【アウトソーシングほっとニュース】11月は、労働保険未手続事業一掃強化期間です

厚生労働省では、毎年11月を「労働保険未手続事業一掃強化期間」と定め、「労働保険 はたらく安心。つなぐ安心。」をスローガンに、労働保険の未手続事業の解消を図るため各関係機関等にも依頼して啓発活動を展開しています。すでに加入手続きを済ませている事業主の皆さまにとっても、この期間は制度や実務を見直す良い機会となります。チェックリストについてもご確認ください。
労働保険とは
労働保険は「労災保険」と「雇用保険」を合わせた政府所管の保険制度です。また労働保険は法律により、農林水産の事業の一部を除き、労働者を一人でも雇用する全ての事業に適用され、事業主は必ず労働保険の加入手続きを行い、労働保険料を納付しなければなりません。
労災保険(労働者災害補償保険)
労働者が仕事(業務)や通勤が原因で負傷した場合、また、病気になった場合や不幸にもお亡くなりになった場合に、被災労働者やご遺族を保護するための給付等を行っています。労災保険は、労働者の雇用形態にかかわらず、一人でも労働者を雇用した場合は加入手続きが必要です。
雇用保険
労働者が失業した場合や働き続けることが困難になった場合、また、自ら教育訓練を受けた場合に、生活・雇用の安定と就職の促進を図るために給付等を行っています。雇用保険は、「一週間の所定労働時間が20時間以上(※)」、「31日以上引き続き雇用されることが見込まれる」のいずれにも該当する労働者は被保険者となり、加入手続きが必要です。
※2028年10月1日より、一週間の所定労働時間が20時間以上から10時間以上へ適用拡大されます。
労働保険手続き・適用チェックリスト
1.適用・加入状況の確認
- 新規事業所(支店・営業所など)を設立した際、労働保険の新規適用手続きを行いましたか?
- 事業の種類や所在地を変更した際、「名称・所在地等変更届」の手続きを行いましたか?
2.雇用・退職に伴う届出の確認
- 新規採用者の「雇用保険資格取得届」の手続きを行いましたか?
- 退職者・離職者の「雇用保険資格喪失届」や「離職票の交付」の手続きを期限内(被保険者でなくなった日の翌日から10日以内)に行っていますか?
3.労災保険の実務体制の確認
- 業務中・通勤中の災害発生時、労災申請手続きの流れを社内で共有していますか?
- 下請け・委託先労働者の作業を伴う場合、一人親方特別加入制度の加入状況を確認していますか?
- 労災保険料率の適用業種は適正ですか?(労災保険料率は業種ごとに定められています。たとえば、ある会社が設立当初「製造業」を営んでいましたが、現在では「小売業」や「サービス業」を主に営んでいます。にもかかわらず、昔の「製造業」のままの業種で労災保険料を計算しているようなケースです。こうした場合、本来より高い(又は低い)労災保険料率を使っていることになります。)
新しい働き方への対応も忘れずに
近年、アプリやマッチングサービスを通じて、単発・短期の就労(いわゆる「スポットワーク」)を行うケースが増えています。このような働き方であっても、労働者として使用されている場合は労災保険の適用対象となります。またスポット的な勤務を繰り返すうちに、同一事業主のもとで継続的に働くようになった場合には雇用保険の適用要件(週20時間以上・31日以上の雇用見込み)を満たすことがあります。その場合は、雇用保険の資格取得届を提出し、被保険者として加入する必要があります。
成立手続きを怠っていた場合は
- 遡って保険料を徴収するほか、追徴金も徴収します。
労働保険の手続きを行わない事業主に対しては、政府が職権により成立手続きを行い、労働保険の金額を決定します。その際、労働保険料は手続きを行っていなかった過去の期間についても遡って徴収することになり、併せて、追徴金も徴収します。また、労働保険料や追徴金が納付されない場合には、滞納者の財産についても差し押え等の処分も行います。
- 労働災害が生じた場合、労災保険の給付額の全部又は一部を徴収します。
政府は、事業主が故意または重大な過失により労災保険の成立手続きを行わない、いわゆる未手続の期間中に生じた労働災害について労災保険給付を行った場合は、労働基準法の規定による災害補償の価格の限度で、保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収します。
- 事業主の方のための助成金が受けられません。
雇用調整助成金(休業等によって雇用維持を図る事業主に助成)や、特定求職者雇用開発助成金(高年齢者や障害者など、就職が特に困難な者を雇い入れる事業主に書生)などの、事業主のための雇用関係助成金については、労働保険料の未納がある場合、受給できない可能性があります。
さいごに
労働保険は、働く人を守るだけでなく、事業主にとっても経営のリスクを減らすための制度です。
加入手続きをまだ行っていない場合は、早めのご対応をお願いいたします。すでに加入済みの皆さまも、この機会に実務等の見直しを行い、「はたらく安心・つなぐ安心」 の輪を広げましょう。
この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス 社会保険労務士 T.Y レストランでの接客から人事労務の世界へ転身しました。難しくなりがちな労務の話も身近に感じてもらえるようにお届けしていきます。