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【アウトソーシングほっとニュース】9月は「職場の健康診断実施強化月間」です

 


1. 「職場の健康診断実施強化月間」とは

厚生労働省は、全国労働衛生週間(10月1日~7日)の準備月間である毎年9月を「職場の健康診断実施強化月間」と位置付け、労働安全衛生法に基づく一般健康診断の実施の徹底や、事業者の健康保持増進措置等の適切な実施を促すため、集中的・重点的な啓発を行っています。令和8年度(2026年度)についても、令和8年8月21日に事業者向けの協力依頼が公表されました。

この時期は労働基準監督署による指導が重点的に行われる期間でもあります。健康診断は年間スケジュールで動く業務であるため、来年度の実施計画を固める前に自社の運用を総点検しておくと、対応漏れを防ぎやすくなります。

背景にあるのは、政府が進める「攻めの予防医療」です。健診・検診による早期発見・早期治療を含む予防の取組を強化し、健康寿命の延伸と、社会保障を支える基盤の維持・強化につなげるという方針で、令和8年7月には施策パッケージ「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~」も公表されています。職場における健康診断の実効性向上は、この流れの中で求められているものです。

令和8年度の重点事項

厚生労働省が示す今年度の重点事項は、次のとおりです。

(1)一般健康診断

ア 実施、医師からの意見聴取及び事後措置等の実施の徹底

イ 結果の記録の保存、労働基準監督署への報告の徹底

ウ 結果に基づく、必要な労働者に対する医師又は保健師による保健指導の実施

エ 小規模事業場における留意事項

オ 地域保健との連携(コラボヘルス)

カ 外国人労働者に関する留意事項

キ 派遣労働者の健康診断

ク 個人事業者等に関する留意事項

(2)ストレスチェック制度の適切な実施等

(3)健康保持増進措置等の適切な実施

(4)職場環境に起因する疾病の防止の推進

(5)治療と就業の両立支援の周知

本記事では、このうち実務上の負荷が大きく、対応漏れが起きやすい(1)一般健康診断を中心に、(2)~(5)についても実務上の要点を整理します。

主な法改正・施行スケジュール

施行時期

内容

根拠

令和8年4月1日

(2026年4月1日)

※施行済み

治療と就業の両立支援のための措置を講じることが事業主の努力義務に

改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号、令和7年6月11日公布)/治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)

令和9年4月1日

(2027年4月1日)

定期健康診断等の項目変更(血清クレアチニン検査の追加、喀痰検査の廃止、肝機能検査の酵素名変更)

労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第89号、令和8年4月28日公布)

令和10年4月1日

(2028年4月1日)

労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化

改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号、令和7年5月14日公布)

2. 一般健康診断:実務担当者が押さえるべきポイント

2-1. 健診の実施義務と種類

事業者は労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して医師による健康診断を実施する義務があります。同条第5項により労働者側にも受診義務がある点は、社内周知の際に押さえておきたいポイントです。

一般健康診断のうち、多くの事業場で実務対象となるのは次の3種類です。

健康診断の種類

対象となる労働者

実施時期

雇入時の健康診断

(安衛則第43条)

常時使用する労働者

雇入れの際

定期健康診断

(安衛則第44条)

常時使用する労働者

1年以内ごとに1回

特定業務従事者の健康診断

(安衛則第45条)

深夜業等、安衛則第13条第1項第3号に掲げる特定業務に常時従事する労働者

当該業務への配置替えの際、及び6月以内ごとに1回

※ 「常時使用する労働者」とは、契約期間が1年以上(更新により1年以上使用される見込みを含む)で、かつ1週間の労働時間数が、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上である労働者を指します。

※ 特定業務従事者は安衛則第44条の対象から外れるわけではなく、第45条により実施頻度が上乗せされる関係にあります。

なお、定期健康診断の血液検査等の一部項目は、年齢等の基準に基づき医師が「必要でない」と認めるときは省略が可能です(従来の項目については、雇入時の健康診断では省略できません)。この省略の可否判断は、必ず医師が個々の労働者ごとに行う必要があり、医師以外の者が一律に省略を判断する運用は認められません。制度の趣旨を誤解しやすい部分のため、社内マニュアルの該当箇所に一文明記しておくとよいでしょう。

