【アウトソーシングほっとニュース】特定技能・育成就労制度の概要と運用方針について― 外国人材の受入れを検討する企業が押さえておくべき制度の全体像 ―

1.はじめに
人手不足への対応策の一つとして、外国人材の受入れを検討する企業は年々増加しています。一方で、「特定技能」や「育成就労」といった在留資格について、制度の目的や相互の関係が分かりにくいと感じている企業も少なくありません。
政府は令和8年1月23日、第2回「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」を開催し、特定技能制度および育成就労制度に関する運用方針等を決定しました。
本稿では、外国人労働者の受入れを検討する企業の人事担当者向けに、制度の全体像を整理したうえで、政府決定の位置づけと実務上のポイントを解説します。
2.今回決定された運用方針の概要
政府は、外国人の受入れと秩序ある共生社会の実現に向け、次の方針等を決定しました。
• 外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策
• 特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針
• 育成就労に係る制度の運用に関する方針
ここでは、企業の実務に関連するポイントを整理します。
(1)受入れ上限数の設定
特定技能および育成就労制度について、2024年度から2028年度末までの5年間で、計123万1,900人の受入れ上限数が示されました。
(2)技能水準および日本語能力水準の整理
政府は、育成就労、特定技能1号、特定技能2号について、それぞれの制度段階に応じて、一般的に想定される技能水準および日本語能力水準の目安を整理して示しています。
具体的には、
・育成就労は、就労を通じて技能や日本語能力を段階的に身につける「育成段階」
・特定技能1号は、一定の技能や業務理解を有し、現場で即戦力として業務に従事する段階
・特定技能2号は、より熟練した技能を有し、長期的な就労やキャリア形成が可能な段階
というように、外国人材の成長プロセスに沿った位置づけが示されています。
(3)分野別の上乗せ基準
分野別運用方針(案)では、分野共通の基準を上回る「上乗せ基準」を、国が分野ごとに設定できることが示されています
例えば、自動車運送分野において、より高い日本語能力水準を求めるといった例が挙げられています。
※これらは制度運用の整理を目的としたものであり、企業に対して新たな義務を直接課すものではありません。
3.外国人労働者受入れ制度の全体像
日本における外国人労働者の受入れは、出入国管理及び難民認定法に基づく在留資格制度により行われており、在留資格ごとに就労の可否や業務内容が定められています。
就労を目的とする主な在留資格には、「技術・人文知識・国際業務」などの専門的・技術的分野を対象とするもののほか、人材育成を目的として設けられた技能実習制度や、人手不足への対応を目的とした特定技能制度があります。
特定技能制度は、一定の技能水準および日本語能力を有する外国人が、国が定める対象分野において就労することを可能とする制度です。
これに加え、政府は、外国人材の育成と就労の在り方を見直す観点から、新たに育成就労制度を創設し、今後開始する方針を示しています。
育成就労制度は、就労を通じて必要な技能を段階的に習得させ、将来的に特定技能制度への円滑な移行を図ることを目的とした制度として位置づけられています。
なお、これまで人材育成を目的として運用されてきた技能実習制度については、制度趣旨と実態との乖離等が指摘されてきたことを踏まえ、制度を発展的に解消し、新制度である育成就労制度へ移行することが決まっています。
このように、人手不足分野における外国人労働者の受入れについては、特定技能制度を中心としつつ、育成就労制度を新たに位置づける形で、制度体系の再整理が進められている状況です。
4.特定技能制度とは
(1)制度の目的と基本構造
特定技能制度は、人手不足が深刻と認められた産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材の就労を認めることを目的として、2019年に創設された制度です。
本制度の大きな特徴は、国が対象とする産業分野を限定したうえで制度運用を行っている点にあります。
(2)対象となる産業分野
特定技能制度の対象となる産業分野は、現在、16分野に限定されています。
企業が特定技能外国人を受け入れるためには、自社の事業内容および外国人に従事させる業務が、これらの対象分野のいずれかに該当していることが前提となります。
