【アウトソーシングほっとニュース】 「日本の社会像に関する意識調査2025」から考える、これからの人事労務

日本労働組合総連合会(連合)は2025年12月、「日本の社会像に関する意識調査2025」を公表しました。本調査は、全国の15歳以上の働く男女1,000名(自営業・フリーランスを除く)を対象に実施され、働く人々の生活実感や将来不安、理想とする社会像などを多角的に明らかにしたものです。
物価上昇や将来不安が続くなか、今回の調査結果は、企業の人事・労務管理においても重要な示唆を含んでいます。本記事では、調査結果のポイントと企業実務への影響について整理します。
1.「現在のくらしに満足していますか?」― 満足は4割にとどまる現実 ―
「現在のくらしに満足していますか?」という設問に対し、「満足している」と回答した人は40.5%にとどまり、「不満を感じている」と回答した人は27.9%と拮抗しています。特に非正規雇用者や年収400万円未満の層では不満の割合が高く、雇用形態や所得水準による生活実感の差が依然として存在していることがうかがえます。
2.「現在のくらしに、より満足できるための改善点は?」― 収入・賃金への強い期待 ―
次に、「現在のくらしに、より満足できるための改善点は?」という設問では、「収入・貯蓄などの経済面」と回答した人は52.6%と最も多く、次いで「賃金・労働環境」と回答した人が32.1%と挙げられました。
この結果は、単なる賃金水準だけでなく、労働時間や働き方、職場環境を含めた総合的な労働条件の改善が強く求められていることを示唆しています。企業にとっては、処遇そのものだけでなく、その決まり方や説明のあり方も重要な要素となります。
3.「将来について不安を感じますか?」― 老後・資産・社会保障への懸念 ―
「将来について不安を感じますか?」という設問では、「不安を感じる」と回答した人が65.4%に上りました。不安要因として多く挙げられたのは、「老後の生活」と回答した人が58.3%、「預貯金など資産の状況」と回答した人が56.4%です。年金や社会保障制度への不安、長寿化に伴う生活設計の難しさが背景にあると考えられます。また、非正規雇用者では「仕事の有無」や「自身の健康状態」に対する不安が正規雇用者よりも高く、雇用の安定性やセーフティネットの重要性が改めて浮き彫りとなりました。
4.「どのような社会が理想だと思いますか?」― 強まる安定志向と多様化する価値観 ―
「理想とする社会のイメージ」についての設問では、「格差はあっても力強く成長する社会」より「緩やかな成長でも格差の小さい社会」を支持する人が70.3%と多数派を占めました。また、「生涯現役で活躍できる社会」より「引退しても老後が安心な社会」を理想とする割合は73.1%に達しており、世代を問わず、老後の安心を重視する傾向が顕著です。
また社会保障について、「税金や保険料などの負担は小さいが、自己責任型の社会」と「税金や保険料など の負担は大きいが、社会保障が充実した社会」のどちらが理想とする社会のイメージに近いかという設問では、「税金や保険料など の負担は大きいが、社会保障が充実した社会」が58.8%と多数派を占めました。ただ一方で、「税金などの負担は小さいが、自己責任を重視する社会」を支持する割合は2019年調査から5.0ポイント上昇しており、特に若年層では社会保障への期待と負担増への警戒感が併存している様子がうかがえます。
5.「10年後の日本は、今よりよくなっていると思いますか?」― 約7割が将来を悲観 ―
「10年後の日本は今よりよくなっていると思いますか?」という設問では、「そう思わない」と回答した人が69.9%に上りました。現在のくらしに不満を感じている層では、将来を悲観的に捉える割合が8割を超えており、生活実感と将来展望が強く結びついていることが読み取れます。
6.「理想の社会を実現するために重要なものは?」― 企業に求められる人事労務の役割 ―
「理想の社会を実現するために重要だと思うもの」を尋ねた設問では、「賃金・労働環境の改善」と回答した人は46.3%と最も多く、次いで「安定した雇用」と回答した人が41.3%と挙げられました。
これらの結果は、企業に対し、持続的な賃上げの検討や長時間労働の是正、雇用の安定確保といった取り組みが引き続き強く求められていることを示しています。
7.調査結果から考える人事労務の実務対応
本調査を通じて不安を抱えながら働く人が多数派である現状が明らかになりました。企業の人事労務においては次のような対応が重要なテーマとなります。
- 賃金制度・評価制度の見直しによる納得感のある処遇設計
- 同一労働同一賃金への対応を含む非正規雇用の処遇改善
- 定年延長・再雇用制度を見据えた高年齢者雇用の設計
- 育児・介護と仕事の両立支援制度の整備
- 従業員への制度説明や労使コミュニケーションの強化
働く人の不安を軽減し、安心して働ける職場環境を整えることは、企業の持続的な成長にも直結します。
8.社労士法人として支援できること
調査結果が示すように、働く人の不安は「賃金」「雇用の安定」「老後の生活」「将来設計」といった、人事労務の根幹に関わるテーマと深く結びついています。企業には、制度を整えるだけでなく、それを適切に運用し、わかりやすく伝えることが求められています。社労士法人では、次のような観点から企業の人事労務をサポートしています。
● 賃金・評価制度の見直し支援
賃金体系や評価制度を整理し、処遇の根拠を明確にすることで、従業員の納得感を高め、モチベーションの向上や離職防止につなげます。
● 雇用形態・就業規則の整備
非正規雇用者の処遇改善や無期転換ルールへの対応、テレワーク制度の導入など、実態に即した就業規則・社内規程の整備を支援します。
● 高年齢者雇用・再雇用制度への対応
定年延長や再雇用制度の設計にあたり、法令対応だけでなく、本人の安心感や職場全体の活性化を考慮した制度づくりをサポートします。
● 両立支援制度の整備
育児・介護と仕事を両立できる職場環境づくりを通じて、従業員が安心して働き続けられる体制構築を支援します。
● 制度説明・労使コミュニケーション支援
社会保険制度や社内制度について、従業員にわかりやすく伝えるための説明資料作成や相談体制づくりを支援し、不安や誤解の解消につなげます。
人事労務に関する課題は、法令対応だけでなく「現場でどう運用するか」「従業員にどう伝えるか」が重要です。専門的な視点から伴走支援を行うことで、安心して働ける職場づくりを後押しします。
9.さいごに
今回の調査結果からは、働く人の多くが、日々の生活や将来に対して複合的な不安を抱えている現状がうかがえます。こうした意識は、賃金や雇用といった制度面だけでなく、社会や職場に対する信頼感とも深く関わっています。
企業を取り巻く環境が変化するなか、働く人の意識や価値観も一様ではなくなっています。人事労務においては、「これまで通り」の対応で十分かどうかを、客観的なデータをもとに確認し、必要に応じて見直していく視点が、これまで以上に重要になっていると言えるでしょう。
出典元:日本労働組合総連合会(連合)
「日本の社会像に関する意識調査2025」(2025年12月18日公表)
この記事を書いたのは・・・

社会保険労務士法人エスネットワークス 社会保険労務士 T.Y レストランでの接客から人事労務の世界へ転身しました。難しくなりがちな労務の話も身近に感じてもらえるようにお届けしていきます。