2-2. 令和9年(2027年)4月からの健診項目の変更

労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第89号、令和8年4月28日公布)により、令和9年4月1日から定期健康診断等の項目が変更されます。人事労務担当者や産業保健スタッフは、早めの周知・準備が必要です。

① 血清クレアチニン検査の追加

雇入時の健康診断、定期健康診断、特定業務従事者の健康診断、海外派遣労働者の健康診断が対象です。腎機能を調べる検査で、慢性腎臓病(CKD)の早期発見・重症化予防を目的としています。検査結果に基づく医師の意見聴取・事後措置・保健指導も必要になります。

この項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、40歳未満の者について医師が必要でないと認めるときは省略が可能とされています(雇入時の健康診断も含みます。従来の血液検査等の省略ルールとは扱いが異なる点に注意してください)。

② 喀痰検査の廃止

定期健康診断、特定業務従事者の健康診断、海外派遣労働者の健康診断で義務づけられていた喀痰検査が廃止されます。結核の罹患率低下を踏まえたものですが、胸部エックス線検査で結核感染が疑われる場合には、喀痰検査の結果を待たず、速やかに医療機関への受診勧奨を行うことが求められます。「検査項目が減る」ではなく「対応の流れが変わる」改正と捉えてください。

③ 肝機能検査の酵素名の変更

国際的な呼称に合わせ、「GOT」→「AST」、「GPT」→「ALT」、「γ-GTP」→「γ-GT」に変更されます。検査内容自体は変わりません。労働者が旧名称に慣れている場合は、当面は新旧併記で案内するのが実務的です。

④ 女性特有の健康課題に関する問診の活用

あわせて厚生労働省は「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル」を公表しています。月経困難症・月経前症候群(PMS)・更年期症状等について確認する質問を問診に活用するもので、法令上の義務ではありませんが、健診機関の標準問診票に反映される形で実務に入ってくることが想定されます。導入する場合は、回答が任意であること、事業者側で結果をどう取り扱うかを事前に整理し、労働者に明示しておくことが重要です。

対応の目安

次の作業を令和9年3月までに済ませておくことをおすすめします。

  • 健診機関との検査項目・費用・問診票の調整
  • 健康診断個人票(安衛則様式第5号)の記載項目の更新(血清クレアチニン検査の追加、喀痰検査の削除)
  • 定期健康診断結果報告書(安衛則様式第6号)の様式差し替えの確認
  • 労務管理システム・健診結果データの検査項目名(AST/ALT/γ-GT)の変更
  • 産業医・産業保健スタッフとの情報共有、労働者向け案内文の準備

2-3. 医師からの意見聴取と事後措置の実施

健康診断は、実施して終わりではありません。安衛法上、次の一連の流れを徹底することが事業者の義務です。

  1. 健康診断の実施(安衛法第66条)
  2. 有所見者について、医師からの意見聴取(安衛法第66条の4)
  3. 医師の意見を勘案し、必要と認めるときの事後措置(就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等)(安衛法第66条の5)

事後措置や後述の保健指導を検討する際は、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」を確認し、労働者の実情を考慮した対応を行うことが求められます。

厚生労働省の資料では、この事後措置までの実施率が特に小規模事業場で低いことが繰り返し指摘されています。「健診を実施した」で止めず、有所見者へのフォローまでを一連のプロセスとして管理する体制づくりが重要です。産業医面談の予約枠を健診結果の到着時期に合わせて先に確保しておくなど、仕組みとして回る形にしておくと運用が安定します。

2-4. 結果の記録保存と労働基準監督署への報告

  • 記録の保存:健康診断個人票(安衛則様式第5号)を作成し、個人情報の管理に配慮した上で5年間保存する必要があります(安衛法第66条の3、安衛則第51条)。
  • 労働者への通知:健診結果は、有所見の有無にかかわらず労働者本人に通知しなければなりません(安衛法第66条の6)。
  • 労働基準監督署への報告:常時50人以上の労働者を使用する事業場は、定期健康診断結果報告書(安衛則様式第6号)を遅滞なく所轄労働基準監督署長に提出する義務があります(安衛則第52条)。

電子申請の原則義務化(令和7年1月1日から)

