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【アウトソーシングほっとニュース】高年齢者雇用安定法とは?65歳までの義務と70歳までの努力義務をわかりやすく解説





厚生労働省は2025年12月19日、令和7年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表しました。
高年齢者雇用状況等報告は、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」に基づき、企業が高年齢者雇用確保措置等をどの程度実施しているかを把握するための制度です。つまり、高年齢者雇用状況等報告の集計結果は、高年齢者雇用安定法が実際にどの程度機能しているかを確認するための公式な実施状況報告であり、行政指導や制度改正の判断材料となるものです。
さて、高年齢者雇用安定法の目的は生涯現役社会の実現にあります。そのために、企業には大きく2つの役割が求められています。
① 65歳までの安定した雇用の確保(法的義務)
② 70歳までの就業機会の確保(努力義務)
本稿では、この2つの柱に沿って、企業に課せられた具体的な措置を最新データと共に解説し、単なる法遵守に留まらない、戦略的な人事施策へのヒントを提供します。


1. 企業の絶対的な義務:「65歳までの高年齢者雇用確保措置」

 まず、全ての企業が必ず対応しなければならないのが「65歳までの雇用確保」です。これは法律で定められた絶対的な義務です。


1-1. 企業に課せられた3つの選択肢
 企業はこの義務を果たすため、以下の3つの「高年齢者雇用確保措置」から、いずれか1つを選択し講じる必要があります。令和7年時点での企業の選択状況は以下の通りです。

措置
内容
選択状況
① 定年制の廃止
そもそも定年という制度自体をなくし、年齢に関わらず働けるようにする措置です。
3.9%
② 定年の引上げ
現在の定年年齢(例:60歳)を65歳以上に引き上げる措置です。
31.0%
③ 継続雇用制度の導入
定年後も、本人が希望すれば再雇用などの形で引き続き雇用を継続する制度を設ける措置です。
65.1%

 筆者の経験上、「継続雇用制度」はその柔軟性から最も多くの企業に選ばれていますが、一方で再雇用後の役割や処遇が曖昧になりやすいという課題も抱えています。この選択肢を採る企業は、トラブルを未然に防ぐためにも、定年後の労働条件を明記した雇用契約書の整備が不可欠です。

1-2. 最も一般的な選択肢:「継続雇用制度」とは?
 全企業の65.1%が導入している「継続雇用制度」について、人事担当者が絶対に知っておくべき重要な変更点があります。
 この制度では、かつて労使協定で定めた基準(例:「勤務評価が一定以上の者」など)に基づき対象者を選別することが経過措置として認められていました。しかし、この経過措置は令和7年3月31日をもって完全に終了しました。これにより、企業はもはや過去の勤務態度や能力評価を基準に対象者を絞り込むことができなくなりました。60歳以降の人員計画を立てる上で、希望者全員を再雇用することを前提とした、根本的な発想の転換が求められます。

1-3. 企業の取り組み状況と今後の傾向
 令和7年時点で、高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%に達し、法対応はほぼ完了しています。しかし、その内訳には注目すべき変化が見られます。
• 「継続雇用制度の導入」:2.3ポイント減少
• 「定年の引上げ」:2.3ポイント増加
 多くの企業の定年が依然として60歳に設定されている中で、このデータは非常に示唆に富んでいます。「継続雇用」という暫定的な対応から、定年自体を65歳に引き上げるという、より構造的な改革へと舵を切る企業が増えているのです。これは、60歳定年制が過去のものとなり、65歳定年が新たな標準となる大きな潮流を示していると言えるでしょう。
 65歳までの雇用確保が定着した今、社会の関心はさらにその先、70歳までの働き方へと向かっています。次に、そのための「努力義務」について見ていきましょう。

