【アウトソーシングほっとニュース】2026年度 最低賃金の議論がスタートしました~今年の注目ポイントと企業が今から考えておきたいこと~
2月27日、厚生労働省にて「第72回中央最低賃金審議会」が開催され、2026年度の最低賃金額改定に向けた議論が正式にスタートしました。審議会では、具体的な金額の議論に先立ち、最低賃金制度そのもの(特に「目安制度」)の在り方が主要テーマとして取り上げられています。
2026年は、政府が掲げる「2020年代中に全国平均1,500円」という意欲的な目標に向け、例年以上に「制度の抜本的な在り方」が問われる年になりそうです。
本記事では、審議会資料を踏まえ、今年の最低賃金議論の特徴と企業実務への影響ポイントを整理します。
1. 「1,500円目標」に向けた加速とEU指標の影
石破政権が目標達成時期を「2020年代中」へ前倒ししたことで、今後数年間は年率7〜8%(100円前後)の引き上げが定着する可能性があります。
今回の審議会で注目すべきは、中長期的な視点として「EU指令(最低賃金に関する欧州連合指令)」の考え方が議論に上っている点です。
EU指令の参照指標:賃金中央値の60%、または平均賃金の50%
日本の最低賃金設定においても、こうした「国際基準」をどの程度反映させるかが、今後の目安額決定に大きな影響を与えるでしょう。
2. 「発効日のバラつき」という新たな課題
2025年度の審議では、都道府県によって「最低賃金の発効日」が大幅にずれ込む(10月~翌年3月まで大きく分散)という事態が発生しました。
【実務上の混乱事例】秋田県では答申の遅れから発効日が翌年3月末になるなど、県をまたいで拠点を持つ企業にとって給与計算の運用負荷が極めて高い状況となりました。
今回の審議会資料では、この「発効日の適正化」が検討事項として明記されました。今後は全国的に10月1日付近へ統一される方向で議論が進む見込みです。
3. 「ランク区分(ABC)」のさらなる見直し
現在、都道府県は「A・B・C」の3グループに分けられ、引き上げ額の目安が提示されています。2025年度の最低賃金改定では、「隣県より低くしたくない」、「全国最下位を避けたい」といった意識が強く働き、国が示す目安額を大幅に上回る引上げを行った地域が相次ぎました。
審議会では、このような近隣県との獲得競争や最下位争いといった過度な意識が審議を停滞させている懸念が示されました。今後は、A・B・Cランク区分について中長期的な見直しの可能性が議論され、また、地方審議会の裁量に一定のブレーキがかかる可能性も否定できません。
検討事項:ランク間の格差是正、およびランク区分そのものの再編
4.人事が今すぐ着手すべき「3つの防衛策」
最低賃金が1,500円に近づくということは、単に時給労働者のコストが上がるだけではありません。「年収の壁」の意識変化や、「正社員の初任給」との逆転現象など、構造的な問題への対応が急務です。
①「2020年代末」を見据えた人件費シミュレーション: 現在の給与体系のまま全国平均1,500円に到達した場合、どの等級まで影響を受けるか。
②月給制社員の「時給換算額」チェック: 月給を1ヶ月の平均所定労働時間で割り、最低賃金を下回っていないか再点検。
③「生産性向上」と「価格転嫁」のセット検討: 賃上げを「コスト増」で終わらせず、DX化による業務効率化やサービス価格の見直しを経営陣と協議する。
最後に
2026年度の議論は、「今年いくら上がるか」だけでなく、「今後どう決まり続けるのか」という仕組みが中心になっています。2026年度の議論はまだ始まったばかりですが、「上がることが前提」の時代では、対応が後手に回ると、採用競争力の大幅な低下を招きかねません。
最低賃金は、「法令対応」から「賃金設計の問題」へ完全にステージが変わっており、早めの情報収集と、部分対応ではなく全体設計が重要です。
アウトソーシングほっとニュースでは、今後も目安制度見直しの方向性、夏以降の具体的な目安額の動きが見えてきた段階で、実務目線での解説・対応策を随時お届けして参ります。また、最低賃金対応や賃金制度全体の見直しについて、「早めに相談したい」「影響を試算したい」といった場合は、いつでも弊所にご相談ください。
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。