特に注意したいのが、令和7年1月1日から、労働安全衛生関係の一部の手続について電子申請が原則義務化されている点です。対象となる主な手続は以下のとおりです。

  • 労働者死傷病報告(事業場の規模を問いません)
  • 総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医の選任報告
  • 定期健康診断結果報告(提出義務があるのは常時50人以上の労働者を使用する事業場)
  • 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告(ストレスチェック)
  • 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
  • 有機溶剤等健康診断結果報告
  • じん肺健康管理実施状況報告

電子申請では労働基準監督署への来署が不要になり、時間や場所を問わず手続きが完了します。紙での報告が習慣化している事業場は、この機会に切り替えを検討しましょう。申請は厚生労働省のポータルサイト「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」から行えます(e-Govアカウント又はGビズIDが必要です)。

2-5. 健診結果に基づく保健指導の実施

健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認められた労働者に対しては、医師または保健師による保健指導を行うよう努めることとされています(安衛法第66条の7)。事後措置と異なり努力義務ですが、有所見率が上昇傾向にある中で、重症化を防ぐ入口として位置づけられている取組です。実施主体を確保できない事業場は、次項の地域産業保健センターの活用が現実的な選択肢になります。

2-6. 小規模事業場(50人未満)における留意点

一般健康診断の実施・事後措置・保健指導は、労働者数50人未満の小規模事業場を含むすべての事業場が対象です。しかし実態としては、小規模事業場において定期健康診断・事後措置・保健指導の実施率が低い傾向にあります。

こうした事業場を支援するのが地域産業保健センター(地域窓口)です。労働者数50人未満の事業場を対象に、以下のような支援を無料で提供しています。

  • 健診結果についての医師からの意見聴取
  • 長時間労働者・高ストレス者への医師による面接指導
  • 産業医等による事業場訪問での保健指導
  • 労働者の健康に関する各種相談

自社に産業医がいない、体制が整っていないという事業場は、まず最寄りの地域産業保健センターに相談し、年間で使える支援の回数と申込方法を確認しておくとよいでしょう。

2-7. 地域保健・医療保険者との連携(コラボヘルス)

医療保険者(協会けんぽ・健康保険組合・市町村国保等)は、高齢者医療確保法に基づく特定健康診査・特定保健指導や、健康保険法に基づく保健事業を行っています。事業者と保険者が連携して労働者の健康づくりを進める取組が「コラボヘルス」です。

事業者は、保険者から定期健康診断結果の提供を求められた場合、特定健康診査に相当する項目について提供する義務があります。法律に基づく提供であるため、第三者提供に係る本人同意は不要です。さらに令和4年1月からは、特定健康診査の対象とならない40歳未満の労働者の健診結果についても、保険者から求められた場合の提供が義務付けられています。

この40歳未満分については「知らなかった」ことによる情報提供の遅れが中小企業等で指摘されているため、健診結果を受け取る担当者と保険者対応の担当者の間で認識を揃えておくことが大切です。

2-8. 特殊なケースへの対応

  • 外国人労働者:外国語による問診票の用意や通訳の手配など、健診機関と調整のうえ言語面での配慮を行うことが求められます。結果の通知や事後措置の説明も、理解できる言語で行う必要があります。
  • 派遣労働者:一般健康診断の実施義務は派遣元事業場、特殊健康診断の実施義務は派遣先事業場が負います。一般健康診断に係る事後措置は派遣元の義務ですが、就業場所の変更や作業の転換など派遣先でなければ対応できない事項があるため、両者の十分な連携が必要です。
  • 個人事業者等:「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」に基づき、定期的な健診受診や、注文者等による受診に要する費用・時間への配慮といった取組が求められています。

3. ストレスチェック制度の適切な実施【義務対象が拡大】

ストレスチェックの結果の集団分析については、「特定の個人を識別できない方法」で実施することが、令和9年4月1日施行の省令改正で明記されます。従来からの考え方を明文化したものですが、特定の個人を識別できる方法による集団分析は、改正省令に基づく集団分析としては認められない点に留意が必要です。

また、令和7年5月14日公布の改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)により、令和10年(2028年)4月1日から、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化されます。現在は努力義務にとどまる小規模事業場にとっては大きな変更点です。

