【アウトソーシングほっとニュース】東京海上日動、育児休業サポート手当に対する補償提供を開始
東京海上日動火災保険は、企業の従業員が育児休業を取得した際、職場の同僚に手当を支給する保険の販売を開始しました。育休取得者の代替要員を補充することが難しく、業務量が増えるなどのしわ寄せが他の従業員に生じる可能性があるため、金銭的に報いることで職場環境の整備につなげてもらう狙いです。
詳細は、東京海上日動火災保険さんのプレスリリースをご覧になってください。
育児休業サポート手当とは
企業によって、育休職場応援手当、業務フォロー手当、業務カバー手当、育休支援祝い金などさまざまな名称で呼ばれていますが、これらの手当は、育児休業を取得する社員の業務を引き継ぎ、代替・フォローする同僚に対して企業が支給するものです。
この制度は、育休取得者だけでなく、職場全体の協力体制を評価・支援するという点で注目されています。制度の導入目的は、主に次の3つです。
①育児と仕事の両立支援
・少子化対策や働き方改革の一環として、従業員が安心して育児休業を取得・復帰できる環境を整える
・特に、育児中の社員がキャリアを中断せずに働き続けられるようにするための支援をおこなう
②職場の協力体制の強化
・育休取得者の業務をカバーする同僚への負担軽減と感謝の意を示すことで、チーム全体の協力体制を強化する
・育休取得者と同僚との分断を防ぎ、職場の一体感を保つ
③育休取得率の向上
・男性の育休取得を促進するため、周囲の理解と支援体制を整える
・育休取得に対する「申し訳なさ」を軽減する
また、企業にとってのメリットは、以下の4つに整理できます。
①優秀な人材の確保と定着
・育児支援制度の充実は、働きやすい職場としての魅力を高め、採用競争力の向上につながる
・特に若年層では「共働き」「育休取得希望」が多数派となっており、制度の有無が企業選びの基準とされる
②離職率の低下と人材育成の効率化
・育児と仕事の両立が可能な環境を整えることで、出産・育児を理由とした離職を防止する
・長期的な人材育成が可能になり、教育コストの削減にもつながる
③職場の生産性向上
・育休取得者の業務を見直すことで、業務の効率化や無駄の削減が進む
・手当支給により、業務をカバーする社員のモチベーションも維持されやすくなる
④企業イメージ・ブランドの向上
・「子育て支援に積極的な企業」として、社会的評価や信頼性が高まる
・「くるみん認定」や「プラチナくるみん認定」などの取得にもつながり、広報・PRにも活用可能
企業の導入事例
育休取得者だけでなく職場の仲間にも報いる制度を導入することで、育児と仕事の両立を「職場全体で支える文化」として根付かせるため、先進的な取り組みをおこなっている企業の事例をご紹介します。
事例1:三井住友海上火災保険
制度名:育休職場応援手当(祝い金)
対 象:育休取得者を除く、所属職場メンバー全員(パート・有期雇用社員も対象)
支給額:育休取得者が職場を離れる際、その同僚全員に最大10万円の一時金を支給
支給額は「職場の規模」と「育休取得予定期間」に応じて決定
目 的:出産・育児を職場全体で快く受け入れる風土の醸成、育休取得者が気兼ねなく休業できる環境づくり
事例2:エスエス製薬
制度名:育休取得者の同僚への手当
対 象:育休取得者が所属するチームのメンバー
支給額:チーム規模や育休取得期間に応じて、最大10万円
目 的:・育休取得者が職場に対して感じる「申し訳なさ」や「後ろめたさ」を軽減
・チームメンバーが育休取得を前向きにサポートできる環境を整備
・育児と仕事の両立を支援し、安心して働き続けられる職場づくりを推進
事例3:沖電気工業
制度名:育休サポート奨励金
対 象:育休取得者の業務を支援した社員
支給額:最大10万円(育休取得者が1ヶ月以上の育休を取得した場合)
目 的:業務が円滑に進むよう支援した社員に報いる制度
国の助成金制度
育休取得者の業務を支える体制づくりを促進し、育休取得率向上を支援するため、育休取得者の業務を代替する同僚に支給する手当の費用を国が補助する制度もあります。
2024年1月に始まったこれまでの制度では、資本金に応じて小売業では50人以下、サービス、卸売業では100人以下の中小企業が対象でしたが、2025年度からは、全ての業種で従業員300人以下の企業に対象が広がっています。この制度は、企業が育休取得者を支える職場づくりに取り組むことを後押しするもので、特に中小企業にとっては大きな支援となります。
制度名:両立支援等助成金「育休中等業務代替支援コース」
対象企業:常時雇用労働者数300人以下の事業主
対象となる取り組み:
①育休取得者の業務を代替する同僚への手当支給
②育児短時間勤務制度利用者の業務を代替する同僚への手当支給
③育休取得者の代替要員の新規雇用(派遣受入れ含む)
支給内容:
①手当支給等(育児休業)
・育休取得者の業務を代替した社員に対して企業が手当を支給した場合、その費用を助成
・助成額は最大月10万円×最大12か月=最大120万円
②手当支給等(短時間勤務)
・短時間勤務者の業務を代替した社員への手当支給に対する助成
③新規雇用
・育休取得者の代替要員を新たに雇用した場合、その人件費の一部を助成。
この記事を書いたのは・・・
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員