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【アウトソーシングほっとニュース】地域企業におけるAI活用の現状と人事労務部門での実務活用例― 財務省「地域におけるAI活用を巡る現状」を踏まえて ―

 


1.はじめに

生成AIをはじめとするAI技術は、業種や企業規模を問わず急速に普及しつつあります。業務効率化の観点から導入が進む一方で、企業の人事労務部門においては、情報管理や社内ルール整備など、実務面での対応が求められる場面も増えています。
財務省は、各財務局等が管内企業に対して実施したヒアリング調査の結果を取りまとめ、「地域におけるAI活用を巡る現状(特別調査)」として公表しました。本稿では、同調査の内容を整理し、企業の人事担当者が把握しておきたい事項を労務管理の観点から解説します。

2.調査の概要

本調査は、地域におけるAI活用の現状を把握する目的で、各財務局等が管内企業等に対してヒアリング調査を実施し、その回答を分類・整理したものです。

(1)調査期間:2025年12月上旬~2026年1月上旬
(2)調査方法:財務局等によるヒアリング調査
(3)回答企業数:全国計1,103社(大企業463社、中堅企業304社、中小企業336社)
(4)業種別内訳:製造業490社、非製造業613社

本調査は統計調査ではなくヒアリングに基づくものですが、地域企業の実態を把握する資料として参考となります。

3.AI活用は約5年前から大幅に増加

調査では、企業に対して「約5年前」と「現在」のAI活用状況を尋ねています。その結果、いずれの規模・業種においてもAI活用が大幅に増加していることが示されました。
全体では約7割の企業が現在AIを活用しており、製造業では約8割大企業では約9割に達しています。AI活用は一部の先進企業に限られず、地域企業にも広がっている状況がうかがえます。

4.AI活用の主な用途

AI活用の用途として最も多かったのは、次の領域です。

  • 文章作成
  • 情報検索・収集・調査

これらは業種を問わず共通して多く、AI活用が事務作業の補助領域から浸透していることが分かります。また、業種特性に応じた活用も一定数みられました。

(1)製造業でみられる用途

製造業では、文章作成や情報検索に加え、次の用途が一定数みられました。

  • 製造・品質管理
  • 開発・技術支援
  • 教育・研修支援
  • AIロボティクスによる業務補助

製造現場や技術部門においても、AI活用が進みつつあることが示されています。

(2)非製造業でみられる用途

非製造業では、顧客対応に関わる領域での活用が比較的多く、次の用途が一定数確認されています。

  • 顧客分析
  • 顧客対応(チャットボット等)

業務効率化に加え、顧客対応の標準化やサービス向上を目的とした利用も進んでいる状況です。

5.AI活用による効果

AI活用による効果として最も多かったのは「業務時間削減」です。調査では、AIを活用している企業の約9割が業務時間削減の効果を実感しているとされています。
また、次の効果を挙げた企業も一定数みられました。

  • 必要人員減少
  • コスト削減
  • 既存商品等の価値・品質向上

一方で、「新規商品等の開発」や「売上増加」を挙げた企業は概ね1割未満にとどまっており、現時点ではAI活用の成果が業務効率化・業務補完に集中している状況が読み取れます。

6.AI活用範囲と効果の関係

調査では、AI活用の用途数が増えるほど、「コスト削減」「品質向上」「必要人員減少」などの効果を実感する割合が高くなる傾向が示されています。
一方で、「業務時間削減」については用途数にかかわらず高い割合で実感されており、AI活用の初期段階から比較的得やすい効果であることがうかがえます。

7.AIを活用していない理由

AIを活用していない企業に対して、その最大の理由を尋ねたところ、最も多かったのは「人材・スキル・体制が不十分」という回答でした(全体で約40%)。
また、次のような理由も一定数みられています。

  • 各種リスクへの不安(約15%)
  • 活用する必要性を感じない(約20%)
  • 導入・運用コスト(10%未満)

この結果から、AI活用が進まない背景として、導入費用よりも、運用を担う人材や体制整備が課題となっている企業が多いことが分かります。

8.人事労務部門におけるAI活用の事例

財務省の特別調査では、AI活用の用途として「文章作成」や「情報検索・収集・調査」が多いことが示されています。これらは人事労務部門の業務とも親和性が高く、地域企業においても比較的導入しやすい領域といえます。
人事労務部門におけるAI活用は、システム開発や大規模投資を伴うものに限らず、日常業務の補助として段階的に取り入れる形が現実的です。以下では、実務で想定される活用例を整理します。

