• トップ
  • お知らせ
  • 【アウトソーシングほっとニュース】シフト制で働く従業員の年次有給休暇、適切に管理できていますか?

【アウトソーシングほっとニュース】シフト制で働く従業員の年次有給休暇、適切に管理できていますか?

 


はじめに

厚生労働省は、翌年度の年次有給休暇の計画的付与について労使で話し合いを始める時期である10月を「年次有給休暇取得促進期間」と定め、年次有給休暇を取得しやすい環境づくりに向けた周知・広報を集中的に行っています。

年次有給休暇(以下「年休」)の取得促進というと、使用者に求められる「年5日の確実な取得」がまず思い浮かびます。一方、飲食店や小売店、ホテル、介護・福祉事業所など、シフト制で働く従業員が多い企業では、年休を何日付与するのか、年休を取得した場合の賃金をどのように計算するのかといった点についても、適切な管理が必要です。

厚生労働省は令和8年6月、シフト制で働く労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項を改正し、年次有給休暇について、年休の付与日数や所定労働日数を算定しがたい場合の取扱い、年休取得時の賃金の計算方法などを追記しました。

今回は、この改正内容を中心に、シフト制で働く従業員の年休管理について確認します。

1 そもそも「シフト制」とは?

今回の留意事項でいう「シフト制」とは、労働契約を締結する時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務シフトなどによって、具体的な労働日や労働時間が決まる勤務形態をいいます。

例えば、1週間や1か月ごとに勤務シフトを作成し、その都度、具体的な勤務日や勤務時間を決めるような働き方が該当します。

一方、三交替勤務のように、一定期間における労働日数や労働時間数があらかじめ決まっており、就業規則等で定められた勤務時間のパターンを組み合わせて勤務する形態は、今回の留意事項でいう「シフト制」には含まれません。

シフト制を採用している企業では、まず自社の勤務形態がどのようなものなのかを確認することが大切です。

2 シフト制でも年次有給休暇は付与されます

シフト制で働く労働者であっても、一定の要件を満たせば年休が付与されます。

年休は、正社員だけに認められる制度ではありません。パートタイム労働者やシフト制で働く労働者についても、継続勤務期間や出勤率などの要件を満たせば、年休が付与されます。

また、週の所定労働日数が少ない労働者については、所定労働日数や継続勤務年数に応じて、年休が比例付与されます。

そもそも「比例付与」とは何か

比例付与とは、通常の労働者(週所定労働日数5.2日)を基準として、対象労働者の週所定労働日数(または年間所定労働日数)が通常の労働者に対してどの程度の割合にあたるかに応じて、年休の付与日数を比例計算する仕組みです(労働基準法施行規則第24条の3第2項)。計算の結果生じた1日未満の端数は切り捨てます。

比例付与の対象となるのは、次の(1)(2)両方に該当する労働者です。

(1)週の所定労働時間が30時間未満であること
(2)週の所定労働日数が4日以下、または週以外の期間で所定労働日数が定められている場合は年間の所定労働日数が216日以下であること

つまり、週30時間以上働く労働者は、たとえ週の勤務日数が少なくても比例付与の対象にはならず、通常の労働者と同じ日数が付与されます。

比例付与の対象となる場合、法令で定められた次の早見表に沿って付与日数が決まります。

(出典:厚生労働省「リーフレットシリーズ 労働基準法第39条(年次有給休暇)」を基に作成)

例えば、週3日勤務のパート従業員が、雇入れから6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合、表の「週3日」欄より5日の年休が付与されます。
ここで注意したいのが、シフト制では「週何日勤務するのか」が契約上明確になっていない場合があることです。
このような場合でも、「所定労働日数が決まっていないから年休を付与しなくてよい」ということにはなりません。
今回の改正では、所定労働日数を算定しがたい場合の年休の付与日数について、具体的な考え方が示されています。 

