【アウトソーシングほっとニュース】身近な労働法解説「事務所衛生基準」
企業には、労働者の安全や健康に配慮し、働きやすい環境を整備する責任があります。
労働者の安全衛生について定めた労働安全衛生法には、いわゆるオフィスの衛生に関する規定をまとめた「事務所衛生基準規則」という法令が紐づいています。事務所衛生基準規則では、事務所その他の作業場における労働者の清潔保持等のために事業者が講ずべき措置等について定めています。
一般的に事務所は、工場などの作業場と比べた場合、有害物や危険物の取り扱い、危険の生じやすい場所はほとんどないと言えますが、企業には、労働災害を防止するだけでなく、快適な職場環境の確保も求められています。したがって、事務所の衛生は一定の水準で確保しなければなりません。これからの時季、事務所内においても熱中症防止のための温度に留意することが必要です。
事務所衛生基準規則では、「事務室の環境管理」に関して、第4条および第5条で事務室の温度について定めています。
事務所の温度
第4条1項では、「事業者は、室の気温が十度以下の場合は、暖房する等適当な温度調節の措置を講じなければならない」としています。
2項では、「事業者は、室を冷房する場合は、当該室の気温を外気温より著しく低くしてはならない」とし、但し書きで、電子計算機等を設置する室における例外を定めています。
第5条3項では、事業者の努力義務として、空気調和設備を設けている場合の室の気温と湿度について定めています。
条文解説
第4条1項では、室温が10℃以下の場合は暖房等により温度調節することを事業者の義務として定め、2項では、冷房する場合の室温について外気温より著しく低くしないことを定めています。
第4条1項に違反したことで、労働安全衛生法第23条(事業者の講ずべき措置等)違反に該当した場合には、罰則が設けられています(同法第119条「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」)。
特別に室温を低くする必要があるサーバルームなどについては、2項但し書きで、電子計算機等を設置する室は、その作業者に保温のための衣類等を着用させた場合は、この限りではないとしています。
第5条3項では、「気温」について、エアコン等の空気調和(空調)設備を設けている場合は、労働者を常時就業させる室の気温が18℃以上28℃以下になるように努めなければならない、と定めています。なお、空調設備を設けている場合以外であっても、冷暖房器具を使用することなどにより事務所における室の気温は18℃以上28℃以下になるようにすることが望ましいこと、としています(令4・3・1基発0301第1号)。「湿度」については、相対湿度が40%以上70%以下になるように努めなければならない、としています。
その他
厚労省では、温熱条件について、「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(平4・7・1労働省告示59号)を定め、「屋内作業場においては、作業の態様、季節等に応じて温度、湿度等の温熱条件を適切な状態に保つこと。また、屋外作業場については、夏季及び冬季における外気温等の影響を緩和するための措置を講ずることが望ましいこと」としています。
労働契約法5条において、事業者には安全配慮義務が課されています。事務所内においても熱中症防止のための温度・湿度管理に留意し、作業内容を考慮した至適温度に設定するとよいでしょう。
この記事を書いたのは・・・
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員