(1)社内文書・通知文の作成補助

人事労務部門では、従業員向けの案内文や社内通知、制度説明資料など、定型的な文章作成が頻繁に発生します。AIを活用することで、文章のたたき台作成や表現の調整を効率化できる場合があります。

【活用例】

  • 社内通知文(制度改定、健康診断案内等)の下書き作成
  • イントラネット掲載用の説明文作成
  • 規程改定時の周知文案作成
  • よくある質問(FAQ)の文章整理

(2)採用業務における活用

採用業務では、求人票の文案作成や面接準備など、文章作成・整理を要する業務が多く存在します。AIを活用することで、候補者向け情報発信の質を一定水準に保ちながら作業負担を軽減できる可能性があります。

【活用例】

  • 求人票・募集要項のたたき台作成
  • 職種ごとの面接質問例の整理
  • 説明会資料の構成案作成
  • 内定通知・不採用通知の文案作成

(3)研修・教育資料の作成補助

調査では、製造業を中心に「教育・研修支援」でのAI活用も一定数みられました。人事部門においても、研修資料の作成や学習内容の整理に活用できる余地があります。

【活用例】

  • 新入社員研修の資料構成案作成
  • コンプライアンス研修の説明文作成
  • 社内テスト問題の案作成
  • 研修アンケート結果の整理・要約

(4)社内問い合わせ対応(一次回答の整理)

人事労務部門には、勤怠・休暇・社会保険・手当等に関する問い合わせが継続的に発生します。AIを活用することで、問い合わせ内容の分類や回答文案の整理を効率化できる場合があります。

【活用例】

  • 社内問い合わせの回答文案の作成
  • 類似する問い合わせの整理・分類
  • 既存マニュアルの要点抽出
  • 社内FAQの更新補助

※最終的な回答内容は、法令・社内規程に照らして人が確認する必要があります。

(5)労務管理文書の整理・要約

人事労務部門では、社内規程、協定書、行政手続関係書類など、多くの文書を扱います。AIは、文章の要点整理や比較作業の補助として活用できる可能性があります。

【活用例】

  • 規程や通達の要点整理
  • 複数文書の差分確認の補助
  • 社内向け説明資料への言い換え
  • 長文資料の要約

(6)活用にあたっての基本的な留意点

人事労務部門の業務は、従業員情報や評価情報など、個人情報を含む内容を取り扱う場面が多い点が特徴です。このためAIを利用する場合は、入力する情報の範囲を限定し、機密情報や個人情報を取り扱わない運用とすることが重要です。
また、AIの出力には誤りが含まれる可能性があるため、制度説明文や対外文書等に用いる場合は、必ず人が内容を確認し、最終的な責任は企業側が負うことを前提に運用する必要があります。

9.さいごに

財務省の特別調査では、地域企業においてもAI活用が急速に拡大していることが示されました。活用用途としては文章作成や情報検索・収集・調査が中心であり、業務の効率化や作業負担の軽減を目的とした利用が広がっている状況がうかがえます。
また、AIを活用していない理由としては「人材・スキル・体制不足」が最も多く、AI活用の定着にはツールの導入そのものよりも、社内での利用方法を整理し、実務に組み込んでいく取組が重要であることが読み取れます。

人事労務部門においても、採用、研修、社内文書作成、問い合わせ対応など、日常業務の中でAIを補助的に活用できる領域は少なくありません。こうした活用は、大規模な投資を伴わずに取り組める場合も多く、段階的に導入を進めることで業務改善につながる可能性があります。
一方で、人事労務部門では個人情報や社内情報を取り扱う場面が多いことから、AI利用にあたっては、入力情報の範囲や利用方法を明確にし、適切な運用を確保することが重要です。AIの出力結果についても、誤りが含まれる可能性を踏まえ、最終的な判断は必ず人が行う運用が求められます。

社労士法人としては、人事労務部門におけるAI活用を進めるにあたり、社内での利用ルールの整理や、既存の社内規程・運用との整合性確認、従業員への周知方法の検討など、実務に即した運用体制づくりを支援することが可能です。

出典元:財務省「地域におけるAI活用を巡る現状(特別調査)」(令和8年1月29日)


この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス                  社会保険労務士 T.Y                          レストランでの接客から人事労務の世界へ転身しました。難しくなりがちな労務の話も身近に感じてもらえるようにお届けしていきます。

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