3 シフト制の年休管理について、厚生労働省が留意事項を改正

厚生労働省は令和8年6月、「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」を改正しました。

今回の改正では、年次有給休暇について、主に次の内容が追記されています。

改正内容

主なポイント

年休の付与日数

所定労働日数に応じた比例付与を含めた年休の付与日数

所定労働日数

所定労働日数を算定しがたい場合の取扱い

年休取得時の賃金

年休を取得した場合に支払う賃金の計算方法

 つまり、今回の改正は、シフト制で働く労働者について、

「何日年休を付与するのか」
「所定労働日数をどう考えるのか」
「年休を取得した日にいくら支払うのか」

といった、年休管理の基本的な部分を整理したものといえます。

4 所定労働日数を算定しにくい場合、年休の付与日数はどう考える?

シフト制では、労働契約を結ぶ時点で、具体的な勤務日が決まっていないことがあります。
例えば、「週○日勤務」と明確に定めず、本人の希望や店舗の状況などを踏まえて、一定期間ごとにシフトを作成しているケースです。
このような場合でも、シフト制で働く労働者に年休を付与する必要があります。
では、年休の比例付与に必要となる「所定労働日数」をどのように考えるのでしょうか。

改正された留意事項では、所定労働日数を算定しがたい場合について、過去の労働日数の実績を基に所定労働日数を算定する方法が示されています。

雇入れから6か月経過後の年休付与については、雇入れから6か月間の実際の労働日数を2倍した日数を、1年間の所定労働日数とみなして、比例付与の日数を算定します。

例:雇入れから6か月間に実際に働いた日数が50日だった場合、50日 × 2 = 100日となります。

この100日を1年間の所定労働日数とみなして、比例付与の対象となるか、その付与日数を確認します。

なお、年休の付与は、雇入れから6か月後・1年6か月後・2年6か月後…という「基準日」ごとにしか発生しません。6か月経過後から次の基準日(1年6か月後)までの間に、改めて所定労働日数を算定し直す必要はなく、次に算定が必要になるのは1年6か月経過後の2回目の付与のタイミングです。

一方、雇入れから1年6か月経過後以降については、前年(直近1年間)の実際の労働日数を、そのまま1年間の所定労働日数とみなして算定します。例えば、前年の実労働日数が120日であれば、120日を所定労働日数とみなして付与日数を確認する、という考え方です。

なお、契約時に「1か月○日程度勤務」といった目安となる労働日数をあらかじめ定めている場合は、その目安日数を用いて算定した付与日数が、上記の実績に基づく算定より多くなるときに限り、目安日数を使って年休を付与することも認められています。労働者にとって不利にならない形で運用できるよう、両方の算定結果を確認しておくとよいでしょう。

シフト制だからといって、年休の付与日数を会社が任意に決められるわけではありません。
実際の勤務状況などを踏まえ、法令に沿って適切に管理することが必要です。

5 年休を取得した日の賃金は、どのように計算する?

年休を取得した場合、使用者は年休取得日に対応する賃金を支払う必要があります。
年休取得時の賃金については、労働基準法上、一定の計算方法が定められています。
主な方法は、

  • 平均賃金
  • 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  • 健康保険法上の標準報酬日額を基礎とする方法(採用する場合は労使協定の締結が必要です

です。
どの方法を採用するかによって、計算方法が異なります。

このうち、シフト制で特に問題になりやすいのが「通常の賃金」です。平均賃金は直近3か月間の賃金総額をその期間の暦日数で割って算出するため、年休取得日の所定労働時間が何時間かとは関係なく計算されます。また、標準報酬日額を基礎とする方法は、前述のとおり労使協定の締結が前提となるため、採用している企業はそれほど多くありません。これに対して「通常の賃金」は、時給制のパート・シフト労働者の間で最も広く採用されている方法であり、かつ「日によって所定労働時間が異なる」というシフト制特有の論点に直接関わるため、以下ではこの方法を中心に説明します。

「通常の賃金」で計算する場合

シフト制で働く労働者について、「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」を採用している場合、給与形態に応じて次のように計算します。