実施頻度は1年以内ごとに1回のため、新たに対象となる事業場は施行日から1年以内に初回を実施できる体制を整える必要があります。厚生労働省が公表している「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」も参考に、実施者となる医師等や外部委託先の確保を含めた早めの準備が推奨されます。

4. 健康保持増進措置等の推進

THP指針(事業場における労働者の健康保持増進のための指針)に基づき、以下のような取組の周知が求められています。健診の機会とあわせて案内すると、受診勧奨の効果が高まります。

  • がん検診の推進:健診機会を活用した受診勧奨、女性従業員への乳がん検診・子宮頸がん検診の周知
  • 女性の健康課題への理解促進:女性特有の健康課題に関する問診の活用(2-2④参照)、相談窓口・研修の周知
  • 口腔の健康:歯科受診勧奨リーフレットの活用
  • 眼科検診:40歳以上の従業員への眼科検診の周知(緑内障等の早期発見)

5. 職場環境に起因する疾病の防止

  • 騒音障害防止:騒音作業のある事業場では、「騒音障害防止のためのガイドライン」に基づき、聴力レベルに応じた聴覚保護具の使用等の措置が必要です。
  • 感染症対策:肝炎対策基本指針、「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」、風しんの抗体検査・予防接種の機会提供等の周知が求められています。

6. 治療と就業の両立支援の周知

令和8年4月1日から、改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)により、治療と就業の両立支援のための措置を講じることが事業主の努力義務となりました。あわせて、従来のガイドラインを整理した「治療と就業の両立支援指針」(令和8年厚生労働省告示第28号)が定められています。

努力義務のため直ちに罰則が科されるわけではありませんが、指針に基づき厚生労働大臣(実際には都道府県労働局)が事業主に対して必要な指導・援助を行うことができるため、特段の理由なく取組を行っていない場合は行政指導の対象となり得ます。

産業保健総合支援センター(さんぽセンター)では、両立支援プランの作成支援や専門スタッフによる相談を無料で受けられるほか、「両立支援コーディネーター基礎研修」の受講も可能です。すでに施行済みの制度であるため、未対応の事業場は、相談窓口の設置と指針の社内周知から優先的に着手してください。

7. まとめ:一般健康診断まわりの実務チェックリスト

☐ 令和9年4月からの健診項目変更(血清クレアチニン検査の追加、喀痰検査の廃止、酵素名の変更、女性特有の健康課題に関する問診)を社内・健診機関に周知したか 

☐ 健康診断個人票(様式第5号)・定期健康診断結果報告書(様式第6号)・労務管理システムの項目を更新したか 

☐ 有所見者への医師の意見聴取から事後措置までの流れが、仕組みとして機能しているか 

☐ 個人票の5年間保存と、労働基準監督署への報告(電子申請)の体制ができているか 

☐ 保健指導が必要な労働者へのフォロー体制があるか 

☐ 50人未満の事業場でも、地域産業保健センター等を活用した実施体制が整っているか 

☐ 医療保険者から結果提供を求められた際の対応フロー(40歳未満分を含む)を把握しているか 

☐ 治療と就業の両立支援の体制(相談窓口の設置・指針の社内周知)を整備したか 

☐ 外国人労働者・派遣労働者・個人事業者等への配慮事項を確認したか 

「職場の健康診断実施強化月間」は、こうした基本的な義務を改めて総点検する機会です。特に一般健康診断はすべての事業場に共通する最重要項目であるため、本記事のチェックリストを活用し、自社の運用状況を確認してみてください。

参考リンク

・厚生労働省「職場の健康診断実施強化月間」(9月)について https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75713.html
・労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について(基発0428第9号) https://www.mhlw.go.jp/content/001700009.pdf
・主要様式ダウンロードコーナー(安全衛生関係主要様式)/電子申請義務化の対象手続 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei36/index.html
・労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/an-eihou/index_00001.html
・令和7年の労働施策総合推進法等の一部改正について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
・厚生労働省「攻めの予防医療について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/yobou.index.html


この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス                  社会保険労務士 T.Y                          レストランでの接客から人事労務の世界へ転身しました。難しくなりがちな労務の話も身近に感じてもらえるようにお届けしていきます。

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