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社会保険の算定と月変、どっちが優先?違いとタイミングをわかりやすく解説

社会保険の算定と月変、どっちが優先?違いとタイミングをわかりやすく解説

社会保険の手続きにおいて、毎年定例で行う「算定基礎届」と、給与が大きく変動した際に随時行う「月額変更届」は、担当者を悩ませる業務の一つです。
特に、昇降給時期と算定の時期が重なると、どちらを優先すべきか判断に迷うことがあります。
この記事では、算定と月変の基本的な違いから、手続きのタイミングが重なった場合の優先順位、具体的なケースごとの対応方法までをわかりやすく解説します。

1.そもそも社会保険の「算定」と「月変」とは?それぞれの違いを解説

社会保険料を計算する基礎となる「標準報酬月額」を決定する手続きには、「算定」と「月変」の2種類があります。
「算定」は年に一度、全被保険者を対象に行う定例の見直しであり、「算定基礎届」を提出します。

一方、「月変」は特定の従業員の給与に大幅な変動があった場合に随時行う見直しで、「月額変更届」を提出します。
両者は対象者や手続きのタイミング、見直しの根拠となる考え方に明確な違いがあります。

1.1 算定(定時決定)とは?年に一度全従業員の標準報酬月額を見直す手続き

算定(定時決定)は、毎年1回、7月1日時点での全被保険者を対象に、実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように見直す手続きです。
具体的には、その年の4月・5月・6月に支払われた報酬の平均額を算出し、それに基づいて新しい標準報酬月額を決定します。
この手続きのために提出する書類が「算定基礎届」です。

決定された新しい標準報酬月額は、その年の9月から翌年の8月までの各月の保険料計算に使用されます。

1.2 月変(随時改定)とは?給与が大幅に変動した従業員が対象の手続き

月変(随時改定)は、昇給や降給などにより従業員の固定的賃金に大きな変動があった際に、次の定時決定を待たずに標準報酬月額を改定する手続きです。
給与の実態と保険料額が大きく乖離することを防ぐ目的があります。
固定的賃金の変動以後、継続した3ヶ月間の報酬の平均額を基に新しい標準報酬月額を決定し、変動から4ヶ月目に改定されます。

この手続きは、一定の条件を満たした被保険者のみが対象となり、その都度「月額変更届」の提出が必要です。

1.3 【比較】算定と月変の対象者・時期・反映月の違い一覧

算定(定時決定)と月変(随時改定)の主な違いを以下にまとめます。

算定(定時決定)
通称:算定
対象者:7月1日時点の全被保険者
提出書類:算定基礎届
提出時期:毎年7月1日〜7月10日
計算対象月:4月、5月、6月
新標準報酬月額の適用月:同年9月〜翌年8月

月変(随時改定)
通称:月変
対象者:固定的賃金が変動し、一定の条件を満たした被保険者
提出書類:月額変更届
提出時期:随時(速やかに)
計算対象月:固定的賃金変動以後3ヶ月間
新標準報酬月額の適用月:変動以後4ヶ月目〜

2.月額変更届(随時改定)の提出が必要になる3つの必須条件

月変(随時改定)は、給与が変動したすべての被保険者が対象となるわけではありません。
手続きの対象となるには、これから説明する3つの条件を「すべて」満たす必要があります。

いずれか一つでも満たさない場合は、月変の対象にはならず、次の算定(定時決定)まで等級は変わりません。

条件1:基本給や手当などの固定的賃金に変動があった

月変の最初の条件は、昇給や降給、あるいは各種手当の変更などによって「固定的賃金」に変動があることです。
固定的賃金とは、勤務時間や業績に関わらず、支給額・支給率が決まっている報酬を指します。
具体的には、基本給(月給、週給、日給、時給)、役職手当、家族手当、通勤手当などが該当します。

