【アウトソーシングほっとニュース】全国13都市で「改正労働安全衛生法説明会」が開催
厚生労働省から「改正労働安全衛生法説明会」のお知らせが公開されています。
説明会は全国13都市で開催(オンライン併用)され、「個人事業者等の安全衛生対策の推進」を中心に改正労働安全衛生法についての解説のほか、企業の安全衛生に関する課題や成功事例の共有を行う座談会も行われます。
労働安全衛生法等の改正
「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」が第217回国会で成立し、2025年5月14日に公布、2026年1月1日から段階的に施行されます(一部は公布日に施行済み)。
注目すべき改正点の一つが「個人事業者等に対する安全衛生対策の推進」です。労働者と同じ場所で働く個人事業者等を労働安全衛生法による保護の対象及び義務の主体として位置づけ、注文者等や個人事業者等自身が講ずべき各種措置が定められました。

最高裁判決が指し示した拡張する保護対象
今回の法改正の背景には、最高裁の「建設アスベスト訴訟」判決とともに、欧米でも広がる「リスク創出者管理責任負担原則」の視点が深く関わっています。
2021年5月の最高裁判決では、労働安全衛生法第22条(健康障害防止措置)は、雇用契約で雇われた「労働者」だけでなく、「同じ場所で働く雇用契約関係以外の者」にも適用されると判断されました。この判決を受け、2022年~2023年にかけて厚生労働省は「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」を開催し、そこでは、個人事業者にも安全配慮が及ぶべきだという議論が深まりました。
リスク創出者管理責任負担原則とは
法改正の根底にあるのが「リスク創出者管理責任負担原則」です。これは、リスクを生み出す者=製造者、発注者、プラットフォーマー等が、自らそのリスクに対処・管理する責任を負うべきという考え方です。
日本では三柴丈典教授らにより提起され、労働安全衛生法上でも、製造者や機械貸与者、発注者に安全措置を求める条文が整備されています。背景には、メーカーが製品のリスクを正しく伝える責務、元方事業者が下請けや個人事業者が混在する現場を管理する責務を重視しようという流れがあります。
リスクを生み出す側が責任を負うべき時代へ
今回の改正は「リスクを生み出す者=発注者やプラットフォーマー、製造者」が、自ら安全管理を担うべきという国際的な動きに沿うものです。
日本では、少子高齢化や生産年齢人口の減少に伴い、フリーランスやギグワーカーの増加など、多様な働き方が進展しています。一人親方など個人事業者は、労働者同様に危険にさらされるケースが多く、災害率も高い傾向にあります。この現実に対応し、すべての現場作業者の安全を確保する制度設計が急務だったというわけです。
社労士法人としてできること
2025年5月公布の改正労働安全衛生法により、個人事業者等に対する安全衛生対策の推進が新たに義務化されました。当法人では、事業者の皆様がこの改正に円滑に対応できるよう、改正法対応に必要な制度設計から現場運用までワンストップでサポートします。
企業にはすべての働く人々が安心して働ける現場づくりに向けた活動が求められており、安全衛生対策の強化は企業の信頼性向上と労働災害防止に直結します。ぜひ当法人までご相談ください。
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。