【アウトソーシングほっとニュース】身近な労働法の解説「事務所衛生基準(清潔・休養等)」
企業には、労働者の安全や健康に配慮し、働きやすい環境を整備する責任があります。
労働者の安全衛生について定めた労働安全衛生法には、いわゆるオフィスの衛生に関する規定をまとめた「事務所衛生基準規則」という法令が紐づいています。事務所衛生基準規則では、事務所その他の作業場における労働者の清潔保持等のために事業者が講ずべき措置等について定めています。
一般的に事務所は、工場などの作業場と比べた場合、有害物や危険物の取り扱い、危険の生じやすい場所はほとんどないといえますが、企業には、労働災害を防止するだけでなく、快適な職場環境の確保も求められています。したがって、事務所の衛生は一定の水準で確保しなければなりません。
事務所衛生基準規則では、事務所その他の作業場における労働者の清潔保持等のために事業者が講ずべき措置等として、「事務室の環境管理」「清潔」「休養」等に関して定めています。
事務所の環境管理「騒音及び振動の防止」
11条では、「室内の労働者に有害な影響を及ぼすおそれのある騒音又は振動について、隔壁を設ける等その伝ぱを防止するため必要な措置を講ずるようにしなければならない」としています。
12条では、「タイプライターその他の事務用機器で騒音を発するものを、5台以上集中して同時に使用するときは、騒音の伝ぱを防止するため、遮音及び吸音の機能をもつ天井及び壁で区画された専用の作業室を設けなければならない」としています。
清潔「給水」
13条では、「事業者は、労働者の飲用に供する水その他の飲料を十分に供給するようにしなければならない」としています。水道水以外の給水設備においては、水質基準が定められています。
清潔「清掃等の実施」
15条では、事業者は「日常行う清掃のほか、大掃除を、6ヶ月以内ごとに一回、定期に、統一的に行うこと」としています。
また、ねずみ、昆虫等による被害の状況について、6ヶ月以内ごとに一回、定期に、統一的に調査を実施し、調査結果に基づくこれらの発生防止措置を講ずることを求めています。
休養「休憩の設備」
19条では、「事業者は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければならない」とし、通達(令3・12・1 基発1201第1号)では、「事業場ごとに、休憩の設備の広さや、各事業場のニーズに基づく休憩設備内に備えるべき設備については、衛生委員会等で調査審議、検討等を行い、その結果に基づいて設置することが望ましいこと」としています。
休養「休養室等」
21条では休養室等について、一定規模(常時50人以上または常時女性30人以上の労働者を使用)の事業者は、「労働者が臥床(が床)することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない」と定めています。なお、通達(令3・12・1 基発1201第1号)では、「休養室又は休養所は、事業場において病弱者、生理日の女性等に使用させることを趣旨として設けられるものであり、長時間の休養等が必要な者については、速やかに医療機関に搬送する又は帰宅させることが基本であることから、専用設備として設けなくとも、随時利用が可能となる機能を確保することで足りるものであること」としており、加えて、臥床することを想定していることから、プライバシー確保の配慮が重要としています。
この記事を書いたのは・・・
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員