一方、残業手当や夜勤のように、稼働実績によって変動する「非固定的賃金」のみの増減では、月変の対象にはなりません。

条件2:変動以後の3ヶ月間の平均報酬と現在の等級に2等級以上の差が生じた

固定的賃金が変動した月以降の継続する3ヶ月間に支払われた報酬(残業代などの非固定的賃金も含む)の平均額を算出します。
この計算方法で求めた報酬の平均額を「標準報酬月額等級表」に当てはめ、新しい等級を決定します。
この新しい等級と、変動前の現在の等級とを比較し、2等級以上の差が生じていることが2つ目の条件です。

被保険者報酬月額変更の手続きは、この等級差が確認できた場合にのみ必要となります。

条件3:変動後の3ヶ月間いずれも支払基礎日数が17日以上ある

3つ目の条件は、固定的賃金が変動した月以降の3ヶ月間すべてにおいて、給与支払の基礎となった日数が17日以上あることです。
月給制の場合は暦日数が支払基礎日数となります。
一方、時給制や日給制の場合は出勤日数が基礎となります。

この条件は3ヶ月連続で満たす必要があり、例えば1ヶ月でも17日未満の月があれば、その時点で月変の対象外となります。
なお、特定適用事業所に勤務する短時間労働者の場合は、支払基礎日数が11日以上と定められています。
パートタイム労働者(週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4分の3以上)は17日以上を基準とします。

ただし、3つの条件をすべて満たしていたとしても、次の場合は月変の対象となりません。
・固定的賃金は上がったが、残業手当等の非固定的賃金が減ったため、変動月以後引き続く3ヶ月の報酬の平均額により算出した標準報酬月額が従前より下がり、2等級以上の差が生じた場合
・固定的賃金は下がったが、非固定的賃金が増加したため、変動月以後引き続く3ヶ月の報酬の平均額により算出した標準報酬月額が従前より上がり、2等級以上の差が生じた場合。

3.【結論】7月〜9月の月額変更(随時改定)は算定基礎届(定時決定)より優先

社会保険の手続きにおいて、4月〜6月に昇給などがあり、7月・8月・9月のいずれかの月に月額変更(随時改定)の対象となる被保険者がいる場合、その被保険者については月額変更届の提出が優先されます。
したがって、原則として算定基礎届(定時決定)の提出は不要となります。
これは、従業員の現在の報酬額をより正確に反映させる随時改定を優先するという考え方に基づいています。

ただし、健保組合や年金事務所によっては算定基礎届の提出自体は必要で、中には備考欄に「〇月月額変更予定」と記載する等の運用を求められる場合もあります。

4.【ケース別】算定と月変、どちらを提出すべきか判断に迷う場合

算定基礎届の提出時期と昇給のタイミングが重なると、どちらの手続きを優先すべきか、実務上判断に迷うことがあります。
特に4月〜6月の間に給与改定があった場合や、残業代が通常より多く発生した場合など、具体的な状況に応じた対応が求められます。
ここでは、そうした判断に迷いやすいケースを取り上げ、それぞれどのように対応すべきかを解説します。

ケース1:4月・5月・6月に昇給し、7月〜9月に月変の対象となる場合

4月、5月、6月のいずれかに昇給があり、昇給した月以後の3ヶ月間の報酬の平均額で2等級以上の差が生じるなど月変の要件を満たす場合、その被保険者は月額変更届の提出対象となります。
具体的には、4月昇給なら7月、5月昇給なら8月、6月昇給なら9月に月変が行われます。
この7月〜9月の随時改定は定時決定に優先されるため、該当者については算定基礎届の提出は原則不要となり、月額変更届を提出します。

ケース2:算定期間(4〜6月)の残業代が多く、月変の報酬額と差がある場合

算定の対象期間である4月〜6月に繁忙期が重なり、残業代が通常より多く支払われることがあります。
この期間に固定的賃金の変動がなければ、残業代を含めた4月〜6月の平均給与で算定基礎届を提出します。
もし、同じ時期に昇給などの固定的賃金の変動があり、月変の対象にもなる場合は、月変の手続きが優先されます。

その場合、算定期間の残業代の額にかかわらず、固定的賃金変動後の3ヶ月間以後の平均給与で新しい標準報酬月額が決定されます。

ケース3:パート・アルバイト従業員の社会保険手続きはどうなる?

