【アウトソーシングほっとニュース】障害者雇用促進へ制度改正 100人以下企業も納付金
厚生労働省は5月9日、有識者会議において、法定雇用率が未達成の企業に納付金の支払いを義務付けている制度を見直す方向であることを明らかにしました。年内に議論をまとめ、再来年の関連法改正を目指すとしています。
昨年6月時点の調査によりますと、常用労働者が40~100人程度の企業約6万5千社のうち、法定雇用率以上の障害者を雇用している企業は半数以下で、20年前の状況とほぼ変わっておらず、厚生労働省は、雇用を促すには納付金制度の対象にする必要があると判断しました。
今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会
有識者会議は、2024年12月3日に設置された「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」(座長=山川隆一明治大学教授)で、障害者関係団体や労使、学識者で構成されています。
これまでに5回開催し、障害者雇用率制度における障害者の範囲の見直しや、納付金の納付義務対象事業主の範囲拡大など、同制度の方向性などについて検討が行われています。5月9日の会議では、納付金の義務対象を100人以下の企業に拡大することについて、有識者から「対象拡大は、雇用を後押しする方策として望ましい」「中小企業向け支援策の周知や拡充が不可欠だ」といった意見が出されました。
障害者雇用納付金制度
障害者を雇用するためには、作業施設や作業設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理等が必要となるために、健常者の雇用に比べて一定の経済的負担を伴うことから、障害者を多く雇用している事業主の経済的負担を軽減し、事業主間の負担の公平を図りつつ、障害者雇用の水準を高めることを目的として 「障害者雇用納付金制度」が設けられています。
●法定雇用率未達成企業のうち、常用労働者100人超の企業から、障害者雇用納付金(不足1人当たり月額5万円)が徴収されます。
●この納付金を元にして、法定雇用率を達成している企業に対し、調整金※1(超過1人当たり月額2万7千円)や報奨金※2(超過1人当たり月額2万1千円)が支給されます。
●障害者を雇い入れる企業が、作業施設・設備の設置等について一時に多額の費用の負担を余儀なくされる場合に、その費用に対し助成金を支給します。
※1 常用労働者100人超の企業が対象
※2 常用労働者100人以下で障害者を4%または6人のいずれか多い数を超え雇用する企業が対象
民間企業における法定雇用率は令和6年4月から2.5%に引き上げられており、令和8年7月にはさらに2.7%に引き上げられます。
現在、常用労働者40人以上の企業は、常用労働者数の2.5%以上の障害者を雇用する義務があります。さらに、常用労働者が100人を超える企業は、雇用する障害者数が義務付けられた人数を下回ると、1人につき月5万円の納付金を不足人数分だけ支払わなければなりません。
一方、100人以下の企業は負担能力の観点から、人数が不足していても納付金を支払わずに済んでいます。制度上は雇用義務のかかる全ての企業が対象となるものの、昭和51年の納付金制度創設時から、一定規模以下の企業について、法定雇用率は適用しつつも、納付金の対象からは外すこととしています(昭和51年~常用労働者300人以下⇒平成22年7月~常用労働者200人以下⇒平成27年4月~常用労働者100人以下)。
この記事を書いたのは・・・
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員