• トップ
  • お知らせ
  • 【アウトソーシングほっとニュース】 12月は「職場のハラスメント撲滅月間」です/全3回

【アウトソーシングほっとニュース】 12月は「職場のハラスメント撲滅月間」です/全3回




厚生労働省では、12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と位置づけ、企業・団体に対し、ハラスメント防止に向けた意識啓発・取組強化を呼びかけています。本シリーズでは、ハラスメント対策を3回に分けて整理し、企業が実務上押さえておくべきポイントを解説します。第1回のテーマは、相談・発生件数が最も多い 「パワーハラスメント(パワハラ)」 です。

はじめに、パワハラの定義について

パワハラ防止指針(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して 雇用管理上講ずべき措置等についての指針)において以下のように定められています。

職場のパワハラとは

職場のパワハラとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
 なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワハラには該当しません。

「職場」とは

事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれます。
 勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中などであっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当しますが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意かといったことを考慮して個別に行う必要があります。
「職場」の例:出張先、業務で使用する車中、取引先との打ち合わせの場所(接待の席も含む)等

「労働者」とは

正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する全ての労働者をいいます。
 また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先事業主)も、自ら雇用する労働者と同様に、措置を講ずる必要がある。

①「優越的な関係を背景とした」言動とは

業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者とされる者(以下「行為者」という。)に対して抵抗や拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指します。
 ● 例
 ・職務上の地位が上位の者による言動
同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの

②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは

社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指します。
 ● 例
 ・業務上明らかに必要性のない言動
 ・業務の目的を大きく逸脱した言動
 ・業務を遂行するための手段として不適当な言動
 ・当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
 この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況(※)、行為者の関係性等)を総合的に考慮することが適当です。 その際には、個別の事案における労働者の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係性が重要な要素となることについても留意が必要です。なお、労働者に問題行動があった場合であっても、人格を否定するような言動など業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動がなされれば、当然、職場におけるパワハラに当たり得ます。
 ※ 「属性」・・・・・(例)経験年数や年齢、障害がある、外国人である 等
 「心身の状況」・・(例)精神的又は身体的な状況や疾患の有無 等

③「就業環境が害される」とは

当該言動により、労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
 この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」を基準とすることが適当です。
 なお、言動の頻度や継続性は考慮されますが、強い身体的又は精神的苦痛を与える態様の言動の場合には、1回でも就業環境を害する場合があり得ます。

また、代表的行為類型として次の6つが示されています。

出典元:厚生労働省

これらの例は限定列挙ではありません。また、個別の事案の状況等によって判断が異なることもありえますので、職場におけるパワハラに該当するか微妙なものも含め広く相談に対応するなど適切な対応が必要です。なお、上記の例については、優越的な関係を背景として行われたものであることが前提となります。

パワハラの現状

厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」(委託事業)によると、企業におけるパワハラの相談・認知状況は依然として高い水準にあります。調査結果では、過去3年間でパワハラに関する相談や報告があったと回答した企業は約6割(64.2%)に上っており、規模を問わず多くの現場で課題として顕在化していることがわかります。さらに従業員側の回答では、実際にパワハラを経験したと回答した人は約3割(29.0%)であり、依然として一定の割合で被害が発生している状況が示されています。多くの企業が防止措置義務に対応した一方で、実際の職場行動やコミュニケーション文化には改善余地が残されていることを示すデータと言えます。また、パワハラを受けた際の行動にも特徴があります。被害者の回答では「何もしなかった」と答えた割合が43.1%に達し、依然として声を上げにくい環境が存在していることが浮き彫りになっています。制度が整っていても、利用しやすい環境がなければ、十分に機能しません。「仕組み」だけでなく「安心して声を出せる職場環境づくり」が大切であることが改めて確認できます。

実務上問題となりやすい場面

パワハラは「指導の度合いや伝え方」によって評価が変わりやすく、特に以下のケースでトラブル化しやすい傾向があります。

  • 業務指導の名のもとに叱責が長時間継続する
  • 特定の従業員に過剰な成果要求を行う
  • 会議・コミュニケーションから故意に排除する
  • 事実や業務と関連性のない人格否定的発言が反復される

職場のパワハラを放置すれば、従業員の心の健康を害するだけでなく、職場の雰囲気・生産性の悪化や人材の流出、さらに「不法行為責任」や「安全配慮義務違反」などの法的責任を問われて訴訟による金銭的負担の発生、そして企業イメージの低下と、企業へも大きな悪影響を及ぼすことも考えられます。

企業が求められる対応

事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

  • パワハラの内容、パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業員に周知・啓発する。
  • パワハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則などの文書に規定し、従業員に周知・啓発する。

相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

  • 相談窓口をあらかじめ定め、従業員に周知する。
  • 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにする。パワハラが生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合やパワハラに該当するかどうか分からない場合であっても、広く相談に対応する。

職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

  • 事実関係を迅速かつ正確に確認する。
  • 事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行う。
  • 事実関係の確認ができた場合には、ハラスメント行為を行った者に対する措置を適正に行う。
  • 再発防止に向けた措置を講ずる。

併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)

  • 相談者やハラスメント行為をした者などのプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、従業員に周知する。
  • 事業主に相談したこと、事実関係の確認に協力したこと、都道府県労働局の援助制度を利用したことなどを理由として、解雇その他不利益な取扱いをされないことを定め、従業員に周知・啓発する。

同調査結果では、防止措置を導入した企業において、コミュニケーションの改善(39.1%)従業員の信頼向上(34.7%) といった効果も報告されています。

さいごに

パワハラは、企業の法令遵守リスクだけでなく、離職・メンタル不調・生産性低下にも直結する重要課題です。12月は、職場のハラスメント防止体制を見直す良い機会です。相談窓口が適切に機能しているか、従業員の皆さまに周知できているかなど、現在の取り組みをもう一度ご確認ください。

▼ 次回予告 第2回では、 「セクシャルハラスメント(セクハラ)」 をテーマに、解説します。


この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス                  社会保険労務士 T.Y                          レストランでの接客から人事労務の世界へ転身しました。難しくなりがちな労務の話も身近に感じてもらえるようにお届けしていきます。

サービスに関するお悩み、
ご相談やお見積り依頼等のお問い合わせはこちらから

※企業様からのお問い合わせを受け付けております。

電話アイコン

お電話でのお問い合わせ

03-6826-6333

平日9:00 - 17:30

ページトップへ戻る