パート・アルバイト従業員であっても、社会保険の加入要件を満たす被保険者であれば、正社員と同様に算定と月変の手続きが必要です。
基本的なルールは同じで、年に一度の算定と、固定的賃金の変動があった際の月変の対象者となります。
ただし、月変の要件の一つである「支払基礎日数」については注意が必要です。

特定適用事業所に勤務する週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4分の3未満の短時間労働者に該当する場合、支払基礎日数の条件は17日以上ではなく「11日以上」となります。

ケース4:休職から復帰して給与が変動した場合の手続き

産休・育休などで休職していた従業員が復職した場合も、月変の対象となる可能性があります。
これは通常の月変とは異なります。産休月変・育休月変は、以下の条件を満たす場合、通常の月変(随時改定)に該当しなくても、育児休業終了日の翌日が属する月以後3カ月間に受けた報酬の平均額に基づき、4カ月目の標準報酬月額から改定することができます。
①これまでの標準報酬月額と改定後の標準報酬月額との間に1等級以上の差が生じること。
※改定後の標準報酬月額は、育児休業終了日の翌日が属する月以後3カ月分の報酬の平均額を算出します。ただし、支払基礎日数が17日未満の月は除きます。
②育児休業終了日の翌日が属する月以後3カ月のうち、少なくとも1カ月における支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上であること。
※パートタイム労働者(週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4分の3以上)の支払基礎日数の取扱いについては、3カ月のいずれも17日未満の場合は、そのうち15日以上17日未満の月の報酬月額の平均によって算定します。

通常の月変と大きく異なる点は、3カ月とも基礎日数17日を満たさなくても1等級以上変動があれば改定することができる点です。

5.算定基礎届や月額変更届の提出を忘れた場合の罰則や影響

算定基礎届や月額変更届の提出を怠ったり、内容を誤って届け出たりした場合、事業主は健康保険法に基づき罰則(懲役や罰金)の対象となる可能性があります。
また、日本年金機構による調査が入り、指導や延滞金の追徴が行われることもあります。
手続きの遅延や誤りは、正しい社会保険料の徴収を妨げるだけでなく、従業員が将来受け取る年金額が減ってしまったり、傷病手当金などの健康保険給付を正しい額で受け取れなくなったりするなど、従業員に直接的な不利益をもたらす恐れがあります。

6.社会保険の算定と月変に関するよくある質問

ここでは、社会保険の算定と月変に関して、実務担当者から寄せられることの多い質問とその回答を紹介します。

6.1 月額変更(随時改定)に該当する場合、算定基礎届の提出は本当に不要ですか?

原則として不要です。
7月、8月、9月に随時改定(月額変更)の対象となる被保険者については、月額変更届を提出することで、定時決定(算定)よりも優先して標準報酬月額が改定されます。
そのため、算定基礎届の提出は省略できます。

健保組合や年金事務所によっては算定基礎届の提出が必要な場合もありますので、加入している健保組合や管轄の年金事務所やご確認ください。

6.2 年4回以上支給される賞与は算定や月変の計算に含めますか?

はい、含めます。
年3回以下の賞与は「賞与」として別途社会保険料がかかりますが、年4回以上支給される賞与は「報酬」とみなされ、月々の給与と同じ扱いになります。
そのため、算定基礎届や月額変更届を作成する際は、賞与の合計額を12で割った額を各月の報酬に上乗せして、標準報酬月額を計算する必要があります。

7.まとめ

社会保険の「算定(定時決定)」と「月変(随時改定)」は、どちらも適正な保険料を算出するために不可欠な手続きです。
特に、4月〜6月に昇給があり、7月〜9月に月変の対象となる従業員がいる場合は、定時決定よりも随時改定が優先されるというルールを覚えておくことが重要です。
それぞれの違いや手続きが必要となる条件を正しく理解し、対象となる従業員がいた場合は、遅滞なく適切な届出を行いましょう。

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