヒアリングからは、経営現場の苦悩と、世代による価値観のズレが浮き彫りになっています。
企業のジレンマ: 「人手不足で受注を確保するために本当は労働時間を増やしたいが、残業を増やすと人材の採用が困難になったり、若手を中心に『離職』を招く恐れがあるため、増やしたくても増やせない。」
特に建設業や運輸業では、労働者側の「もっと稼ぎたい」というニーズが、制度と衝突するケースも見られます。
現場の生の声: 「20~30代は残業や休日労働を望む者はいないが、40~50代は残業代を稼ぎたがる傾向がある。特にドライバーからは『もっと稼げる他社に移る(から、労働時間を増やしてくれ)』と言われることもあるため、人材の囲い込みのために時間を増やさざるを得ない場合がある。」

企業は「人材確保(離職防止)」のために時間を減らしたい一方で、「特定の層の収入確保」のために時間を増やしたいという、相反するニーズの板挟みになっています。

最後に:自分らしい「働く」を選ぶために

本稿を通じて見えてきたのは、働く時間に対する価値観の圧倒的な多様性です。皆さんに伝えたいメッセージは3つです。
①正解はない: 100人いれば100通りの「ちょうどよい時間」があります。
②変化する価値観: ライフステージ(子育て、自己研鑽、介護など)によって、望ましい時間は常に変わります。企業側としては、「時間の短さ」だけでなく、「時間の柔軟な選びやすさ」も重要です。
③対話の重要性: 「なぜ働きたいのか」「なぜ減らしたいのか」という動機を、企業と労働者が共有することこそが、これからの労働問題解決の鍵になります。

最後に、主要な動機をマトリックスでまとめました。未来の働き方を考えるヒントにしてください。

方向性ポジティブな動機ネガティブ・構造的な動機
増やしたいスキル向上、自己実現、仕事の完成度生活費の確保、残業代への依存
減らしたい趣味・家族との時間、自己研鑽健康維持、精神的負荷、報酬の不釣り合い
このままでいい現状のバランスへの満足感収入減少の不安、仕事の性質・顧客対応

社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K

事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。


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