【アウトソーシングほっとニュース】令和6年度「介護労働実態調査」結果の公表
公益財団法人介護労働安定センターは、令和6年度「介護労働実態調査」の結果を公表しました。調査は昨年10月に実施し、全国9,044事業所から回答を得ています。
職員の賃金水準を向上させた事業所の30.9%が、職場への定着に効果があったと回答しています。調査では、合計20項目の定着対策を示したうえで、実際に効果のあったものを最大3項目選択してもらいました。「効果あり」の回答割合が最も高かったのは、「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」(34.4%)でした。「人間関係が良好な職場づくり」(29.5%)なども高くなっています。
介護労働実態調査とは
介護労働実態調査は、介護事業所における雇用管理や介護労働の実態及び介護労働者の雇用の実態や就業意識等を明らかにすることを目的として、介護労働安定センターが毎年度実施しています。
その調査結果は、介護事業者に対して雇用管理上の有益な知見を与えるものであるほか、政府の政策立案の基礎資料となっており、介護にかかわる方々の働く環境の改善、介護分野における人材の確保と育成、より高い介護サービス提供を実現することに役立てられています。
この調査は「事業所における介護労働実態調査」と「介護労働者の就業実態と就業意識調査」から構成されています。「事業所における介護労働実態調査」は介護事業所を対象に、介護事業所で働く労働者の確保や定着・雇用管理、人材育成、処遇改善、福利厚生の状況や事業運営上の課題について、また、「介護労働者の就業実態と就業意識調査」は介護労働者を対象に、就労及び労働条件、賃金、能力開発の状況、仕事への満足度や悩みといった就業意識等について、詳細なアンケート調査を実施しています。
調査結果の主なポイント
令和6年度「介護労働実態調査」(2025年7月28日発表)の主なポイントは以下の通りです。
①採用・離職の動向
離職率は過去最低を更新し、低下傾向が継続。一方で採用率は低下し、人材確保の難しさが顕著に。
②採用・定着に効果的な施策
採用に最も効果があるのは「賃金水準の向上」 。定着には「有給休暇の取得や勤務日時の柔軟性」が最も効果的。
③離職理由の傾向
中途退職者の前職での離職理由として最も多かったのは「職場の人間関係の問題」。
④就業意識と満足度
「職場の人間関係」「仕事の内容」には満足しているが、「人員配置体制」「休憩室などの設備」「賃金水準」には不満が多い。
⑤仕事と育児・介護の両立
両立支援制度を「活用しやすい」と感じている労働者は約2割にとどまる。
⑥ICT機器・介護ロボットの導入
約半数の事業所が「昼夜の業務負担軽減に効果あり」と評価。
⑦外国籍労働者の受け入れ
約8割の事業所が受け入れていないが、受け入れ事業所の割合は前年比で2.4ポイント増加。
⑧訪問介護におけるサービス提供責任者の役割
サービス提供責任者がコミュニケーションや指導を実施している事業所では離職率が低い傾向が見られる。
この記事を書いたのは・・・
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。