そのため、単に人手不足であるという理由のみで特定技能制度を活用できるものではなく、制度上定められた分野への該当性を確認することが、制度利用の出発点となります。
なお、令和8年1月23日の政府決定では、特定技能制度と育成就労制度との関係整理を行う観点から、育成就労制度との対応関係を含めた分野整理(案)が示されています。この中では、制度運用上の整理として「19分野」という枠組みが示されています。
(3)特定技能1号および2号の区分
特定技能には、次の2つの区分があります。
- 特定技能1号
相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事します。在留期間は通算5年までとされており、原則として家族の帯同は認められていません。 - 特定技能2号
熟練した技能を要する業務に従事します。在留期間の更新が可能であり、要件を満たせば家族帯同も認められます。
多くの企業においては、特定技能1号が外国人材受入れの入口となります。
5.育成就労制度とは
(1)制度創設の背景
育成就労制度は、技能実習制度において制度趣旨と実態との乖離が指摘されてきたことを踏まえ、外国人材の育成と就労の在り方を整理するために創設される制度です。
技能実習制度は発展的に解消され、育成就労制度へ移行することが決まっています。
(2)制度の基本的な考え方と特定技能への移行
育成就労制度は、一定期間の就労を通じて技能や日本語能力を段階的に習得させ、要件を満たした場合に特定技能1号へ移行することを想定した制度です。
企業にとっては、育成段階の外国人材を受け入れ、計画的に人材育成を行う制度として位置づけられます。
(3)制度運用上の留意点
育成就労制度では、受入れ企業や監理体制の適正化を図る観点から、外部監査人の設置が義務化されることとされています。
これにより、制度運用における第三者チェック機能が強化される点が、技能実習制度との大きな違いの一つとなります。
6. 外国人材受入れ制度の比較
以下では、企業が制度を検討する際の参考として、「技能実習制度」「育成就労制度」「特定技能制度」について、制度の位置づけを比較します。

7.社労士法人として支援できること
社労士法人では、外国人労働者の受入れにあたり、企業が日本の労働関係法令に沿って適切な人事・労務管理を行うため、次の支援を行います。
(1)外国人労働者を雇用する際の労務管理上の確認
外国人労働者についても、日本人労働者と同様に、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法等の労働関係法令が適用されます。
そのため、受入れにあたっては、以下の点を前提として整理することが重要です。
- 労働関係法令の適用関係
- 日本人労働者との均等待遇の考え方
- 業務内容および労働時間管理に関する基本的な留意点
(2)雇用契約書・社内規程の確認
外国人労働者の受入れに際して作成・運用する文書について、労働関係法令との整合性を確認します。
- 労働条件通知書・雇用契約書の記載内容の確認
- 就業規則が外国人労働者にも適切に適用される内容となっているかの確認
(3)社会保険・労働保険の適用関係の整理
外国人労働者についても、原則として日本人労働者と同様に社会保険・労働保険が適用されます。
- 健康保険・厚生年金保険の加入要否
- 雇用保険・労災保険の適用関係
- 実務上留意すべき点の整理
(4)日常の労務管理に関する整理
特定技能や育成就労による雇用においては、日常的な労務管理の適正な運用が重要となります。
- 労働時間および時間外労働の管理
- 休職・退職時の社内対応
- 行政調査等を想定した記録管理
(5)外部監査への対応支援
育成就労制度では、前述のとおり、外部監査人の設置が義務化されることとなっています。
社労士法人では、外部監査に備えた労務管理体制の整備や、必要書類の整理、指摘事項への是正対応等について支援を行います。
8.さいごに
特定技能制度および育成就労制度は、人手不足分野における外国人材の受入れを制度的に支える枠組みです。
今回の政府決定は、制度の方向性と運用の考え方を整理したものであり、企業に新たな義務や責任を直接課すものではありません。
今後は、分野別の正式な運用方針や関係通知を確認しつつ、法令に基づいた適切な受入れ体制を整備していくことが重要となります。
この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス 社会保険労務士 T.Y レストランでの接客から人事労務の世界へ転身しました。難しくなりがちな労務の話も身近に感じてもらえるようにお届けしていきます。