【アウトソーシングほっとニュース】定期健診の問診に「女性特有の健康課題」が追加へ!企業の備えと実務のポイント

月経困難症・PMS・更年期障害などへの対応手順と、事業者に求められる環境整備のポイントを解説します。
厚生労働省は令和6年11月、定期健康診断(事業者健診)の問診票に女性特有の健康課題に関する質問を加えることが適当との方向性を示しました。これを受けて令和7年1月には労働政策審議会が同じ方向性を正式に建議し、今後の制度化に向けた道筋が整いました。
本マニュアルは、こうした国の動きを踏まえ、「実際に職場でどう対応するか」を事業者向けに整理したものです。健診問診はあくまで労働者本人の気づきを促すことが目的であり、問診の結果が事業者に直接渡ることはありません。しかし、問診をきっかけに労働者が専門医を受診し、その後職場へ相談・申出をしてくるケースは今後増えることが予想されます。そのときに慌てないよう、事前の準備が求められています。
マニュアルが取り上げる女性特有の健康課題は以下の4つです。いずれも女性ホルモンの変動が主な原因であり、「個人の気合・根性で乗り越えるもの」ではないという理解が職場全体に必要です。
月経期間中に日常生活を困難にするほどの強い痛み・倦怠感。子宮内膜症などが隠れていることも。鎮痛剤が効かない・年々悪化する場合は受診目安。
経血量が異常に多い状態。貧血につながるケースも。「夜用ナプキンが昼間も必要」「1〜2時間でもたない」場合が受診目安。
月経前3〜10日に現れる精神的・身体的不調。特に重篤なPMDDは継続治療が必要で休職に至るケースも。
45〜55歳ごろに現れる200種類以上とも言われる多様な心身の不調。ホットフラッシュ・不眠・うつ症状など個人差が大きい。
マニュアルで特に強調されているのが、「問診の主体は健診機関であり、問診結果は事業者に直接提供されない」という点です。この取り組みは事業者に法的に義務付けられているものではなく、任意の健康支援策として位置付けられています。
- 健診問診の回答結果を健診機関に問い合わせることは原則できない(個人情報保護)
- 集計データの入手には、労働者への事前説明・同意取得が必要(受診者10人未満の場合は不可)
- 労働者からの相談・申出があって初めて、事業者としての対応義務が生じる
実際に労働者から相談を受けたときに円滑に対応できるよう、マニュアルは以下の準備を推奨しています。
女性の健康支援に積極的に取り組む旨を経営トップが「基本方針」として全従業員に周知します。これにより相談のハードルが下がり、隠れた健康課題の早期発見・対応につながります。
相談があった場合の対応手順、個人情報の取扱い方針、支援制度の設計について、衛生委員会等で労使が十分に話し合い、あらかじめルールを決めておくことが求められています。衛生委員会がない事業場でも、労働者の意見をよく聞き、十分な理解と協力を得たうえで取り組みを進めることが必要です。
管理職研修では、女性特有の健康課題に関する医学的基礎知識・傾聴スキル・配慮プランの策定方法・個人情報保護を学びます。全従業員向けにはeラーニング等でヘルスリテラシーを向上させ、無理解・偏見に基づく発言を防ぐことが目的です。
人事部門・産業保健スタッフ・外部EAPなど複数の相談窓口を設け、本人が選択できる環境を用意します。また、以下のような休暇・勤務制度の整備も推奨されています。
- 生理休暇(労基法68条)――日数制限の設定は不可。半日・時間単位での取得も可。「ウェルネス休暇」など名称変更も有効
- 年次有給休暇(年休)の時間単位付与――労使協定の締結により1時間単位で付与することが可能(年5日の範囲内)
- 傷病休暇・病気休暇――法定外で事業者が独自に設ける休暇制度
- 時差出勤・短時間勤務・在宅勤務・フレックスタイム制など柔軟な働き方の導入
マニュアルには症状別の配慮例が掲載されています。代表的なものを以下にまとめました。
今回のマニュアルは、法的義務ではなく「望ましい対応」として示されたものですが、今後の法改正や行政指導の方向性を示す重要なシグナルです。また、女性労働者が多い職場では、適切な対応が人材定着・生産性向上・採用力強化に直結します。「まず何から始めればよいか分からない」という事業者様には、具体的な制度設計や就業規則の改定などのサポートを行っております。お気軽にご相談ください。
参照元:厚生労働省「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル~事業者向け~」
この記事
を書いたのは・・・
社会保険労務士法人エスネットワークス
社会保険労務士K・E
労働保険事務組合での実務経験を活かし、女性ならではの視点で、相談しやすく寄り添ったサポートを心がけています。