2. 次のステップへの挑戦:「70歳までの高年齢者就業確保措置」

 65歳までの雇用確保が「義務」であるのに対し、70歳までの就業機会の確保は、現時点では法律上の「努力義務」と位置づけられています。

2-1.「義務」と「努力義務」の決定的な違い
 努力義務とは、「そうするよう努めなければならない」という規定であり、違反しても直ちに罰則はありません。このため、65歳までの措置と比べて企業の裁量が大きいのが特徴です。
 この措置の対象となるのは、定年を65歳以上70歳未満に定めている、または65歳までの継続雇用制度を導入している事業主です。

2-2. 選択肢が広がる5つの措置
 70歳までの就業確保措置では、従来の雇用関係に縛られない、より多様な働き方を支援する選択肢が加わっている点が大きな特徴です。
• 【雇用による措置】
  ①定年制の廃止
  ②70歳までの定年引上げ
  ③70歳までの継続雇用制度の導入
• 【雇用以外の措置(創業支援等措置)】
  ④業務委託契約を締結する制度の導入
  ⑤社会貢献事業に従事できる制度の導入
 ここで重要なのは、「創業支援等措置」が単なるアドホックな対応ではなく、企業内に正式な「制度」として導入することが求められている点です。これにより、高年齢者は個人事業主として会社と対等なパートナーシップを結んだり、企業の支援のもとでNPO活動などに従事したりといった、柔軟なキャリアを選択できるようになります。
 ただし、専門家として一つ注意喚起しておきたい点があります。業務委託のような雇用以外の措置は、その柔軟性の半面、実態として「偽装請負」と見なされるリスクを伴います。導入を検討する際は、契約内容や指揮命令系統のあり方について、必ず事前に専門家へご相談ください。

2-3. 企業の対応状況:着実に進む70歳就業への道
 令和7年時点で、この就業確保措置を実施済みの企業は全体の34.8%で対前年比2.9ポイント増加しており、努力義務にもかかわらず、70歳まで働ける環境整備は着実に進んでいます
 措置の内訳で最も多いのは「継続雇用制度の導入」(28.3%)です。これは、多くの企業にとって、既存の65歳までの制度を70歳まで延長することが、最も着手しやすい「抵抗の少ない道」であることを示しています。新しい制度設計へ踏み出す前に、まずは既存の枠組みを活用するという、企業の慎重ながらも着実な対応姿勢がうかがえます。
 では、これらの法的な要請を受けて、日本企業全体の「定年」に対する考え方は、実際にどのように変化しているのでしょうか。最後に、現在の定年制の全体像を確認しましょう。

3. まとめ:データで見る日本企業の「定年制」の現在地

 これまで見てきた義務と努力義務を踏まえ、令和7年時点での日本企業全体の定年制の状況をデータで総括します。
• 最も多い定年年齢は依然として「60歳定年」である(62.2%)
• しかし、「65歳定年」の企業は増加傾向にあり、27.2%を占める
• 「定年制を廃止した」企業と「65歳以上を定年とする」企業を合わせると、全体の34.9%で対前年比2.3ポイント増加している
 これらのデータが示すのは明確なトレンドです。多くの企業は、いまだ就業規則上は「60歳定年」を残しつつ継続雇用で法に対応していますが、社会全体の趨勢は、定年年齢そのものを65歳以上へと引き上げる、より本質的な制度改革へと確実に移行しています。

最後に、この記事で解説した「高年齢者雇用安定法」の要点を3つのポイントに絞ってまとめておきます。
ポイント1:65歳までの雇用確保は全企業の法的「義務」であること
 ポイント2:70歳までの就業確保は「努力義務」だが、導入企業は着実に増加中であること 
ポイント3:社会全体として、より長く活躍できる環境づくりが加速していること
 少子高齢化が不可逆的に進む日本において、経験豊富なシニア人材の活用は、もはや単なる法遵守や社会貢献の課題ではありません。それは企業の持続的成長を左右する、極めて重要な経営戦略です。
 人事担当者の皆様には、この法律の動向を注視し、自社のシニア人材をいかに戦略的資産として活かしていくか、という視点で制度を積極的に見直していくことを強くお勧めします。それが、多様な人材が活躍できる強い組織を築き、未来の競争優位性を確保する鍵となるでしょう。



この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K

事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員







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