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【アウトソーシングほっとニュース】東京都のカスハラ防止条例、令和7年4月施行へ

 東京都のカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)の防止に向けた条例が10月4日、都議会定例会で全会一致で可決、成立しました。令和7年4月1日より施行されます。東京都はカスハラに当たる内容を具体的に示す指針(ガイドライン)を年内に作成し、カスハラ防止に向けた企業の具体的な取り組みについても指針に定め周知を図る方針です。
 カスハラ被害が社会問題となるなか、カスハラ防止条例は全国初となり、国に先駆けた取り組みです。罰則の規定はありませんが、「何人も、あらゆる場において、カスタマー・ハラスメントを行ってはならない。」と禁止規定が明記されています。

東京都カスハラ防止条例の概要

 条例では、顧客だけではなく、企業や労働者に対しても、カスハラ防止に資する行動をとることを求めており、事業者に「就業者の安全を速やかに確保し、該当行為を行った顧客に対して行為の中止その他の措置」を行うことを努力義務として課しています。各主体ごとの責務の概要は、以下の通りです。

:カスハラの防止に関する情報の提供等
顧客等:カスハラへの関心と理解を深め、就業者に対する言動に必要な注意を払うよう努める。
就業者:カスハラへの関心と理解を深め、カスタマー・ハラスメントの防止に資する行動をとるよう努める。
事業者:カスハラを受けた就業者の安全を確保し、顧客等に対し中止の申入れ等の措置を講ずるよう努める。

カスハラとは

 カスハラとは、Customer(顧客)からのハラスメントの総称を言います。
 2019年6月に、労働施策総合推進法等が改正され、職場におけるパワーハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となりました。この改正を踏まえ、2020年1月、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」が策定され、顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為(カスハラ)については、事業主は、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮の取組を行うことが望ましい旨、また、被害を防止するための取組を行うことが有効である旨が定められました。
 カスハラには、B to C(Business to Consumer)とB to B (Business to Business)の2類型があるとされ、一般にカスハラと言うと、顧客等からの著しい迷惑行為である「B to C」をイメージすることが多いと思いますが、「B to B」もあることに注意が必要です。B to Bカスハラは、取引先企業の担当者から自社の担当者に対する暴言などが該当します。

カスハラの実態

 厚生労働省が2024年5月17日に公表した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、10人に1人(10.8%)の労働者が、過去3年間に勤務先で顧客等からの著しい迷惑行為(カスハラ)を受けたと回答しています。ちなみに、パワハラでは19.3%、セクハラでは6.3%となっています。

ハラスメントを受けた経験


また、過去3年間に従業員からハラスメントの相談を受けた企業のうち、カスハラについて相談があった企業は27.9%です(パワハラの64.2%、セクハラの39.5%に次ぐ割合)。

ハラスメントの相談有無








企業は従業員を守る必要がある

 カスハラは被害者(従業員)の心身を傷付けることがあります。企業がカスハラを放置し、結果として従業員が傷付いても放置していると、安全配慮義務※違反を理由として、企業は損害賠償責任を負う可能性があります。
※安全配慮義務:使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする(労働契約法第5条)。
 また、2023年9月1日に、心理的負荷による精神障害の認定基準が改正され、具体的な出来事に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(=カスハラ)が追加されています。この改正により、顧客からの不当な言動や暴力を受けたケースだけでなく、企業が適切な対応や改善を行わなかった場合も労災と認められるようになりました。

 厚生労働省では、カスハラを想定した事前の準備や実際に起こった際の対応などカスハラ対策の基本的な枠組みを整理した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公開しています。また、カスハラ対策研修の動画も用意されています。
 企業は、従業員の就業環境を守るという観点から、東京都が発表する指針や厚生労働省のマニュアル・研修動画を参考に、カスハラ防止対策を進めていきましょう。


この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K

事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。



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