【アウトソーシングほっとニュース】最低賃金引上げ支援策「業務改善助成金」を拡充
厚生労働省が9月5日に公表した最低賃金の47都道府県の2025年度改定額によると、全国平均は現在の1,055円から66円増えて過去最高の1,121円となりました。引き上げ額は過去最大で、全都道府県で初めて最低賃金が千円を超えます。
最低賃金の大幅引き上げを踏まえ、厚生労働省は9月5日より、中小企業・小規模事業者による事業場内最低賃金の引き上げを支援する「業務改善助成金」を拡充すると公表しました。
業務改善助成金とは
業務改善助成金は、生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、事業場内で最も低い時間給(事業場内最低賃金)を各コースに定める金額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。
事業場内最低賃金の引上げ計画と設備投資等の計画を立てて申請し、交付決定後に計画どおりに事業を進め、事業の結果を報告することにより、設備投資などにかかった費用の一部が助成金として支給されます。助成される金額は、生産性向上に資する設備投資等にかかった費用に一定の助成率をかけた金額と助成上限額とを比較し、いずれか安い方の金額となります。
なお、業務改善助成金を申請できるのは、以下の要件をすべて満たす事業者です。
・中小企業・小規模事業者(下図のA又はBの要件を満たす事業者)であること
・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
・解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
拡充のポイント
今回の拡充は、「申請可能な事業所が拡大」されること、「賃金引上げ計画の事前提出を省略可能」とすることの2点です。
①対象事業者の拡大
これまで、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内の事業所が対象でしたが、「事業場内最低賃金が改定後の地域別最低賃金額未満までの事業所」まで拡大されます。
②申請手続きの簡略化
2025年9月5日から、2025年度の当該地域の最低賃金改定日の前日までに賃金引上げを実施している場合には、従来必要だった「賃金引上げ計画」の事前提出が不要となります。地域別最低賃金の改定日(予定)は、こちらをご確認ください。
注意事項
・交付決定前に助成対象設備の導入を行った場合は助成の対象になりません。
・事業所での賃金引上げ日から地域別最低賃金の改定日までに勤務実績がないことにより、賃金引上げの実施を確認できない場合は、当該労働者を賃金引上げ対象者に含めることはできません。
・申請期限は、申請事業所に適用される地域別最低賃金改定日の前日です。
・予算の範囲内で交付されるため、申請期間内に募集が終了する場合があります。
・同一事業所の申請は年度内1回までです。
この記事を書いたのは・・・
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。