【アウトソーシングほっとニュース】違法残業、1万1千事業所(厚労省/2024年度集計)
厚生労働省は7月30日、2024年度に長時間労働の疑いで立ち入り調査した全国の26,512事業所のうち、42.4%に当たる11,230事業所で違法な時間外労働があったと発表しました。
3年連続で40%超となり、厚労省の担当者は「高い水準で推移しており、監督・指導を徹底する。人手不足が要因として考えられる」としています。
過重労働防止に向けた監督指導
労働基準監督行政は、企業に対して様々な分野で監督指導を行っており、昨今は、過重労働の防止に向けた監督指導を強化しています。その一環として、厚生労働省は毎年、時間外・休日労働時間数が80時間/月を超えていると考えられる事業場や、過重労働による過労死等にかかる労災申請が行われた事業場を対象に監督指導を行い、その結果を公表しています。
2024年度監督指導結果のポイントは以下の通りです。
(1)監督指導の実施事業場: 26,512事業場
(2)主な違反内容(法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場)
①違法な時間外労働があったもの:11,230 事業場(42.4%)
②賃金不払残業があったもの:2,118事業場(8.0%)
③過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:5,691事業場(21.5%)
(3)主な健康障害防止に関する指導の状況(健康障害防止のため、指導票を交付した事業場)
①過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:12,890事業場(48.6%)
②労働時間の把握が不適正なため指導したもの:4,016事業場 (15.1%)
なお、違法な時間外労働があった11,230事業場のうち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が、過労死ラインとされる月80時間を超えるものが5,464事業場あり、うち124事業所で月200時間を超える違法残業が確認されています。
労働基準監督署による監督指導
労働基準法等に定める基準への違反があった場合には、是正勧告が行われるほか、その違反が悪質かつ重大な場合は、司法処分(送検)がなされます。なお、是正勧告を受けた後、使用者に改善の意思が見られない、あるいは虚偽の報告をするといった悪質な場合も司法処分(送検)がなされます。
また、法令違反には至らないが、改善すべきと判断された場合には指導票が交付されます。近年、時間外労働を月80時間ないし45時間以内へ削減させる指導も増えています。
是正勧告や指導票による指導を受けた場合、使用者は是正・改善結果を報告することが求められます。また、社会的に影響力大きい企業が違法な長時間労働を複数の事業場で繰り返している場合、司法処分(送検)に至らずとも、企業名が公表されます。
厚生労働省では、今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行うとともに、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行うこととしています。
労働時間管理を適正に行うことは、労働者の過重労働を防止する上での基本です。企業は、厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」や「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」等を参照しながら、関連する法令の遵守、ならびに過重労働防止に向けた取り組みを徹底することが求められます。
この記事を書いたのは・・・
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員