・時間給の労働者の場合:年休を取得した日の所定労働時間に時間給を乗じて計算します。

例えば、あらかじめ次のようにシフトが決まっていたとします。

  • 月曜日:5時間
  • 水曜日:8時間
  • 土曜日:6時間

 この場合、水曜日について8時間勤務と定められており、その日に年休を取得したのであれば、通常の賃金による計算では、8時間分の賃金が年休取得日の賃金となります。
一方、月曜日に年休を取得した場合、その日に定められていた所定労働時間が5時間であれば、5時間分の賃金を計算します。
つまり、シフト制で日によって勤務時間が異なる場合でも、「年休1日=一律8時間分」ではありません。「通常の賃金」による場合は、年休を取得した日の所定労働時間を基準として計算することになります。

・日給の労働者の場合:その日の給与額(日給額)をそのまま年休取得日の賃金とします。時間給の場合のような時間数による計算は行いません。

ただし、これはあくまで「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」という計算方法を採用している場合の考え方です。会社が年休取得時の賃金についてどの計算方法を採用しているのか、就業規則等と併せて確認しておくことが重要です。

 

6 シフトが決まっていないことを理由に、年休を取得させないことはできません

シフト制では、年休の取得について、
「まだシフトを組んでいない日に、年休を申請することはできるのか」
 「年休を取りたいと言われたので、その日はシフトに入れなければよいのではないか」
といった疑問が生じることがあります。
しかし、シフト制であっても、年休については適切に取り扱う必要があります。

厚生労働省は、シフト制労働者について、労働者の年休取得を抑制するような取扱いをしないことを求めています。

例えば、「シフトの調整をして働く日を決めたのだから、その日に年休は使わせない」といった取扱いは認められません。

シフトを作成する際には、年休の権利を踏まえて適切に取り扱う必要があります。
また、年休を取得することを理由として、実質的に勤務機会を減らすような取扱いになっていないかについても注意が必要です。 

7 シフト制の年休管理を確認しましょう

今回の改正を踏まえ、シフト制で働く従業員がいる企業では、次のような点を確認してみてはいかがでしょうか。

年休管理チェックリスト
□  シフト制で働く従業員にも、要件に応じて年休を付与しているか
□  比例付与の対象となる従業員について、付与日数を適切に確認しているか
□  所定労働日数をどのように設定・算定しているか
□  所定労働日数を算定しにくい場合の取扱い(実績に基づく算定、目安日数との比較)を確認しているか
□  年休取得時の賃金について、会社で採用している計算方法を確認しているか
□  シフト作成時に、年休取得の申出を適切に取り扱っているか
□  年休を取得したことを理由として、勤務機会を不当に減らすような取扱いをしていないか
□  年10日以上の年休が付与される労働者について、年5日の確実な取得を管理しているか

年休の取得日数だけでなく、「付与」「取得」「賃金」のそれぞれを適切に管理できているかを確認することがポイントです。

さいごに

年休の取得促進というと、年5日の確実な取得に目が向きがちですが、シフト制で働く従業員がいる企業では、年休の付与日数や所定労働日数、年休を取得した日の賃金などについても適切に管理する必要があります。
厚生労働省は令和8年6月、シフト制労働者の年休について留意事項を改正し、所定労働日数を算定しがたい場合の取扱いや、年休取得時の賃金の計算方法などを追記しました。
10月の年次有給休暇取得促進期間を機会に、年5日の取得状況だけでなく、シフト制で働く従業員の年休管理そのものについても確認してみてはいかがでしょうか。 

【参照元】
・厚生労働省「いわゆる『シフト制』について」
・厚生労働省「リーフレットシリーズ 労働基準法第39条(年次有給休暇)」


この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス                  社会保険労務士 T.Y                          レストランでの接客から人事労務の世界へ転身しました。難しくなりがちな労務の話も身近に感じてもらえるようにお届けしていきます。

サービスに関するお悩み、
ご相談やお見積り依頼等のお問い合わせはこちらから

※企業様からのお問い合わせを受け付けております。

電話アイコン

お電話でのお問い合わせ

03-6826-6333

平日9:00 - 17:30

ページトップへ戻る