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【アウトソーシングほっとニュース】令和6年度「過労死等の労災補償状況」




厚生労働省では、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の状況について、労災請求件数や、業務上疾病と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数などを、平成13年度分から年1回、取りまとめています。
これに基づき、令和6年度の「過労死等の労災補償状況」を6月25日に公表しました。
過労死等」とは、過労死等防止対策推進法第2条により、以下のとおり定義されています。
●業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
●業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
●死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

過労死等の労災認定基準

 厚生労働省では、労働者に発症した脳・心臓疾患精神障害を労災として認定する際の基準を定めています。
 脳・心臓疾患の場合は、平成13年12月に定められた「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」により、労災保険を適用するかどうかが決定されます。なお、脳・心臓疾患の労災認定基準は、令和3年9月、約20年振りに改正されました。
 一方、精神障害の場合は、平成11年9月に「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」が出され、その後、平成23年12月に「心理的負荷による精神障害の認定基準」が定められました。これにより、業務によるストレスの評価基準を具体化し、審査方法を改善することで認定までの期間が短縮されています。なお、精神障害の労災認定基準は、令和5年9月に最新の改正が行われています。

脳・心臓疾患の労災補償状況

 脳・心臓疾患に関する労災の「請求件数」は1,030件で、前年度比7件の増加となりました。労災と認定された「支給決定件数」は、前年度比25件増えて241件でした。
 労災が認められた241件を年齢別に見ると、50代が最も多く129件、次いで、40代が60件、60歳以上が44件の順となっています。業種別では、運輸業・郵便業が88件、宿泊業・飲食サービス業が28件、製造業が24件の順に多くなっています。
 また、時間外労働時間別に見ると、「評価期間2~6か月における1か月平均」では、いわゆる過労死ラインを下回る「60時間以上~80時間未満」でも35件が認定されています。80時間未満で支給決定された事案には、以下の労働時間以外の負荷要因が認められ、総合的に判断されたものが含まれていると考えられます。
・勤務時間の不規則性(拘束時間の長い勤務、休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務、不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務)
・事業場外における移動を伴う業務(出張の多い業務、その他事業場外における移動を伴う業務)
・心理的負荷を伴う業務
・身体的負荷を伴う業務
・作業環境(温度環境、騒音)

精神障害の労災補償状況

 精神障害に関する労災の「請求件数」は3,780件で、前年度比205件の増加となりました。労災と認定された「支給決定件数」は、前年度比172件増えて1,055件でした。精神障害での労災認定は、6年連続で増加しており、統計が始まった1983年度以降で最も多くなっています。
 労災が認められた1,055件を年齢別に見ると、最も多かったのが40代の283件で、次いで30代が245件、20代が243件となっています。業種別では、医療・福祉が270件、製造業が161件、卸売業・小売業が120件、運輸業・郵便業が110件の順で多くなっています。
 また、出来事別※では、「上司等からのパワーハラスメント」が224件と最も多く、「仕事内容や仕事量の大きな変化」が119件、「顧客や取引先、施設利用者等からの著しい迷惑行為」が108件の順となっており、いわゆるカスタマーハラスメントが、セクシュアルハラスメントの105件を上回っています。
※「出来事」とは精神障害の発病に関与したと考えられる事象の心理的負荷の強度を評価するために、認定基準において、一定の事象を類型化したものです。

過労死等の防止に向けて

 さて、過労死等を防止するためには、以下のような取り組みが不可欠です。事業主には「労働者の方々が相談しやすい環境づくり」が求められるとともに、労働者自身も「心身の不調に気づいたら、早めに周囲の人や医師などの専門家に相談」することが大切です。また、上司や同僚も、労働者の不調の兆候に気づき、産業保健スタッフ等につなぐことができるようにしていくことが重要です。
●長時間労働の削減
●過重労働におる健康障害の防止
●働き方の見直し
●職場におけるメンタルヘルス対策の推進
●職場のハラスメントの予防・解決
●相談体制の整備

 また、職場における健康管理やメンタルヘルス対策、ハラスメント対策を推進するにあたっては、以下の機関やポータルサイトをぜひご活用ください。
産業保健総合支援センター(さんぽセンター)
 全国で、事業者、産業保健スタッフ(産業医、衛生管理者など)に向けた、健康管理やメンタルヘルス対策のための個別 訪問支援や専門的な相談などの対応を無料で行っています。
こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
 こころの不調や不安に悩む働く方や職場のメンタルヘルス対策に取り組む事業者の方などの支援や、役立つ情報の提供を行っています。
あかるい職場応援団(ハラスメント対策の総合情報サイト)
 ハラスメントに悩んでいる方や、会社の人事労務担当者向けに、動画・裁判例・他企業の取組例など様々なコンテンツを提供しています。


この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K

事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員


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