【アウトソーシングほっとニュース】働き方の未来図:重要キーワード「ジョブ型雇用」「社員エンゲージメント」「健康経営®」を読み解く

先週に引き続き、経団連(日本経済団体連合会)が実施した「2025年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」から、日本企業のリアルな人事の動きを深掘りします。
さて、私たちの「働き方」は、今、大きな変革の時代を迎えています。人材獲得競争の激化と働く人の価値観の多様化が進む中で、従来の人事戦略は限界に達しつつあります。これからの不確実な時代を勝ち抜くためには、組織のあり方を根本から見直すことが必要不可欠です。
この記事では、「人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」のデータを基に、強靭で高業績な組織を構築するための3つの柱—「ジョブ型雇用」「社員エンゲージメント」「健康経営®」—を、経営課題として読み解いていきます。
1. ジョブ型雇用とは?―「仕事」を軸にした新しい働き方
「ジョブ型雇用」とは、仕事内容(ジョブ)を明確に定義し、その仕事に必要な知識やスキルを持つ人材を配置する雇用モデルです。従来の総合職として入社し様々な部署を経験する「メンバーシップ型雇用」とは対照的な考え方と言えます。
調査によると、企業がジョブ型雇用を導入する背景には、現代のビジネス環境が求める明確な戦略的意図があります。
• 仕事・役割・貢献を適正に処遇へ反映するため(70.8%)
• 優秀な人材を確保・定着させるため(62.9%)
• 専門性を持つ社員の重要性が高まったため(38.2%)
この調査結果は、企業がもはや年功序列ではなく、実際の貢献度に基づいた公正な報酬体系こそが、現代の人材獲得競争を勝ち抜くための鍵であると認識していることを示唆しています。
もちろん、すべての企業がこの雇用モデルに適しているわけではありません。導入を推進する理由と、見送る理由を比較することで、その特性がより明確になります。
| 導入の主な理由 | 導入しない主な理由 |
| 1.仕事・役割・貢献を適正に処遇へ反映するため (70.8%) | 1.自社の職務・業態になじまない (50.4%) |
| 2.優秀な人材を確保・定着させるため (62.9%) | 2.職務を明確化しにくい (40.3%) |
| 3.専門性を持つ社員の重要度が高まったため (38.2%) | 3.導入する必要性を感じてない (28.6%) |
このように役割が明確化されることで、社員は自らの貢献を実感しやすくなりますが、その貢献意欲、すなわち「社員エンゲージメント」が本当に高まるかどうかは、企業と社員のより深い関係性にかかっています。
2. 社員エンゲージメントとは?―企業と社員の「絆」の強さ
「社員エンゲージメント」とは、社員が自らの仕事に情熱を持ち、所属する企業に貢献したいと心から思う気持ちの強さ、つまり企業と社員の「絆」の強さを測る指標です。これは組織の競争優位性を左右する重要な経営指標と見なされています。
今、多くの企業がこのエンゲージメントを非常に重視しており、調査データからもその傾向は明らかです。77.7% の企業が定期的にエンゲージメント調査を実施し、83.6% がエンゲージメント向上のための具体的な施策を実行しています。
一方で、調査からは深刻な経営課題も浮かび上がっています。エンゲージメントが特に低いとされる層は以下の通りです。
• 非管理職(中堅層):63.8%
• 非管理職(ミドル層):45.5%
• 非管理職(シニア層):41.1%
現場のパフォーマンスを支えるべき経験豊富な中核人材の意欲低下は、生産性や組織文化の悪化に直結する深刻な経営リスクです。これらの結果は、日々の業務を担う経験豊富な非管理職層のエンゲージメント低下が一貫した傾向であることを示しており、組織能力の維持・向上に向けた喫緊の対策が求められます。
エンゲージメントの高い社員がその能力を最大限に発揮するためには、個人の意欲だけでなく、企業が戦略的に提供する心身の健康という基盤が不可欠です。これが、次の経営課題である「健康経営®」の重要性につながります。
3. 健康経営®とは?―社員の健康を「投資」と考える経営
「健康経営®」とは、社員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践することを指します。社員の健康を単なるコストではなく、企業の生産性を高め、持続的な成長を実現するための「投資」と考えるアプローチです。
この考え方は広く浸透しており、調査対象企業の83.4%が既に健康経営®に関する取組みを実践しています。そして、その取組みからは明確な効果が生まれています。
・従業員の健康増進 :88.7%
・健康リテラシーの向上 :85.8%
・企業イメージの向上:71.9%
これらの効果は、健康経営®が単なる福利厚生ではなく、組織能力と企業価値を高める戦略的投資であることを明確に示しています。しかし、推進する上での最大の障壁は、「従業員の関心・取組み意欲の向上」(82.9%) でした。どんなに優れた制度を用意しても、社員自身が積極的に参加しなければ効果は限定的になってしまうという課題が浮き彫りになっています。
4. まとめ:これからの働き方を支える3つの柱
ここまで見てきた「ジョブ型雇用」「社員エンゲージメント」「健康経営®」は、個別に存在するトレンドではなく、これからの働き方を支える、相互に強化し合う3つの柱です。
これら3つの要素は、単なる一直線の関係ではなく、互いを強化し合う好循環を形成します。明確な役割(ジョブ型雇用)がエンゲージメントを高め、高いエンゲージメントが健康への意識を向上させ(健康経営®)、そして心身の健康が質の高い職務遂行を可能にするのです。
このサイクルを回し続けることこそが、持続的な企業成長の原動力となります。変化の激しい時代において、企業が成長し続け、働く個人が輝き続けるための未来図は、この3つの柱をいかに戦略的に連動させるかにかかっているのです。
2週にわたって「2025年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」を取り上げ、解説してきました。春闘では、賃金の話だけでなく、「働きやすさ」や「働きがい」についても話し合われます。つまり、春闘のニュースは、社会の仕組みを理解するだけでなく、あなたのキャリアを考えるための「羅針盤」にもなるのです。ぜひ春闘に関する最新ニュースを注目してご覧になってください。
この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員